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白髪の師は
開いたドアに凭れて
私を待っている

次に私が
ドアを抑えて
青年を待っている

ほんとうのことはそうして
語り継がれてゆくだろう

ドアを抑えて立つ、私の傍らを
 ....
人が(ことば)を綴るようになったのは
一体いつからなのでしょう?

無数の国のあらゆる時代に
(ことば)が創られるより遥かな昔
宇宙に独り(ことば)はしーんと、住み
あなたの胸に転生した( ....
「かわいい」
保育園の部屋に初めて入った周を
年長の女の子が、迎えてくれた

「じゃあね」
僕と妻はにこやかに手をふって
若い保育士さんに抱っこされたまま
きょとん、とする周をあずけてか ....
熱燗の、おちょこの横の
受け皿に
五匹のししゃもが銀の腹を並べ
口を開いて、反っている

いつか何処かで観たような
あれはピカソの絵だったろうか?
絶望を突き抜けてしまった人が
空を仰 ....
ソチ・オリンピックのテレビ中継で
上村愛子選手の姿を見て
ぐ…っと来た、僕は
少々涙腺を緩ませながら
隣に座る、妻に云った。

「攻めに攻め、金にも勝る、滑りかな」

数日後、シスター ....
「詩」は「言葉の寺」と書くので
玄関の戸を開いた
小さい「口」に
一度、私は入ります――

ふたたび{ルビ娑婆=しゃば}に出る時は
世界の総てが
「言葉の寺」の中に在るような
新たな目 ....
「軽くふれて下さい」という場所に
そっと手をあてると、自ずとドアは開いた。  

人の心も、軽くふれてみようと思う。  
今はもう(夢の時間)になった、十代の頃。  
ほんとうの道を、求めていた。  
敷かれたレールを、嫌がった。  

思えばずいぶん、{ルビ躓=つまづ}いた。  
人並に苦汁を飲み、辛酸も舐め ....
黒光りのレコード盤が  
プラスティックケースの中で  
いつまでも、廻ってる  

ゆーるりるりるーゆーるりるー…  

傍らに立てかけられた  
紙のブルージャケットの  
ソニー ....
今日は横浜詩人会賞の授賞式。  

司会を務めるわたくしは  
天の恩師の形見を  
スーツの内ポケットに忍ばせ  
会場ホテルのトイレに入り  
シャツの襟にゆるり、巻く。  

ネ ....
僕が思春期に可愛がっていた
片瀬江ノ島駅に住む、野良猫ニャー子は  
破れた恋に涙を流す学ラン姿の僕に寄り添い  
顔を膝にこすりつけ  
(にゃあ)と優しくひと声、鳴いた  

僕と出逢 ....
追分の池の周りの  
畦道は  
木漏れ日の光と影が交差して  
晩夏の蝉は  
静かにじぃ…と経を詠む  

くっきりと膨らむ雲は
絵画の空を、東へ移ろい  
池の向こうの緑の木々も ....
道の先には置き忘れた  
少年の靴が、ひとつ   
夏の日に照らされ輝いていた。  

靴は近づき、通りすぎ、遠のいて――  
ふり返るとやっぱり輝いている  
あの少年の靴  

い ....
どうすれば僕は  
急坂さえも一気にのぼる  
機関車男になれるだろうか?  

この腹に内蔵された  
エンジンの蓋を開けたら  
思いの他にぼうぼうと     
炎は燃えていたのです ....
目の前に、焼きたての 
丸い{ルビ麺麭=ぱん}がある。    

何の変哲もないその麺麭は 
その少し凹んだ丸みは 
その味わいは、きっと 
世界の何処にもない
たった一つの麺麭である。 ....
心を見た人はいません。  
心に手をふれた人もいません。  
それでもみんな 
心の場所を知っています。 

もしも心がなかったら 
今日のあなたは、笑わない。 
昨日の私は、涙を流さな ....
僕がある記事を書いて 
入ったお金を 
そのままぽんと、妻に渡そう。 

なぜなら妻は、もうすぐ2歳の周を抱えつつ 
僕の書いた原稿を活字に打ってくれたり 
郵便ポストに入れたり
手づく ....
雨は、あなたを育むでしょう 
私もいろいろな雨に、降られました 
きりさめ 
にわかあめ 
長い長い雨だれの音が 
ぽつり、ぽつり、と滴るごとに――  
潤う土の根を伝い 
茎を伝い 
 ....
僕をみつめる妻の目に、炎がめらめら燃えている。 

「人の意見に惑わされずに 
 あなたの道を、往きなさい」 

「椅子の足の一本が折れたらどうなる? 
 あなたの姿を、信じなさい」 
 ....
赤信号が、青になる{ルビ瞬間=とき} 
気づいたら右足はアクセルを、踏み 
車は、動き出していた 

まっさらな明日へ至る 
まっすぐな道を走る時 
ハンドルを持つ 
私の脳は、{ルビ空 ....
今日という一日に数え切れない
(ありがとう)が、隠れている。  

よく晴れた日の夜空に 
いつのまにか姿を現す 
あの星々のように―― 
箱のカバーから、背表紙を指で摘み
中身の本を取り出して  
カバーは向かいの空席の、あちらに 
中身の本は目線の下の、こちらに 
置いてみる 

いつか人が(体を脱ぐ)のは 
こういうこ ....
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡 ....
薄茶けた昭和の古書を開いて 
ツルゲーネフの描く 
露西亜の田舎の風景から 

農民の老婆の皺くちゃな手は 
搾りたてのぶどう酒が入った器と 
焼き立ての丸い{ルビ麺麭=パン}を 
時を ....
雨の降る公園で 
ずぶ濡れのまま、しゃがみ 
小石を手にした少年は 
地面に絵を描いていた 

通りすがりの僕は 
吸い寄せられるように、公園に入り 
少年の傍らに、しゃがみ 
すっぽ ....
背筋を伸ばしたスタンドの顔が 
ジイドの古書の開いた頁を照らす時 
長い間つけていない 
TV画面に映る自分の顔と、目があった 
暗闇の航路を照らすあの灯台に
あなたは、詩人を観るだろう。 
年の瀬の上野公園は 
家族づれの人々で賑わい 
僕等は3人で 
枯れた葦の間に煌く 
不忍池の周囲を歩いた 

ゆくあてもないような僕等の歩みは 
本郷へと進み 
詩友Fの朗らかな顔に ....
今迄の僕は 
どれほど多くのまなざしに
みつめられてきただろう   
どれほど多くの手に 
支えられてきただろう 

今、僕は、ようやく 
幹の内側からいのちの歓びを{ルビ呻=うめ}くよ ....
なかなかはいはいしなかった周が 
ある日突然、棚に掴まり立ちあがった。 

「すごい、すごい」 
諸手を叩いて、僕は言う。 

「ぱ・・・ぱ・・・、ぱ・・ぱ・・」 
こちらを向いて、周が ....
そらの珊瑚さんの服部 剛さんおすすめリスト(94)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
風の通路- 服部 剛自由詩614-5-18
夢の手紙- 服部 剛自由詩914-4-25
小さい靴_—入園の日に—- 服部 剛自由詩1614-4-25
ししゃも- 服部 剛自由詩21*14-2-20
選手宣誓ー或るスキーヤーの涙ー- 服部 剛自由詩6*14-2-20
「詩」__- 服部 剛自由詩3*14-2-16
自動ドア- 服部 剛自由詩13*14-1-16
無人駅にて__- 服部 剛自由詩11*13-11-6
ちぐさにて__- 服部 剛自由詩11*13-10-21
タイの締め方__- 服部 剛自由詩9*13-10-12
被災地の犬__- 服部 剛自由詩1013-9-15
風の手紙- 服部 剛自由詩613-9-10
少年の靴__- 服部 剛自由詩1213-8-31
機関車男__- 服部 剛自由詩1213-8-18
日々の麺麭__- 服部 剛自由詩9*13-8-13
地球の夢__- 服部 剛自由詩8*13-8-1
聖銭(ひじりぜに)__- 服部 剛自由詩313-7-23
水彩画_- 服部 剛自由詩613-7-14
NOMOの生き方_- 服部 剛自由詩613-6-11
空_- 服部 剛自由詩613-5-23
ありがとうの星_- 服部 剛自由詩813-3-8
あちらとこちら_- 服部 剛自由詩4*13-3-3
なめくじ親父_- 服部 剛自由詩14+*13-2-19
老婆の麺麭- 服部 剛自由詩8*13-2-12
ペガサスの瞳__- 服部 剛自由詩3*13-2-12
自画像_- 服部 剛自由詩5*13-2-6
灯台ノ道_- 服部 剛自由詩6*13-2-6
卵の音_- 服部 剛自由詩6*13-1-25
いのちの歓び_- 服部 剛自由詩8*13-1-21
喜びの日_- 服部 剛自由詩5*13-1-21

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