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果樹園の頭上を滑る鳶の影
廃材が積まれた惨めな河辺
男がトラックの荷台に腰掛け
たばこを吸いながら私のほうをみている
私の人生から消えていったあらゆる者たちが
....
{引用=−−フレデリック・ショパン「夜想曲第十番」に}
石膏の雨は
落ちてきて 割れた
さっき みじかい嵐は
苔いろの器を引っ掻いていた
渦のような部屋の 何 ....
{ルビ雷=いかずち}が 遠くの空に
かなしい光をふるわせた
あなたの膝に置かれていた
羊の彫刻は床に落ちた
眠りに似た川の聲は
月明かりとともに ....
うつくしさだけを愛するわけにいかず
わたしたちは雪をみている
さくらいろの子供たちがはしり、
ほほえみと陽の光がまじりあうのを
胸にふるえを覚えながら わたしたちは ....
明るい部屋に棲む薄暗い老女
出来損ないの散文に似た服をきて
皺のよったビニールじみた手には
何が為拾ったか判らぬ小石を力なく握る
愛してきた者たちの瞳にもう愛はなく ....
海がみえたあとは
歯のかけた歌だけきこえた
ぼくをわらっていたのだろう
あなたがここにいたなら
朝靄のなか、踊りながら
「もしも」や「けれども」を蹴ちらしなが ....
半刻ほど前から
組んでいた指をほどいて
あなたが落とす銀箔に似た笑み
ガソリンじみた水溜まりにひとつ、
爛れたショパンがしゅんと跳ねた
飛び降りてみるのもいいかもしれない
きみの昔話は、ちょうど開けた土地を過ぎ
ひどく思い切りのいい 崖に着いたところだった
足もとで禿鷹が喰っているのはなんの屍肉か
....
恰もみずからが
一つのテーゼであるかのような
岩の静けさ……けれども
誰にも触ることのできない
あおい歌が、あおい、うたが
きみのなかでふるえているのをしって ....
夜の芝生で
いるかは一度だけ跳ねた
手に拾えそうなほどの光が今日、
とおくの月やら星やら町やら、そんなものから
迷いこんできていたから、けれども
そのなかを泳 ....
土嚢でも背負っているのだろうか
きょうの町は、肩の辺りが硬く強張っている
木陰のところで音楽は重なりあって死んでいる
物欲しげな野犬は吸い殻に鼻を近づけやがて立ち去った
....
しろい頬をこちらにむけて
月が肩をふるわせている
窓の外から、じっと
石でできた町がぼくを見上げる
けれども雨がふっているのはまだ
きみの瞳のなかでだけ
....
入り口の方にあなたが立っていたが
出口の方にも同じようにあなたが立っていた
べつに邪魔をしているわけでなくただ立っているだけのこと
そういえばそのような薬物をわたしはどこ ....
一日中、
こわれた雨樋をみていた
網戸にささって死んだ虫をみていた
あなたがこのよにいきているなら
わたしがしぬことはぜったいにない
わたしたちのなかで 言葉 ....
夏影を
蛇の身がなぞる
あおじろくつめたく
すべての陽がきえていく
汗が鎖成す、おまえの鎖骨
宇宙船は庭にうかんでいた
宇宙船はトマトのように赤かった
宇宙船は言葉のようにつめたかった
どうでもいいが窓際でティッシュペーパーをしいて
二週ぶりに伸びた爪を切っ ....
犬の舌がながくのびている
それでも私の声が聞こえるなら
醤油差しをとってくれないか
陽の光があふれるところで
あなたのからだを抱いていた
影は こまかい枝のようになって
わたしたちに踏まれている
世界から背をむけてまで
夢見ることを手放してま ....
シャツの色をわすれた
自転車を仲よくならべた
川沿いの道にいつもあった
だれのものとも知れないさびしさ
三日月にすこし濡れた
きみの膝こぞうをそっ ....
硝子に映った一頭の駱駝は
あなたのまわりのどこにもいない
オアシスには細かい霧の粒が浮かび
かれの毛並みを気高く妖しくみせているが
大きな{ルビ二瘤=ふたこぶ}にか ....
窓に背をむけて
なにかを書きとめていた
あなたに小さく呼びかけた
微かな灯りのともる夏、
砂のまじったわたしの思いは
野良猫のとなりで寝ていた
わたしの心が
くらげのかたちになったら
会いにきてくれますか
手のひらに月をすくい
くちびるを歌でみたし
むかえにきてくれますか
わたしの心 ....
猿は黙って登ってくるのだ
かれらにしかみえないおまえの
躯に穿たれた釘を伝っておまえの頂まで
それでも数匹は諦めて引き返すし
また数匹は手を滑らせて落ちてしまうし
....
耳のなかから歯が{ルビ一片=ひとかけ}こぼれてきた
それを拾い洗面所に行き鏡で自分の口のなかを見ると
欠けている歯はひとつもなかった
歯は依然わたしの手のなかにあった
....
華やかな街が
あなたの眼のなかで壊れていく
そのなかでだけ それは 死なされていく
小さく硬いなにかが振り回されている
大きく脆いなにかが燃やされている
咲き ....
席はあったが
わたしは座らなかった
銀いろの月によく似た
さみしい言葉だけ胸の奥に置いて
けれども誰にむけたものかわからず
きまり悪い笑みをうかべて わたしは ....
あたたかいミルクを 絨毯にこぼしてしまった日
きみはゆっくりと愛していた
町を、陽の光を、そでの長い服を
きゅうくつなかなしみが胸を染める
言葉にできな ....
さっき、背の高い老人が窓の外を横切っていったのだが
まもなく 横断歩道のあたりで 見えなくなった
花粉の多い 春の 晴れた日
喫茶店には いやみな観葉植物が 所狭しと並べ ....
羊の影が
小径を歩いて行くのがみえた
人も居らず ごみばかり落ちている
その小径は雨の臭いに満ちていて
もう
まもなく、
日暮れが訪れる
マフラー ....
古い蝉が、この部屋の
窓に貼付いて乾いている
色々なものが置かれていたが
結局ひとつもとどまらなかった
きょうの月は、頼み方しだいでは
ベランダに ....
梅昆布茶さんの草野春心さんおすすめリスト
(139)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
廃材
-
草野春心
自由詩
8
15-4-17
石膏
-
草野春心
自由詩
4
15-4-8
雷
-
草野春心
自由詩
4
15-3-29
窓辺
-
草野春心
自由詩
5
15-1-18
老女の歌
-
草野春心
自由詩
7
15-1-9
エトランゼ
-
草野春心
自由詩
3
14-12-15
爛れたショパン
-
草野春心
自由詩
9
14-10-29
崖にて
-
草野春心
自由詩
3
14-9-14
あおい歌
-
草野春心
自由詩
3
14-9-14
夜の芝生
-
草野春心
自由詩
7
14-9-7
移住
-
草野春心
自由詩
8
14-8-24
砂の城
-
草野春心
自由詩
5
14-8-23
悪魔
-
草野春心
自由詩
7
14-8-20
雨樋
-
草野春心
自由詩
8
14-8-10
蛇と鎖骨
-
草野春心
自由詩
5
14-8-3
宇宙船
-
草野春心
自由詩
4
14-7-24
醤油差し
-
草野春心
自由詩
2
14-7-21
からだ
-
草野春心
自由詩
5
14-7-21
恋は三日月
-
草野春心
自由詩
8
14-7-20
硝子に映った駱駝
-
草野春心
自由詩
4
14-7-19
野良猫
-
草野春心
自由詩
4*
14-7-13
わたしはくらげ
-
草野春心
自由詩
8
14-7-12
登る
-
草野春心
自由詩
5
14-6-29
迷いこんだ歯
-
草野春心
自由詩
9
14-5-25
壊れる
-
草野春心
自由詩
3
14-5-25
席
-
草野春心
自由詩
10
14-5-21
ミルクときみの春
-
草野春心
自由詩
10
14-5-4
背の高い老人
-
草野春心
自由詩
3
14-4-26
羊の影
-
草野春心
自由詩
9
14-4-20
古い蝉
-
草野春心
自由詩
10
14-4-10
1
2
3
4
5
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