木陰に置かれたこがねの車輪が
午後を静かに染めている
蒼の扉の前で躊躇し
坂の下の影を振り返る
稲妻が生まれる直前に
すべての曇は止まっている
階段を見上げる蒼い傘 ....
女よ、
きみが
歪んだ嘘をついた日には
茂る緑の淡い影を
湿った風が揺らしていった
それが
すっと吹きやむのを待って
赤い土のうえに、 ....
ひらがな泳ぎみたい睡眠をころ(が)してはいけないの
by my手彫り版画
イタリアの小さな村に住むひとびと
その暮らしを綴る番組が好きだ
素朴で明るいシャンソンがふしぎだ
どこにでもあるような人生など
たぶんないのだろう
ちいさな村に住むひ ....
たいふういっか
が
台風一家だと
思い込んでいた頃
台風が去った朝
通学路には
一家が遊んだあとが
残されていた
なぎ倒された空き地の草
折られた柿の枝
おしゃかになった傘
....
日傘を差した女の影が
歩道の凹凸を滑って行く
踵を返す青い熱帯魚
フルートの鋭い閃光
アイスピックを ....
蛍舞う哲学の道繋いだ手
東京は蛍に夜を与えない
蒼い火は霊子凝縮した蛍
恋やもめモールス信号打つ蛍
またひとり
味方する人
減ってゆく
苦しみを通り越し
恍惚となる
意識が朦朧として
死を覚悟する
思いだけが駆け巡る
世の中が分からなくなり
悲観的になる
色恋はなくなる
体は疲れ果て
モルヒネを打つ
死に水 ....
2000年に入っても芸術や音楽の中では目立った動きを容易に見いだすことはできない。そのようなことを考えていたら、すでに2010年すら通過してしまっていた。恐らくもう、我々の前には我々自身の感覚を驚 ....
似たものばかり 重なる油絵の厚み
偏ってゆくけれど 分野を分けたくない
乾く前に重ね塗る 皮膚呼吸に気がつく
似たものばかり 増えて 要約に飽きる
バランスの軸だけで 死角を生き反 ....
どんな烙印を押されようと
俺は俺だ
どんな色付けをされようと
俺は俺だ
どんなジャンルに区分けされようと
俺は俺だ
どんな言葉を押し被せられようと
俺は俺だ
....
暑い夜は
沢山の手が
跡形無く持ち去っていった
黒檀のヴァイオリン
汚れちまった悲しみに……
中也の悲しみは
なんだったんだろう?
彼は孤独人
人を欲っしながら
人を拒絶していた
誰にも理解されない
運命を受け入れた
その引き換えに
神から創 ....
どうしてと聞かれることが苦手で
常に受け入れてきた。
他人を先頭に持ってきてしまう癖が
いつの間にか本能となって
軟体動物のように私の隣で呼吸し ....
過去も未来も
幻想に過ぎぬ
人々の一瞬明滅する脳内に浮かんだ
空の空に過ぎぬ
過去を捨て、未来を捨て
そして「今」が自分だと気付いた時
全ては作られたものだと悟った時
お前は一 ....
かなしみの陽光の許
ひとり公園のブランコで
揺れるでもなし
揺れないでもなし
あなたは
来ない
約束の
正午
やがて傾きかけた日差しが
わたしをみちびくように
家路を
....
憂鬱な日には
いつも太陽が見えなかった そこに
見るべきものが
僕には 何も 見えなかった
言葉もなく
朽ち落ちていくときに そこから
僕は どこに 歩き出すのだろう
流れる 時 ....
薫風が行く
あとを追うのは誰
梢にちいさないのち
めぐる季節への
地図を広げている
薫風が行く
あとを追うのはわたし
梢に君をみつけて
初夏を一緒に
深呼吸する
朝の挨拶は ....
身ひとつで悩んでいる
可憐な花が逡巡している
体の調子を整えようか
発信音、着信音
花を喜ぶ顔を見ようか
可憐な花が逡巡している
身ひとつで悩んでいる
疲 ....
朧な碧い部屋で
私、夢を見ていたのね
溜息一つ、デキャンタと冷めた灰皿
白いレースで覆い隠されて
私の全てが嘘みたい
スローでムーディな音楽を
誰と聞いていたかしら?
花の名前のグラ ....
空洞が鳴る
鏡の道を
空洞がゆく
光と遊び
冬を呑む子
鱗へ 水へ
蒼をこぼし
葉を追いながら
双子のけだもの
銀を知らず
冬を知らず
....
ランタナのつぶつぶ
少女はコンペイトウ
春夏秋冬 気ままに咲く
甘美の花言葉も知らない ランタナ
ランタナのつぶつぶ
少女は大人のアジサイに
雨季の間 憧れの感情に
無垢のまま 引き ....
誰にも触れられない場所に
花が咲いていた
切り立った崖の中腹
そこには
誰も登って来れない
誰も降りて行けない
そんな場所に独りぼっちで
花は気高く咲いていた
小鳥の囀りに ....
地面に
言い聞かせるように
雨が降り続く
無色の
絶え間ない呪文が
街を塗り潰す
紫陽花は
すべてを受け止めようとして
雨雲を黙読し
雨傘は
すべてを受け流そうとし ....
引きこもり。
裸足でどかどか人の部屋を踏み荒らすような怒鳴り声。
いつかなくならないかな。
水たまり。
綺麗な靴を履いてはしゃいで気が付いたら泥だらけのうかつさ。
いつかなくならないかな ....
夏は訪れるだろう
誰の元にだって
自分の過去をたどるべき時はやってくる
僕は どこに向かうべきだろう
それは 遠い昔に見たことのある光景だ しかし
僕はそこに戻ることはできないのだ
僕 ....
楽屋には雨が降っている
彼は黒い傘をさして
鏡の前に坐っている
これまでに舞台では
幾千もの笑顔を見せてきた彼だが
今はそのどれとも違う笑みを浮かべている
愛する者と共にいるときに
見せ ....
明けない夜はないが
晴れない朝はある
止まない雨はないが
笑えない昼はある
暮れない一日はないが
つれない人はいる
そして夜
幾つもの夜を耐えて
人は強くなると言うが
ちびち ....
詩を書いた
僕は 一体何だろう
だけど 確かではないけれど
僕は思いを綴っている
そして 会社を辞めた
僕は 今 何者だろう
そんなふうにして 渋谷の街が 今日も
涙の色に暮 ....
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