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小学生の頃のいきつけの内科医院は いつも
消毒薬と漢方薬の匂いがしていた
医者の奥さんが受付の奥で薬を調合していて そこでもらう薬はとても粉っぽくて
飲むと必ずむせた

待合室から小さな裏庭 ....
ナナという名前だった
もとは捨て猫だったらしいが
いつのまにか 
隣の家に居着いてしまったらしい
すごく立派な面構えで
どこかで外国猫の血が入ったのか
ブルーの眼と
むくむくの銀毛を持つ ....
かあさん
お空が ないてるよ
だれかが 
なぐさめてあげたらいいのに

かなしくなくても 
なみだはでるよ
なみだで
せかいを 
あらいながしたあとは
とつぜん 
正気にもどって ....
自分も毛糸玉のくせして
プッチは毛糸玉と
戯れるのが好きだった

ふたつの毛糸玉は
所狭しと転がり回り
私は面白がってその糸を引いたものだった

小学生だった私と弟
そしてやっと歩き ....
食パンのみみが
初めて出会う言葉は
まだ星空が出ている時間から
働き始めるパン屋のおじさんの
「上出来だ」の嬉しい言葉だろう

スライスされる前は
全身が みみなので
工房の全ての音が ....
時計のない国で
のんびりと暮らしています
時計はなくとも
時間はあるわけで
朝、昼、夜と
まこと
大雑把な時間の感覚ではありますけれど

いちまばたきが 
      およそ一秒
 ....
許容量を超えた痛みには
モルヒネを!

彼女にとってのモルヒネは
慰めでも愛でも誰かの保護でもない
背中に彫られ増殖しつつあるドラゴンタトゥーと
顔のいたるところに開けられたピアス

 ....
歩くのに疲れて
たどりついたところに
バスの停留場があった

時刻表に記された時間は
呆れるほどのまばらさだった
古めかしく
ところどころ錆びに侵食されて
そもそもちゃんと
機能して ....
人さし指を 探しています

誰かを指さして
不幸を笑う人さし指ではなくて
指と指の先を
そっと合わせれば
心のバッテリーが静かに充電されていくような
そんな
人さし指を探しています
 ....
生まれおちたその日から
ラストページには
死という文字が書かれています

毎日頁をめくるたび
結末は知っているのだけれど
あえて忘れたふりをします

忘れたふりをしているうちに
ほん ....
薄氷の花が川を流れていくところ

空中の水蒸気が凍って きらめいていくところ

丘に積もったパウダースノウに 風が お絵描きしていくところ

雪の下では 動物たちが丸くなって眠っているとこ ....
たくさんの呼び名を持つ人がいる
あなた
あいつ
あのやろう
あの人
旦那
主人
名前で呼びたくなる時のあなたは
やさしい顔をしている
名前で呼ばれる時の私も
たぶんやさしい顔をして ....
猫には猫の言葉があり
犬には犬の言葉があり
鳥には鳥の
虫には虫の
花には花の
水には水の
苔には苔の
風には風の言葉があって
会話しているのだろう

地球と月も会話しているのだろ ....
この箱庭を平和な場所にいたしましょう
雪の下には
クロッカスの球根を植えて
春がくるのを待ちましょう
小川を作り 犯した罪を流してしまいましょう

この箱庭を王国にいたしましょう
くさむ ....
イマドキの女子にとって
バレンタインデーは
好きな男子にチョコレートを渡して
愛を告白する日では
もはやないようである

友チョコといって
親しい女子同士で
チョコレートを贈り合う日で ....
夜に心があったなら
きっと淋しい心でしょう
闇夜になるのが
淋しくて
誰かを想わずにはいられない

星に心があったなら
きっと淋しい心でしょう
たったひとりで
何億光年旅をして
誰 ....
君のカタチを
いつまでも覚えている
私の躯は
過去と現実
半分づつで出来上がった金属

明日の蹄で
ノックすれば
カーンカーンと
音 響かせる

錆びてしまえば
捨てられるのに ....
私が
こうして
文字を綴るのは
この
鉛筆の芯がなくなるまでのこと

あれ
もう芯がないや、と
気づいてしまうその時を
想像すると
やはり切なくなくなるけれど
きっとその朝は
 ....
子供の頃
古めかしい三面鏡が
部屋の隅にありました

木目模様の板に貼られた
三枚の鏡はそれぞれに
蝶番によってつながっていて可動式でした

普段は折りたたまれているのだけれど
ぱた ....
ぽっかりあいた
空洞は
ただ ひたすらに
まっている

「おかえりなさい」と
言う時を

夜の孤独は
しんしんと冷え
柱時計が時を刻む

ぽっかりあいた
スリッパの
空洞の ....
なんのために
歩くのか
それが死への行進であっても
もはや
退くこともできず
ただ祖國の土を踏むことだけを
夢見て
凍土を踏みしめて行く
泣く力はとうになく
乳さえ吸う力もない
赤 ....
あの子は
人間樹木になって
森へ還っていきました
さあ
嘆き悲しむのは
もう止めにしましょう

春には
芳しき白い花を咲かせ
やわやかな緑の新芽を指先に這わせ
虫や蝶を友とし
秋 ....
今朝も
様々な具材を乗せて
すし詰め電車が
発車していきます

季節は冬ゆえ
暗い彩りになることは
ご容赦いただきます

味は
休日明けゆえ保証します
たらふくご馳走を腹に溜め込 ....
やはり
マグロは天然ものにかぎるなあ
などと
食通を気取る人が言う

今時は
くるくる廻る寿司屋にも
天然ものが
マシーンで握られた
しゃりの上に鎮座している

人間こそ
全て ....
南天の実は 何想う
小さな赤い実 何憂う

昨晚 闇夜が長すぎて
ふかづめ しずぎてしまったよ
剥き出しになった指先が
世間に晒され 泣いている

夏に実を結う南天はない ....
家族が皆
湯を済ませ
私が入る時には
既に それらは力なく
先ほどまで
あんなに
意気揚々と
張り切っていたのに
すっかり
ぬる湯めいていた

湯の中の粒子は
もはや
血気盛 ....
私がいるのは、
自ら吐いた
柔らかな絹糸で 
紡いだ世界の中

境界線はカーヴを描き
命のように 
絶えず呼吸している

薄闇は平安を呼び
孤独は瞑想をくれる

ひきこもりにな ....
昭和二十年八月六日午前八時十五分

ヒロシマは地獄と化した

おなかのなかで泳いでいた名もない 胎児
三輪車に乗って遊んでいた あやちゃん
竹の物干し竿に洗濯ものを広げていた 母さん
ア ....
ファスナーがいつも従順だと思ったら
それは思い込み もしくは 先入観みたいなもので
生地を喰うことがある
貞淑だった人妻が 
何を思ったか豹変し 
畏れをしらぬ 厄介なうえ 世にも面倒な 小 ....
少女が恋した相手は{ルビ舟人=ふなびと}だった
{ルビ陸=おか}で生きてはいけない
それが舟人

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HALさんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(213)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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Days_of_cat- そらの珊 ...自由詩10+*12-2-25
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雨とプッチと毛糸玉- そらの珊 ...自由詩14*12-2-23
みみ- そらの珊 ...自由詩26*12-2-21
時計のない国で- そらの珊 ...自由詩10*12-2-20
「ドラゴンタトゥーの女」を観て- そらの珊 ...自由詩5*12-2-20
みちのり- そらの珊 ...自由詩14*12-2-19
充電器- そらの珊 ...自由詩20*12-2-18
リハーサル- そらの珊 ...自由詩5*12-2-17
美しいところ- そらの珊 ...自由詩6*12-2-16
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小夜曲- そらの珊 ...自由詩812-2-13
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形状記憶合金- そらの珊 ...自由詩5*12-2-8
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