なにかを
つぐなうようにして
秋が
入って
くる
ピアノを弾いて
いる
君の指の
一本だけが折れて
しまって
いた
あの歌 ....
ありがとう
ありがとう
散らばったお米を一か所に集める
花弁をお米に見立てて菊という文字にはそんな意味がある
そして菊の花言葉は高潔、清浄、真の愛だ
散らばってしまった愛 ....
哀愁のコートを纏い
感傷の中を走り抜けて
憂鬱の煙を吸い
恍惚のため息を吐き
嘲りのヒールを鳴らすと
マゾヒックな水溜りが弾けた
煩わし ....
奇を衒う、という作風は
技才ある方がやるもんです
私のようなあんぽんたんには
到底真似できやしないのです
弁えております
それに及ぶ才がないことも
学に費やす気がないことも
努力 ....
空間耕す
捏ねる時間
香りがいざなう虚空のしらべ
舌の根深く余韻がはためく
はためく蝶の歓びの燐粉
店主の眼差し豆一つ魂
店を出れば空が街が人々が
鈍色の光沢 ....
バス停に佇むやじろべえがいます
いくらバスがやってきても乗ろうとせず
バス運転手たちの間では有名な話です
水族館にマンタばかりを眺めているやじろべえがいます
あまり手を大きく広 ....
111016
経営陣は一連の不祥事の責任を取って速やかに総辞任いたします
朝になるといつもの顔ぶれが胸を張って正面玄関にやって来る
あれは単なる夢だっ ....
宇宙に開かれた水の滴
表面張力によって浮かぶ
塵芥の島嶼の一部の
寄生する細菌細菌
細菌が人生
泥の堆積/火の木端/夢に沈む
雲の破片の沈殿物
屋敷の塀の高さに隠された
思い出 ....
写真集の中の写真をうつした写真家は
もう死んでおり
この世界にはおらず
いまも死につづけていて
モノクロームに象られた
すべすべとした紙のなかに籠って
かたくなに孤 ....
言葉が離れてゆく
まるで塵のようだ
堕ちてゆく言葉に求めてはならないもの
あれは何だろう
言葉が壊れてゆく
まるで自分自身のようだ
愛されていないと不安になる
....
水面を 滑る 妖精は
しいろい 小波の 輪を飛ばす
「汝 負い目は ありますか
わたしは ないから たらららら」
月光 影絵 四肢乱舞
無作為 イイエ 前衛よ
「知らない ことは 罪 ....
朝の涼しい職員室で
担任の先生が亡くなっていた
若い女の先生だった
青白い横顔が見えた
海のように
とてもきれいだった
話は変わって
雲には感情がないと思う
感情があったら ....
最近自分の影を投げ捨てる人が多いと聞きます
一度投げたら最後、もう死ぬまで影はなくなるそうです
自分の体全体がぺりぺりかさぶたをとるような感覚であり
それはもう快感を越えたものである ....
そこここあそこなたでここ
かむかむしかくいなたでここ
ちずをひろげてそこなたでここ
ころころさかをなたでここ
さてはてどこだなたでここ
ことことささやくなたでここ
....
ひらりくるり
かれはおちてきて
ふみつける意志もなく
ふみつける
じゃかり
ひとりで生きているようで
ほんとうはひとりで生きていない
しかしそれは
じぶんの意志とはまったくむかんけいの ....
きのうあなたの夢を見たんだ
あなたはぼくに冷たかった
ぼくは遠い心でそれを憎んだ
秋の虫が星のように鳴いている
小さな命に割り込んでゆく術を
きょうも眠りにつくまえ見 ....
雨が静かに降っている。
この悲しみを流せるか
悲しみすべて流せるか
雨がしとしと降っている。
この嘆きを流せるか
嘆きをすべて流せるか
雨がひたひた降っている
この苦しみを流せる ....
冷たい雨粒が
傘をノックする
居留守をつかう僕を
執拗にノックし続ける
開けてはいけない
部屋を覗かせてはいけない
開けたら最後
あいつはズカズカと
上がり込んできて
胸 ....
このまえ死んだとき
このくらいの闇にこのくらいの明滅があった
その明滅はちっぽけで
かすかなものだったというのに
金木犀や放射性物質なみの存在感があったんだ
だから
もう一回
そして
....
星が鳴いている
ちいさないのちが鳴いている
何億光年かけて
星は
秋の虫になるの
ちいさないのちが鳴いている
星が鳴いている
子供が鈴なら 親の愛は それを揺らす風
世界が鈴の音で いっぱいになれば いいのに
かみが かわくまでは
はにかみで あいせそう
つきのうらがわの めつぼうのあらすじも
かわいた だいちの のろいのことばすら
そよぐ水草、駿馬のたてがみ かみが かわくまでは
....
息を止めろ
そしてそのまま動くな
息を止めろ
そしてそのまま動くな
息を止めろそしてそのまま動くな
息を止めろ
息を止めろ
息を息を
止めろ止めろ止めろ
お前 ....
最近はほとんどの時間を
記憶を食べて過ごす
口に含み
よく噛んで飲み込む
そして、
次の記憶を口に含む
手紙をちぎってください
ひとつふたつ色づくまえに
すべてを忘れほどけたつぼみが
身をよじり花ひらく頃
すでにその使命を終えたわたしを
しっかりと見届けたなら
夢うつつのまに時は過ぎ
....
ゆうべ
三時を過ぎた頃
辻々を葬列が通ったのを
お聞きになりましたか
気の早い病葉がかさかさと
先導僧の笏杖に道を払われ
仕舞い残しの風鈴がひと時
うるさく鳴らされたのを?
西洋で ....
本は絶対に怒らない先生
解らないのを怒らずに
読み返しさえすれば
何度も根気よく教えてくれる
だけど絶対怒らない代わり
間違っていても正してはくれない
それは生きている先生じゃないと
....
私の目の前でプロポーズをした若い男女のカップルが
熱い口づけをして蝶になってしまった
風に小首をかしげるしぐさが可愛いと
写真を撮りながら薔薇に変身していったカップルもいる
迷路の ....
降りてこない遮断機の前で
ひとり半目の
通せんぼ。
向こう岸の空気。
酸化しないと決めたはずの鉄が
怯えるかのように
急激に震えだす。
半目の背丈ほどある姿が
決まり事の便 ....
ヒグラシの虫かごを片付けながら
また来ますよ と夏が言ったので
私は わかってますよ と返した
入道雲と夕立も出ていくみたい
いつも 夏は勝手にやってきて
小さい 秋を残して ....
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