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フロイトもユングも読んだことないけど
長いあいだ自分自身と付き合ってきたので
ある程度なら自己分析ができる
どうやら
私の中には大まかに
三人の人格が存在するようだ
{引用=Aの人 ....
地下に埋設された暗渠の中には
一条の光も届かない
真っ暗闇の水路を
とうとうと水は流れていく
行くあても知らず
後ろから後ろから 押しだされて
暗渠の中を盲目的に進む水
ここから抜け ....
早朝に
冷たい北風が吹き荒れて
庭の山茶花が散っていた
そこらじゅうに
真っ赤な花びらがてんてんと
血のように落ちている
家の鬼門には赤い色
魔除けに植えられた山茶花だった
色彩の ....
不条理な夢で目覚めた朝
もの憂い倦怠感で
頭の芯がズキズキ痛む
夢とか希望とかそんな言葉で
ちっぽけな人生を飾ってみても
掴めるものといえば
ほんのひと握りの砂だけ
現実をみろ
....
「もう、この恋は終わらせてしまう方が良いかも知れない」
男との電話を切った後で、黎子はそう感じた。なんとなく空々しい会話が鼻についてきた。
しゃべっていて、話が長くなってきた時に、ふいに言葉を ....
午後から晴れるといっていた
天気予報があたらなくて
午後になっても
憂鬱な雨が降り続く
湿った食パンは味気なくて
作りかけのジグソーパズルに
八つ当たり
床中に散らばったピース ....
【 {ルビ凸凹=デコボコ} 】
ちょっとしたことで
ああ、自分はダメな人間だなぁー
と {ルビ凹=へこ}んでしまうことがある
次々によぎっていく
失敗 恥 屈辱の {ルビ凹=負}の記 ....
おいっ
おいらたちを拾うんじゃない
可愛いからって 持って帰るなっ
おいらたちは種なんだ
ちゃんと土の中に埋めてくれよ
いつかは立派な
どんぐりの木になるんだ
池に放りこむなっ
....
男が嘘をついた
嘘だと分かっていて
わたしは騙されたふりをする
嘘だと言ったら
瞬間に
嘘が本当の嘘になってしまうから
すべてを失いそうで
怖くて
わたしはそれを言えない
男 ....
小さな世界の中で
自己満足という
落とし穴に嵌り込んでいた
仄暗い穴の中では
自分の声しか聴こえてこないから
これが世界のすべてだと
信じてきっていた
たぶん
わたしは小さな蛙 ....
{ルビ宙=そら}に向かって 翳した{ルビ掌=て}
ちっちゃな指の隙間から
見える夜空
月と星 天上を照らす
蒼白く磨ぎ澄まされた星々は
夜の静間に息づいて
光年の{ルビ刻=とき}を数え ....
ああ、
貧乏に生まれて
貧乏のままで死んで逝く
ああ……
啄木さんや一葉さんの
気持ちがちょっと分かったけど……
才能は銀河の果てほど差がある!
ああ、もう
わたしなん ....
年が改まり 今日から新年なんだ
モソモソと布団から這いずり出して 袢纏を引っ掛け
いつものように 新聞をポストに取りに行ったら
電話帳みたいな ぶっとい紙が捻じ込まれていた
こんなもん、 ....
嗚呼
女よ嘆くなかれ
その身から赤い血を流すのは
女に生まれし証
我ら愛する人の種を残すために
月の女神の洗礼を受け
柔肌を赤く染めていく
されど男が創りし神は
女は不浄 ....
昨日は夫の誕生日だった
なのに彼は出掛けて行った
気持ちを挫かれて
私は不機嫌になった
今朝、夫がドライブに行こうと誘う
久しぶりにふたりで車に乗った
森林の中、滝のある所を散策
....
窓の外で雪が舞っている
窓ガラスについた雪の結晶は
やがて溶けて
雫となって流れ落ちる
涙のように
こんな雪の日だった
あなたとふたり雪の中を歩いたね
吐く息も白く
....
ひらひらと
群青の夜空に舞う
暗闇の蝶――蛾。
揺蕩うように 揺らめくように
滲んだ月に 白い影が踊る
「今宵の闇は深く
あなたの声も聴こえない」
女は
蒼い月影のランプで手 ....
この世の中には
不愉快な言葉で溢れかえっている
目を瞑っても
耳を塞いでも
棘のある言葉が
皮膚を突き破って
神経にグサグサ刺さってくる
ああ どうすればいい
目と耳が欝に ....
朝起きて お天気がいいと
布団を干そうと 張り切ってしまう
ワイドショーに 好きなタレントが出ていたら
めっちゃ嬉しくて 一日中ハイな気分
クッキーと紅茶で 午後のティータイム
仕事と ....
{画像=111007205854.jpg}
青
画用紙に青いインクを零したら
晴れやかな空になった
青いフェルトに涙を零したら
透明の染みになった
道端の石ころにも成れな ....
暖かい掌 冷たい掌 柔らかい掌 硬い掌
掌には いろんな感触がある
幼子のちっちゃな 紅葉の掌
老人の節くれた 皺だらけの掌
掌には いろんな人生がある
愛し合う恋人たちが 握り ....
春になるとお母さんは
いっぱいえんどう豆を買ってくる
それを いつもふたりで
キッチンのテーブルで殻をむいた
学校のは話をしながら
近所の噂話を聴きながら
零れ落ちた えんどう豆を拾っては ....
つながれっぱなしの犬がいる
中型雑種茶色の犬だ
散歩してるのを
一度も見たことがない
コンクリートの駐車場の中
小さな犬小屋で暮らしてる
動けるのは鎖の長さだけ
その空間の中で
お ....
降りつづく雨のせいで
部屋の空気が重く感じる
ポツリポツリと奏でる サティのピアノはけだるい
大きめのポットにダージリンティを入れて
ゆっくりと茶葉の広がる時を待つ
雨の匂いと紅茶の香り ....
沈みゆく夕陽の
叫びにも似た紅緋色
世界を燃やし尽くすように染めていく
心の渇望は際限なく
乾いた土が水を欲しがるように
あなたの言葉に耳を傾ける
わたしの葛藤は……
ざわめく言 ....
硝子窓の向こう側
暗闇の中で
蜉蝣の透明な翅が
月の雫のように光っている
―― ヤミガコワイ……
呟き声がした
わずかな物音まで
深い闇に吸い込まれていく
一枚の硝子に仕 ....
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