彼の入れ子から 取り出されていく 三つめの人形は
彼女の 小さな入れ子から 取り出された
二つめの人形と 同じに見える どこまでも水平な
仮の広場で 無限の組み合わせが 見つけられていく
....
とても広い湖の
至るところにブイが浮かび
竹を編んだ丸いものが
そっと押されて岸を離れる
竹を編んだ丸いものから
一つのブイが遠のいていき
またそれ以外のあらゆるブイが
どれも等しく遠の ....
月のかさは見えないけれど
ふかい雲のむこうでは
気象という名が動きそう
雪の端には
小ずるいねずみも
踏んでやろう
テレビ塔では
三尾のきつねが層になる
生きている性質に,進むことを促すような
活動領域がどこかにあって
そこの何かごく小さな信号のようなものが
僕の進むことを前提にともっている,
そんな気がします。
そしてそこでは
誰かと ....
ウルムの大氷期のそのさなか
夜の手触りと、ほのかな曳光に、
うらがえる雪はのぼりゆく
ひかりを帯びていて、
しゃん しゃん、雪が、
ともあれ、このように、考えのまえにすでに、寒さが
....
細倉鉱山は
日暮れにどこかへ通じていく。
無人の坑道の先にあるのは
ほんとうの地名か
親しい人のまぼろしか。
夜,蔵王の山陰に
たよりない記憶はのみこまれ
吹き越す風に
....
空気中を諸分子が漂うとき
光と一緒に駆けていく何かがいます。
冷たいかぎりの空のむこうに
銀色の紙がヒラヒラ見えるでしょう。
あれはその何かが 早朝の霧雨の中で
願いを燃やしたので ....
液性大気のなかに
光はあまりすきとおってしずんでいて
見え方がおかしい。
あの貯水塔は私を見ているようだし
とおくで杉が一輪の花のように噴きだしている。
(ほんとは何処も真っ暗なのに)
光がいきわたる枯れ野が見えているけれども
私は,あの動かない林から
よどみしみだす
こけ色の時間領域を感じている。
(私たちはくらい旅の途中でそれを見ます)
{引用=バージェス化石群のうかぶ
地底の暗がりで
水晶の音を聞きながら
ねむっていた
あなたへ
拝啓}
東北本線の夜行便が
山沿いの陸橋をちいさくわたり
けわしく青らむ空の奥 ....
涙する者は
死んだあと
青いかなしみとなって
宇宙遠方の
つめたいの霧のなかを
何かを考えてるふうに 歩き続けます
ひとが何光年もの希薄のなかを
さまようはずは ないです ....
雪が溶けたら
やわらかい地球の黒土花壇に
「火星たんぽぽ」の小さな名札をたてよう
ひとが植えたわけでもないタンポポが
好き勝手に咲いてるような
そんな花壇がいいだろう
そこから芽吹 ....
王子様は来ない。
おたまじゃくしはカエルになるけれど
何度キスしたところで
カエルは王子様にはならない。
眠り姫は絶対に目覚めない。
夢の中で僕は愛されていないから。
シンデレラは ....
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