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真昼の冬空
風は片っ端から雲に形を与えていたが
僕は言葉に出来ず 見つめる視線は気絶した
灰色が潰れた雲の上でジェット機が飛ぶ
ぼろぼろとなった空の鼓膜は 僕の声はおろか
トラクターの ....
悲しまないで悲しんでいるような男や女が
広場になだれ込む
梢の上 彼の手は彼女の腰を出発した ようだ
ジュテーム ジュテーム 利根川に雷魚が戻ってきた
またもや文字は泳げなくなった
誰も見 ....
冬には空が降下する
みんな誰も見てないし
奪えるものがあるなら
私から奪って構わない
(雪霧の向こうに浮かぶ
あれは管制塔の光源だ
低い轟音を響かせて
離陸す ....
街の箱
そこで遮断機は間延びした挨拶をする
走り出した少年は億劫な表情で振り返る
無益な背中へ 罵声を上げるかも知れない
少年の背後でにじむ夕暮れは
街を陥没させ、
「磔にされた。」
....
どんな大船に乗っていても
いつかは必ず傷ついて
壊れてしまうんだ
目的地の島には
いくら乗り継いでも
辿り着けない
ある人は途中で諦めてしまい
ある人は志半ばで逝ってしまった ....
ねえ おねがい
あなたが持っている
わけのわからないネタ帳の
一番大切な詩は
どこにも公表しないでほしいの
誰かが大きな声で
その詩が良いと言ってしまったら
きっとみんな同じ事を ....
冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
懐かしくてももう泣けない自分がいました
それが寂しくてそっと瞳を閉じました
太陽が淡く輝いた冬の日のことです
太陽 ....
痒い
と気がついた時にはもう
君の影も形も見つからなくて
胸に赤くて丸い穴ができていた
血と共に全てを吸い取られ
僕に残ったものは
涙だけ
あなたは言った
「もっと頑張りなさいよ」
あなたは言った
「まったく君はだめな奴だぜ」
あなたは言った
「優柔不断な人って嫌いなの」
あなたは言った
「良かったら付き合っても ....
そこには居ないものの影が
たくさんの影に混じっている
やわらかい草と硬い草の境いめを
音はまぶしくかき分ける
紫に囲まれた桜色の道を
ふたりは手をつないで歩い ....
西病棟の長い廊下に湿ったモップをかけるから
清掃婦の後姿は僕の幼い娘に似ているから
寧ろそれは僕の幼い娘ではなく君に似ているから
決して君ではなかった
何度目になるというのか また「正」の ....
質の中に量があり
落下の中に流れがある
無数にまとまる一つ
雨と呼ばれるものの名
儀式のように繰り返され
思い出された最初の音
絶えず動きながら
点在する光を導き
生かしてゆく雨の ....
汗臭いほんとうのことにはもう付いて行けず
けれど 瑞々しい嘘をよけながら
照れ笑いで誰かと話すのが好きだ
政治とか宗教とか戦争とか
どうだっていいことじゃないからつまらないんだ たぶん
....
それは私ではない誰か
窓際の花瓶の水を
新しく換えるのは
いつも気付かぬうちに
橙色の陽が差しこむ
開け放たれた窓から
手を振って身を乗り出す
あれは私ではない誰か
肌 ....
生前全く知らなかった人が亡くなって、知らない人なのに、とても悲しくなり、その人のこと無性に知りたくなる。四日前。僕は最近ある詩誌の端に詩が載って喜んでた。同誌にはキジマさんという人が詩を掲載されていた ....
路地を曲がると猫が居て
草をむしゃむしゃ食べていた
振り返る事三度目に
猫は小鳥になっていた
小鳥は小さく跳ねながら
水溜りの水を飲み
そのまま水に落ちてった
そ ....
倉吉病院にきちがいを連れて行くと5000円もらえる
倉吉病院の裏山には隔離施設と秘密の沼と竹林があって山を越えると
東伯郡になって梨園に出て夏になるとおいしく食べられる
竹林の奥の井戸のトタン板 ....
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきに ....
このままどこかに行ってしまおうか
帰りの車中でそんなことを言っていた二人は
どこにも行けないことは知っていたけれど
その言葉だけで十分満足だった
今、僕らは三人になって車も一回 ....
女は家庭に入るのが幸せ
と語るハナコさんは
コブラを殺せる
名前に因んでか、草花が大好き
洗濯が終わったら
いつくしんで育てた
色とりどりの花たちに
水をやるのが日課
庭を掃いたら ....
あなたの好物を作ろうと
夕暮れ
サンダルを引っ掛けて買い物にでる
昨夜の 些細ないさかいの 償いに
海老の殻を
無心でむけば
いとおしさに変わるような気がして
という
無邪気な ....
「書く」とは
肉体があげる悲鳴かもしれない
そこに僕はいない
ただ体だけがあり
悲鳴をあげている
苦しくて悲鳴をあげている
僕はいない
ペンがすべっている
勝手にすべ ....
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