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  疾うの昔に
  灯りは消されてしまっていたが
  {ルビ空=そら}の部屋に、青さだけ残っている
  それ以外はみな どこかへいってしまった
  わたしは 幾つか咳をこぼす
  そ ....
しろい舟に
あなたの息がかかる
草の影をそっとゆらして
一日がまえにすすんでいく


わたしたちもすすんでいくのだ
かなしいことがどれだけあっても
あなたにはかならずつたえるから

 ....
  机に載っていた、何枚かの
  便箋は すみれ色をしていた
  グラスに注がれた玉蜀黍茶を空にするまで
  夕焼けをわたしは眺めていた……飽きもせずに
  複雑そうなものごとが、ほん ....
  栗色のひとみが
  風にさらされている
  窓のきわ、沈みゆく陽はとおく



  きょう、
  なにもいえなかった
  だからたぶん、あしたも
  きみになにもいえない ....
  朝がきた
  薄ぐらいもやの向こうに
  金色の光が輪をかけている
  あなたが いつか その手のひらに
  汲んできた水は だいぶ前に
  何処かでこぼれてしまったけれど
  ....
  街路樹が震えている、冬
  あらゆるものに札がつけられた
  ふりはじめた雪に、砂糖菓子に さびしさに……



  水切り台に置かれたきのうのウイスキー
  それに口をつけ ....
  きみは自分が誰かしっているのか
  湯で卵のはいったカレーパンを口にほおばり
  買ったばかりの黒い手帳に夢中になっているとき
  見境のない冬の風が 昨日のきみといまのきみを重ね合 ....
  懐中電灯はいつも冷蔵庫の上に置かれていた
  誰からも忘れられ埃ばかりかぶり
  微動することさえ許されず
  あなたの心はただ、白い朧な方形だけを思い浮かべて
  しゅるしゅると ....
  静脈血が 三日月の光を跳ね返しながら
  ながくほそい道を決められたとおりながれてゆく
  運命はそこかしこに石のように置かれ
  時々、砂をかぶって見えなくなる



   ....
  旅になど出たくなかった
  わたしは 部屋に鍵をかけた
  カーテンをひいて静かな音楽をきいた
  水をのみながら 岩間を抜けるほそい風のような
  詩の言葉を待とうと思った

 ....
  玉蜀黍よ、わたしは考えていた
  家にのこしてきた洗濯物のことや
  背広にしのばせた セブンスターの空き箱のこと
  やがて都市は赤く染まり
  猿はどこまでも愚かに
  皺が ....
  木枯らしに舞う枯れ葉よりも
  宇宙はその日 小さなものだった
  果物の冷めた肌のような けさの通り
  横断歩道を渡っていく {ルビ面皰=にきび}顔の学生は
  なぜ朝がきて夜 ....
  煮豆を口に運んでいるあなたは
  だれかの真似をしているふうなのだけれど
  わからないし どうでもいい
  椀に添えられた手は
  貧乏臭くひび割れているし
  化粧気のない頬 ....
  白鳥のいない湖はだれのものだろう
  わたしは随分長い時間待っていた
  藻の緑に染まった水面に 静かな波紋が広がる刹那を
  何かによごされた羽が 目を逸らした隙に
  そっと浮 ....
  朝早くに
  古臭い詩をわたしは書いた
  潮水に濡れた岩間を縫って這うように歩く
  数匹の蟹の節足のことなどを



  カーテンのあちら側で降っている雨が
  薄笑い ....
  老人が籾殻を焼いている
  見えそうで見えない光のような匂いだ
  空は青く、少しあどけない
  わたしという言葉はもう
  ここには似合わない



  赤茶けた四角い煉 ....
  向かいの家の窓から
  女が身を乗り出して下を見ている
  左手になにか小さいものを持っている
  それがなにかまでは見えない ここからは



  コンセントに埃が溜ってい ....
  家に帰って
  ギターの弦を布でふく
  なにか歌いたいような気はするけれど
  なにも心にうかんでこない



  なぁ、訳知り顔で、
  知ったようなことをほざくような ....
  恋人とよんでもいいだろうか
  きみのことを
  この夏がおわるころには



  はげしい雨がふる夜は
  ビニール傘を用意するから
  おなかが空いたらカップヌードル、 ....
   かなしさは夜のなかにある。



   体育の時間、ぼくはだれともペアをつくれ
  ずに、みんなが踊るフォークダンスを眺めて
  いた。それは濁った河を渡る水牛を眺めるの
 ....
  昭和と平成の間にはさまって
  押しつぶされてしまったような工場を
  眺めながら煙草を一本喫う
  犬の散歩をする{ルビ母子=おやこ}は
  怪訝な顔ひとつ見せず通り過ぎる

 ....
  鳶という鳥の
  名前を覚えたのもこの街だった
  アキタケンホンジョーシゴモンチョウ
  蜜柑色の陽射しにひたされた夢の形



  パーマ液の匂いがするこの街
  ここ ....
  透明な鍵盤に置くかのように
  あなたの指が宙にとどまる
  噎せ返るほどに暑い八月
  そんな形で朝は始まる



  夢のなかでそれは確かに
  風靡く草原を鳴り渡って ....
  あんパンを頬張る
  午睡のなかでぼくは
  とうめいな壁になっていた
  どこか遠いところから
  木魚の澄んだ響き
  井戸の水に棲むたくさんの微生物
  午睡から醒めてぼ ....
  冬の蛇のように
  ゆるやかなとぐろを巻き
  光たちはもう、
  眠りに落ちてしまったから
  わたしは雨の音だけが
  心を満たしていてほしい
  歌をうたうくちびるのよう ....
  五月、
  牛舎はくたびれて
  立っているのもやっとのようだ
  風のにおいはつんと饐え、
  鍬があちこちで土に埋まっている



  午後になり、積まれた干し草を
 ....
  縁側に置かれた
  座布団にひなたと
  猫のにおいが残っている



  どこかで水が流れているのに
  影も形も消えてしまったみたいだ
  風に運ばれ
  気まぐれな ....
  春の光が曇天を縫い
  硬い空気を細く通り抜けてくる
  すべては卓上に出揃った
  いくつかの瞳、
  いくつかの臓器



  毟り取られた数枚の花弁
  床に落ち埃 ....
  雨が降り木々の葉は濡れた
  川沿いに張られたガードレールの錆び
  秘密を抱えるように口を噤む家並み
  けれども日記帳にしみこんだ太陽の匂いを
  夜がきてもこの胸に憶えている ....
  吉祥寺駅の
  ロータリーでしゃがんで
  靴ひもをむすぶ
  あちこちに捨てられた
  煙草はどれもしめっていて
  茶色い葉がとびだしてしまっている



  きみと ....
夏美かをるさんの草野春心さんおすすめリスト(37)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
青い部屋- 草野春心自由詩315-3-8
しろい舟- 草野春心自由詩314-11-29
すみれいろ- 草野春心自由詩814-3-23
かなしみのかたち- 草野春心自由詩514-3-12
むかしの歌- 草野春心自由詩913-12-20
記憶- 草野春心自由詩413-12-1
きみはしっているのか- 草野春心自由詩513-11-27
見捨てられた花瓶- 草野春心自由詩213-11-26
水のながれ- 草野春心自由詩413-11-24
- 草野春心自由詩413-10-31
誰が誰かもわからない人だかりのなかで- 草野春心自由詩513-10-31
木枯らしに舞う枯れ葉よりも- 草野春心自由詩413-10-30
煮豆を口に運んでいるあなたは- 草野春心自由詩613-10-27
風に似た生き物- 草野春心自由詩513-10-19
古臭い詩- 草野春心自由詩10*13-10-12
籾殻- 草野春心自由詩813-9-30
鈍行列車- 草野春心自由詩913-9-28
帰宅- 草野春心自由詩413-9-17
恋人- 草野春心自由詩613-9-13
かなしさは夜のなかに- 草野春心自由詩20*13-9-13
工場- 草野春心自由詩10*13-9-1
S62- 草野春心自由詩513-8-31
天籟- 草野春心自由詩7+*13-8-4
あんパン- 草野春心自由詩813-5-30
雨の日の花- 草野春心自由詩813-5-29
牛舎- 草野春心自由詩313-5-15
座布団- 草野春心自由詩1113-3-28
祭壇- 草野春心自由詩6*13-3-20
- 草野春心自由詩9*13-3-19
ロータリー- 草野春心自由詩8*13-3-3

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