老人ホームで百歳のお婆さんが旅立ちました
「若い頃桜島が噴火してねぇ・・・
首輪をつながれた愛犬の悲鳴が
今も聴こえるんだよ・・・ 」
遠い昔に世を去っても
お婆さんの心に ....
厳寒のなかで花は枯れることができない
雪をかぶり凍てつきながら
己の色を発し続ける
夢見るように
生きることと
夢を見ることとは違う
....
雪のあと
空おだやかに澄みわたる
望みをひとつと問われれば
家族が健康で過ごせますように
儀式の火は燃え上がり
今日という実をはぜていく
紅白の餅は黒くこげ
昨年収穫した稲藁で編んだ ....
ノートの片すみに描いた {ルビ♡=ハートマーク}
それは恋だった
でも、愛は未だ描けないでいる
冬の落ち葉は屋根ですね
虫は春の夢をみる
柱も窓もないけれど
いのちが育つ
そのために
必要なものはそろってる
無用なものは何もない
あなたに家があるように
わたしに家があるように ....
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
スーパーの立体駐車場に車を入れて
そのまま買い物に降りて行く
おにぎりとお茶は持参だが
ちょっと甘い物が欲しくなる
ねらい目は見切り品コーナー
大きなシュークリームが一個68円
....
(以下英語で)
「カスタマー・サービスです」
「あの、レ・ミゼラブルの上映スケジュールを知りたいのですけど…」
「それでしたらウェブサイトで調べて下さい」
「さっき調べたのですが、 ....
赤いウミウシの模様であった
デパートの包装紙
それで母はちゃっちゃかと洋服の型紙を作る
かつて何かを包んだものの匂いがしていた
ヒトガタに切った人形が
夢のなかでトモダチになるように
....
ほんの小さな子どもだった
たぶん五歳くらいだと思う
私は明確な意思を持って
嘘をついたことがある
――お母さんの背中だった
月が出ていた
星も見える
風はとても冷たい
凍てつ ....
その金曜日の午後
いつものように黄色いスクールバスから降りてきた
娘達の笑顔を確認してから
思い切り抱き締める
「ねえ、ねえ、今日学校でこれを描いたんだよ」
私の腕を振り切る勢いで バックパ ....
半熟玉子みたいにさ
ぷるぷるしちゃって
ふれることもできないよ
みつめてるだけ
たべたいけどね
みつめてるだけ
あつかいにくいのに
ちょっとひかれるね
味は知ってる
つもりだ ....
底冷えやオカマ紅白歌合戦
昨日汚れた
白い食器
それをシンクに
溜めたまま
母は朝から
テレビゲーム
理想の親を
想像しながら
幼いボクは
小さな身体で
大きなため息
一つ吐く
....
靴底を裏返してみる
均等に減っている
癖のない人が
うらやましい
愛用すればするほど
そこに紛れもない自分の足跡が刻まれる
靴底なんてどうでもいいぢぁありませぬか
それでもうらやんで ....
子どもは揺りかごのなか、ぐっすり。と水になる。
笹船のように耳だけをうかべて、聴いているのは、さざ波の音。
僕は、耳を手のひらで掬いあげ、扉を押し、ひらく。
足下には砂、埋もれた階段、月明かり、 ....
ユートピアはない
シャングリラはない
サンクチュアリはない
バルベックはない
でも地獄はある
それはいま
きみのいる
世界だ
でも項垂れることはない
地獄とは生きる為の辛さや ....
月夜が寝たとき
花壇の秘密を知ろう
水は未来になって
木々は力になって
土は休むことなく
日々は育つ
いざ海へ出よう
きみは船
ぼくは風
帆を張り進む先はきっと
胸躍るバー ....
宙の風に
吹かれていこう
きっと見つかる
きっと助かる
かるい身ひとつ
どこまでも
開かれてゆく
宙の風の
声を聞こう
きっと理解る
きっと返せる
通 ....
繋がりなんて無いと思っていた
見えないものは信じないと
決め込んでいた
飛び交うのは
想像したくないものだと
決め込んでいた
見えないものは
ふれあえないものだと
勝手に案じて ....
枯れ落ちて、
地面に溜まった
老葉達が
カサカサ、かさかさ、冷たい早朝の風に
震えてる
白い息を吐きながら
ジョギングする人
大きい犬を散歩する
ダウンジャケットの人
....
葉を散らし、葉を散らし
刺々しい肌に手を触れる
ほろほろと崩れる外側に
掠れた自分を重ねてみる
空気が凍った森で
ひとり
皮を剥いで、皮を剥いで
痛々しい肌 ....
友よ 教えてくれ
いったい何処へ行くのだろう
君とは長い付き合いだ
離れてはいても仲間たちと繋がり合っていた
私は決して孤独ではなかったが
すぐ側にいた君と親しくなるのに時間はかからなか ....
本当の自由を求めて空を見る
名も知らぬ黒い鳥が
隊列を組んで空を渡っていった
翼があるから自由でいいねと
そんなふうにつぶやくのは
自分の翼で空を翔んだことがない人間が想うこと
あ ....
さよなら
と言いながらつむじ風
くるりと巻いて
さよなら
ともう一度
こんにちは
とは言わないで
何度も
何度も
さよなら
止まらない銀河鉄道
開かない窓からアンドロ ....
気持ちが沈み込む日には
煮込み料理を
作るに限る
強すぎる想いは
香味野菜と一緒に束ね
鍋で煮込んでしまえばいい
「生野菜で出されたら
たまったものじゃありません」
....
母がいる時
我侭で
祖母がいる時
譲らない台所
誰が最初に教えたの
料理がうまくなるには
見よう見まねが一番で
サトウ、シオ
スッパイ過去の
....
歩くのに疲れて
たどりついたところに
バスの停留場があった
時刻表に記された時間は
呆れるほどのまばらさだった
古めかしく
ところどころ錆びに侵食されて
そもそもちゃんと
機能して ....
明日は 今日よりも軽やかに
と我々は{ルビ希=のぞ}んで
今日は 昨日よりは{ルビ厳=おごそ}かに
と我々は慎む
平穏になればなるほど
勝手にもがいて 考えこんで 苦しが ....
人さし指を 探しています
誰かを指さして
不幸を笑う人さし指ではなくて
指と指の先を
そっと合わせれば
心のバッテリーが静かに充電されていくような
そんな
人さし指を探しています
....
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