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パチンと弾けとんだ
洗濯バサミ
ひらいて、はさむ
どんなに風の強い日だって
あなたがいいというまで
ただもくもくと
しがみついてきた
のに
繰り返されてきた
しごく簡単な仕組みが ....
あおい穂がよそぐ水の表を
(それは音楽)
ちいさな円が浮いては消える
(それは音楽)
見えない命がそこにある
(それは音楽)
おたまじゃくし ....
明け方
素になった
あしのうらが
のんびり呼吸をしていた
朝、起きて
人が再び活動を始めたときから
あしうらは忙しい
意にそまない誰かであっても
一緒に過ごさねばならない
破れか ....
声がする
崖っぷちに
かろうじて
爪を立て
呼んでいる
誰かを
よるじゅう
求めている
雨に打たれて
傘も持たない
家もない
母もない
優しい思い出も持たない
痩せた猫が
....
るる、と呼べば
りら、と響く
それは歌
スノードロップが
白い鈴を鳴らしている
水仙が
黄色い笛を吹いている
{引用=合唱団の申し込みは
春色のポストへ出してください
....
みつめる
みつめる
じっとみつめる
そうすると
何かが
語りかけてくる
種を手放したあとの
たんぽぽが
茎に残された
小さな瞳で
私をじっとみつめる
世界には
なんと
....
もう なんにちも
雨は降らないし 降りようがない
雨乞いの呪文も
もはや効き目は薄れ
わずかばかりの
水を流して
やり過ごしている
{引用=さかな 苦しいだろう
さかな 底に怯え ....
女の子の
苗字と名前にある
わずかな空白に
小さな川が流れて
いる
せせらぎのような気安さであるから
そこをいったりきたりすることが
できる
時々流れてくる桃を
無邪気に拾って遊んで ....
夜に積み上げられた箱階段が
複製を繰り返す(発芽)
その上を
じゃばらの形に折れ曲がりながら
わたしの影が長く伸びつつ登っていく
星々が裏声でささやきあっている(給水)
そうやって
....
一枚の紙を
折りたたんでいく
半分に折れば
にぶんのいちの面積の
しかくが出来る
そこには
重なる相似形
出来上がりの形を
思い描きながら
そっと指で伸ばしていけば
ちいさなさ ....
ごすいって
ひすいに似たような
石
たおやかに
睡り続ける
午後
もくもくと
宝石になる練習をしよう
纏足の爪先から
あたたかな成分が溶け出していく
あらがえない{ルビ麻薬=レ ....
朝がやってくる
風がやってくる
音がやってくる
虫がやってくる
雨もふりかかれば
猫もやってくる
人がやってくる
外へ広く放たれた
寛容な空間だった
祖母が景気よくぞうき ....
上へ
上へと伸びてゆくもの
下へ
下へと伸びてゆきたがるもの
いのちを生み出すために
細い指たちは
指切りを繰り返し
相反するからくりを育む
そのなかほどの混沌で
わたしは
ひ ....
海にも道があるよ
みえないだけで
空にも道があるよ
しらないだけで
そこを渡っていく者がいたよ
こちらと
むこうをつなぐ
透きとおった
{ルビ間=あわい}、で
首を切断された猫の骸が
もう何匹も発見されている
ニンゲンの仕業
ニンゲンから産まれて
ニンゲンとして生きている
ニンゲンの仕業
猫よ
ネコゴロシに捕まるな
ニンゲンのネコ ....
もう少ししたら
野焼きの季節になりますね
ふるさとの枯れ野に
火がつけられ
冬がおしまいになるでしょう
あなたには見えないけれど
焼け焦げた残骸の下には
根が生きているのです
春に ....
みいちゃんは
働きながら
ずっと両親と同居して
後半二十年は介護して
ようやく見送りました
パラサイトシングルとか
親離れできないとか
みいちゃんのことを
呼ぶ人もいたようです
....
廃屋になる少しまえ
きみょうに やねがかたむきはじめた
それは ただのきっかけだったが
終わりまで止むことの
許されない
狂ったアリアだった
ちょうつがいが蝶に戻って飛び立つころ
えんき ....
いい格好しなくていい
むしろ
ちゃんとしているとつまらない
ちゃんとしない人生を生きる勇気はないけれど
せめて
目も口も鼻も
とんでもなく
へんてこにしたれ
おかしくしたれ
ぶっちぎ ....
大人になったら
幸せが飛んでくると思っていた
けれど
幸せの羽は飛び去るためにも存在する
大人って
幸せにちゃんとさよなら、できる人
ひかりをみつけたよ
人が踏みゆく
黒いアスファルトのなかに
埋まっている
埋まっていた
だけど
誰も
拾わない
拾えやしない
だいあもんどなんかより
き
れ
い
どこ ....
たとえば
悪意であったなら
オブラートに包んで飲み込む
たとえば
優しさであったなら
丁寧に蒸留したあと
春色のカプセルにして
冬に打ちひしがれた小鳥のために
蒔いておく
た ....
よくばりになると
しあわせは逃げていく
くらべると
しあわせは逃げていく
おいかけると
しあわせは逃げていく
手の届かない
遠いところへ
逃げていってしまったと
思っていたら
....
誰かが
だましているんだなと思う
ぽかぽかとして
冬なのにこんなにあたたかい日は
だから
あたしは
まーだだよと言う
あわてて
かえるが起きてこないように
誰かに
だまされ ....
ひらがな、が落ちてくるように
迷いながら雪が降ってくる
日本にちりぢりになった
あ、い
どれだけのあいの組み合わせが
あるのだろう
やがて
あ、と、い、は
溶け合って境界線をなくす ....
かなしみを知る人の瞳に
映る光は
美しい矢を描く
夜を知る人の瞳に
映る光を
星と呼ぶ
いつか必ずなくなるさだめの
命もまた
美しい矢を描くだろう
天涯のあちらこちらに
美 ....
子狐のきょうだいが じゃれあっている
とんで
はねて
おって
にげて
まちぶせして
かみついて
雪を蹴散らし
狩る者の本能を
喰われる者の宿命を
疑似体験をしている
思い切り ....
靴底を裏返してみる
均等に減っている
癖のない人が
うらやましい
愛用すればするほど
そこに紛れもない自分の足跡が刻まれる
靴底なんてどうでもいいぢぁありませぬか
それでもうらやんで ....
シュウシュウとやさしげな音がして
白い息
スチームアイロンにしわをのばされて
白いシャツ
出来立てみたいに ほんのりあたたかい
いくども
生まれ変われる
そんなことが幻想だと
わか ....
本当の自由を求めて空を見る
名も知らぬ黒い鳥が
隊列を組んで空を渡っていった
翼があるから自由でいいねと
そんなふうにつぶやくのは
自分の翼で空を翔んだことがない人間が想うこと
あ ....
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