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 五年ほど前であろうか、私は銃を返納した。煩雑な更新手続きと、年に一度の警察の自宅検査。そして銃という凶器になり得る道具とその弾薬。それらの管理だけならまだしも、わずか三ヵ月の猟期と少ない獲物。それら ....  まだ里に雪は降りていないが、初冬である。晩秋にかけて、割と寒くはなく、むしろ暖かいと感じた。
 あたりはすっかり寂れた風景となっていて、収穫の予定のない近所の畑の渋柿だけが鮮やかな色を呈している。 ....
不思議であった
私の前にはいつも道があって
そこをしずしずと歩いている
ホウの葉とサワグルミの、落葉の上を
ソフトに足を進めている
まったくなんの期待もない山旅に向かったのだった
ただ、歩 ....
 九月十九日、登山道除草九日目。先月中旬から土日を狙い、作業は遅々ではあるが進んでいた。
 未だ暗い早朝、ヘッドランプを点けて準備をする。ときおり、行楽に向かうのか県境トンネルの中を疾走する車たちを ....
失われつつある夏の日差しをむさぼるように
虫はうるさく徘徊し最後の狂いに没頭する
夏の影は次第にゆがみながら背骨を伸ばし
次の季節の形を決めてゆく

夏、それは誰もが少年であり、少女であった ....
 八月十五日、登山道の除草を開始した。四カ所の登山道コースを一人で受け持っている。トータル十日以上はかかるだろう。
 人は「大変ですね」と言う。しかし、大変なことなど何一つない。思い悩むことはないし ....
 もう無理はできないな、と最近感じる。年々、暑さが身に沁みて体を痛めつけているのが解る。昔はそうではなかった、というのは誰もいずれは知ることである。私も老いつつあるという事なのだろう。
 三週前から ....
遠くに見えるのは
幼子の手をひいた二人の影
エノコログサを君の鼻にくすぐれば
ころころと笑い
秋の残照に解きはなされた

浜茶屋のまずいラーメンをすすり
それぞれの砂粒が肌に残り
それ ....
 ヒグラシが鳴きはじめ、アブラゼミからミンミンゼミと蝉の声は種類を増し、最終的にはミンミンゼミが最後となる。里では秋に鳴くツクツクホウシなどがあるが、こちらではあまり聞かない。また、これから八月の声を ....  山域は乳白色となり、雨粒が地面を叩く音が、朝未明から始まった。決まって七月は、雨が多いと、誰彼なく言うのだった。
 雨が満ちてくる。体の中にも脳内にも、まるで人体は海のように静まり、宇宙のように孤 ....
 数日前の日曜日、めずらしく一日中掃除をした。夏の初めと晩秋に行われる保健所の巡回のための掃除である。年に二回、保健所職員と食品衛生指導員が各営業施設を見て回る。基本的になぁなぁな巡回でしかないのだが ....  五月二十六日、伐採した木が跳ね、左腿を痛打した。骨折は免れたがひどい打撲に悩まされ、丸四日休んだ。その後復帰したが、膝は痛くて曲がらず、その不具合な足で、やらなければならない登山道作業や林業作業をこ ....  クジラの胃の中で溶け始めたような、そんな朝だった。朝になりきれない重い空気の中、歩き出す。歩くことに違和感はないが、いたるところが錆びついている気がする。明るい材料は特にないんだ。アスファルトの凹ん ....  ひどいもので、昨晩午後七時過ぎに眠くなり、そのまま朝の三時頃まで眠ってしまった。読みかけの本はわずか一ページしか読まないうちに眠りの世界へと入っていったのである。当然、朝は早くなる。尿意で目覚め、時 ....  八月中旬から十月初旬まで、延べ十二日間の登山道や古道整備に出向き、そこそこの賃金を得た。夜明け前にヘッドランプを照らし、山道に分け入る時の締め付けられるような嫌な感じを幾度か重ね、ようやく解放された .... とてつもなく深い闇がやってきそうな夜
私たちはたがいに嘆き悔やみ
とりもどせない時間を語った

テレビはあいかわらず五月蠅い番組だらけで
MCの甲高い声だけが鼻についた

声帯をナイフで ....
 「本日、登山道の除草をしています。御注意ください」、と、コピー用紙にマジックで手書きしたものを車のサイドガラスに貼り付けたのは朝の五時五〇分。その後今季初の登山道の除草に分け入った。
 八月中に廃 ....
林床にはブナ林特有の雑木が生え
そこを刈り払い機で刈っていく
すさまじいヒグラシの鳴き声の海が森を埋め尽くし
私たちの耳に、錐もみ状に刺さっていく

急な斜面を足場を作りながら雑木を刈る
 ....
廃田の草を刈っていると突然大雨となった
しばし、刈り払い機を雨の当たらない所に置いて
雨の中に立ったまま私は辺りを見ていた

これからのことを打ち消すように
雨は降りしきり、そしてまた
何 ....
 コロナの影響で家業はさっぱりだったが、昨日は久々に朝から厨房に立った。昔から来ていただいている県内客の四名様。この人たちは少人数でやってきては、楽な場所で楽に山菜を採りたいと色々と突っ込みを入れてく .... 君と星狩りに行ったことを思い出す
空が星で埋め尽くされて、金や銀の星が嫌というほど輝いていた
肩車して虫かごを渡し、小さな手で星をつかんではかごに入れていた
ときおり龍が飛んできて、尾で夜空をあ ....
蛾がおびただしく舞う
古い白熱電球のもとに
私はうずくまり
鉛の玉を抱えていたのだった

来たる冬はすでに失踪し
魚眼のように現実を見つめている
そして体内に大発生した虫
幼虫の尖 ....
なにかを期待するわけでもなく
木は透明な思いで空を見上げていた
野鳥の尖った飛翔が
空間を切り裂くのを楽しんだり
みずからが浄化した
清廉な空気を謳歌している

人がまだいない頃
木は ....
峰と峰とのつなぎ目に鞍部があり、南北の分水嶺となっている
古い大葉菩提樹の木がさわさわと風を漂わせる
峠には旅人が茶化して作った神木と、一合入れの酒の殻が置いてある
岩窟があり、苔や羊歯が入り口 ....
貴方の声が
虫のように耳もとにささやき
私の皮膚を穿孔して
血管の中に染み込むと
私の血流はさざめき
体の奥に蝋燭を灯すのです
貴方のだらしのない頬杖も
まとわりつく体臭も
すべてが私 ....
どこか
骨の
奥底に
黙って居座る
黒い眠りのような
小雨の朝

歯ぎしりする歯が
もうないのです
そう伝えたいけれど
そこには誰もいなく
部屋の中には
少年のまま
老いた私 ....
 

一、
草は静かに闇の中、葉に露をまとい、一日の暑さを回想している。
ヘッドランプのあかりに照らされた、それぞれの葉のくつろぎが、私の心にも水気を与えてくれる。
闇は静かに呼吸していた。 ....
「あなたは神を信じますか」
ふいに声をかけられ、振り向くと、若い美しい女が立っていた。
 鈴木俊介は保険会社に勤務し、主に災害や火災に適応した商品を担当していた。昨今の地震や水害に対応するべく画期 ....
結露した鉄管を登ると
冷気の上がる自家発電の貯水層があり
ミンミンゼミは狂いながら鳴いていた
夏はけたたましく光りをふりそそぎ
僕たちはしばしの夏に溶けていた
洗濯石鹸のにおいの残るバスタオ ....
郊外の田は収穫のあと放置され、新しくイヌビエがすでに生い茂り、晩秋の季節特有の屈強なアメリカセンダングサが雨に打たれている。
ときおり雨足は強くなるが、大雨になることはなかった。
雨はすべての世界 ....
梅昆布茶さんの山人さんおすすめリスト(36)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
私は猟人だった- 山人散文(批評 ...5*22-1-6
初冬の朝- 山人散文(批評 ...4*21-11-21
山道- 山人自由詩11*21-10-18
雲海- 山人散文(批評 ...4*21-9-27
晩夏- 山人自由詩10*21-8-25
山の中の孤独- 山人散文(批評 ...5*21-8-17
休養- 山人散文(批評 ...5*21-8-1
きりとられた残像- 山人自由詩6*21-7-24
夏はもう秋- 山人散文(批評 ...6*21-7-20
七月の雨- 山人自由詩5*21-7-11
掃除- 山人散文(批評 ...5*21-7-8
緑は濃く- 山人散文(批評 ...5*21-6-20
藤の花- 山人自由詩17*21-5-22
早朝の散歩から- 山人散文(批評 ...3*21-5-18
伐採- 山人散文(批評 ...5*20-10-18
夜を抱きしめて- 山人自由詩7*20-9-12
地鳴き- 山人散文(批評 ...6*20-9-5
ブナ林にて- 山人自由詩16*20-7-24
これから- 山人自由詩17*20-7-2
厨房に立つ(改題しました)- 山人散文(批評 ...7*20-5-17
星狩り- 山人自由詩14+*19-12-8
野紺菊- 山人自由詩4*19-8-26
とある湿原にて- 山人自由詩13*17-10-8
峠の山道- 山人自由詩8*16-9-26
あな_二篇- 山人自由詩16*16-8-13
5/2- 山人自由詩12*16-5-2
夜の山道(二バージョン)- 山人自由詩4*15-8-7
- 山人散文(批評 ...7*14-9-9
夏休み- 山人自由詩8*14-7-12
帰化植物- 山人自由詩9*14-1-24

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