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  ながい階段が その夜
  わたしの内に滑らかに延び
  喉の辺りで途切れていた


  笑えるほどにせせこましい
  悲しみなど疾うの昔に
  桃色の床で何者かに
  踏み ....
  歓びはなかった
  とはいえ哀しみもなかった
  わたしたちはベンチを分け合って座り
  冬の始まり、辺りに人影はなかった
  言葉はさっきまで……あった
  今は沈黙さえ、ない ....
  白鳥のいない湖はだれのものだろう
  わたしは随分長い時間待っていた
  藻の緑に染まった水面に 静かな波紋が広がる刹那を
  何かによごされた羽が 目を逸らした隙に
  そっと浮 ....
  冷蔵庫の中で
  鶏卵の形状はときに難解だ
  それは石油や民主主義やマックブックが難解であるのと
  何ら遜色ない次元での難解さ



  女は夜、井戸で桶に水を汲み
  ....
  鳶という鳥の
  名前を覚えたのもこの街だった
  アキタケンホンジョーシゴモンチョウ
  蜜柑色の陽射しにひたされた夢の形



  パーマ液の匂いがするこの街
  ここ ....
  無数の傷のついたフライパンで
  三枚のベーコンを焼いている
  その男はただの大人だった
  円周率を小数点以下八桁まで記憶し
  足指のひとつに水虫をわずらう



  ....
  {ルビ転寝=うたたね}をしながら
  ピーナツの殻を割る
  眠りと目覚めの隙間には
  すこしずつ雪がつもってゆく
  ひどく無口で、
  愛らしい雪が切れ間なく
  ピーナ ....
  何冊かの本を捲りながら
  目についた語句にマーカーをひく
  燕
  ウクレレ
  信用取引
  太陽と五徳ナイフ
  辛亥革命と水たばこ
  有機ELディスプレイとビート ....
  積み木の赤い部品が
  緑のうえにそっと載る



  駆け抜ける電車の影が
  血の気のない床を砕いて
  それから
  途絶えて消える
  轍のひとつも残さず
   ....
  金色の水がつたうと
  かたく四角いその壁は
  栗鼠のようにまるくなる
  ひとびとの話す声が
  物陰にひしと隠れる秋  
  きみの舌は木枯らしをつかみ
  それからねむ ....
  国
  という言葉がいま浮かんだけれど
  どうしたものか思案している



  一ヶ月近く洗っていない
  ランチョンマットには三箇所の染みがついているが
  それでも洗 ....
  あいするひとよ、
  ほんとうの
  きみのその気持ちは
  とうめいな廊下になって



  蜘蛛の巣がからまったような
  きょうの丸い月にむかって
  ひたむきに伸 ....
  夜が、
  たえまなく改行を続けているあいだ
  いくつかのケーキがゴミ箱に捨てられ
  何匹もの犬が鳴きながら焼き殺され
  きみの体に秘められた、すべての
  愛らしい軟骨は ....
  ぼくらは
  月の上で、
  胡坐をかいて麦茶を呑む
  部活を終えた中学生よろしく



  ぼくらは宇宙の果てで
  煌めく星を見ない
  空気も吸わない
  ただ ....
  きみの口から
  高速道路が伸びていた
  ビュンビュンと車が行き交う
  粘液のような真夏の夜に
  赤い光を撒き散らして



  そこには、一台だけ
  逆走してい ....
  四月、僕は
  川のある町に
  あたらしく暮らし始めた
  水をふくんだ日の光を
  吸いこむと、眼には涙が滲んで



  黄色い床に積まれたままの
  段ボールをつ ....
  ねえ
  これが、
  産まれたての時間。
  そう言いながら少女が
  綿飴をひとつ、ぼくにくれた



  まぶしい屋台の{ルビ犇=ひし}めき合う
  貧しげな七月の ....
  ガラス製の灰皿が
  テレビの色に瞬きしたとき
  遣る瀬ない日々に君は
  重たい欠伸を隠した



  朝陽は
  その優しさを
  皺くちゃのハンカチに包んで差し出 ....
  事が終わると君は
  床に落ちた下着を拾い
  なまぬるい脚をとおした
  ブラジャーをつける前に時計を巻き
  白いシャツを着る前に
  メンソの煙草に火をつけて
  事が終 ....
  私があなたを好きになった日、
  私の心は赤かった
  闇夜に灯った明るい火の輪
  一頭のライオンが駆けてきて
  ひと跳びにくぐり抜けていった
  その先は草原になっていて
 ....
  暗い夜には
  一羽の鳥がやってきて
  私の口に潜り込むと
  枝を使って舌根の辺りに巣を作り
  数個の卵を産みつけ飛び去ってゆく



  朝、私の舌で
  殻を破 ....
  君は唇を震わせる
  火を点けたばかりの
  赤い輪郭をした石炭を
  心の何処かに抱えるように



  愛することは愛を傷つけ
  悲しむと悲しみは消えてしまう

 ....
  古い五線譜からきみは
  しゅるしゅると一本を抜き取り
  四角い枠を作ると
  そのなかに月面の色を塗った
  それは正しいことだ
  それは、正しいことだ
  ぼくたちの耳 ....
そらの珊瑚さんの草野春心さんおすすめリスト(23)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ながい階段- 草野春心自由詩415-9-22
街路樹- 草野春心自由詩614-9-28
風に似た生き物- 草野春心自由詩513-10-19
難解さ- 草野春心自由詩613-10-10
S62- 草野春心自由詩513-8-31
大人- 草野春心自由詩513-2-25
ピーナツ- 草野春心自由詩613-2-9
マーカー- 草野春心自由詩713-1-29
積み木- 草野春心自由詩712-12-2
秋の夢- 草野春心自由詩912-10-10
ことのなりゆき- 草野春心自由詩1212-9-20
あいするひとよ- 草野春心自由詩812-8-27
たえまなく改行を続けているあいだ- 草野春心自由詩812-8-20
麦茶- 草野春心自由詩212-8-15
高速道路- 草野春心自由詩712-6-27
沙弥子- 草野春心自由詩1012-5-26
綿飴- 草野春心自由詩19*12-5-20
ハンカチ- 草野春心自由詩712-4-26
事が終わると- 草野春心自由詩7*12-2-18
わたしのいろ- 草野春心自由詩7*12-1-30
- 草野春心自由詩11*12-1-21
石炭- 草野春心自由詩612-1-2
月面- 草野春心自由詩7*12-1-1

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