雨が降る日は星は
空の裏側にある
薄い膜をのぞくとちゃんと
いつもの場所にある
ヒトはみえないとき
うしなったと思い込んで
明日の自分さえ
もう届かないと暗くなる
大丈夫だよの ....
紺青にけぶる空を薙ぐようによぎる、小型の戦闘機は燈色に燃える閃光をつれて。ゆっくりと浮き上がりはじめた海面に、硝煙にむせた妊婦たちが次々に溺れていく。あなたはやわらかな耳朶をふるわせて魚道を探す。冷た ....
季節が後退して冬がくる
胸のなかに痩せたこどもをひとりかくして
ステンレスにはまる寒々しい白をみている
いろいろを重ね
温度を保ったとして
巻き戻る波をとめることはできない
....
先生、ハグしてもいいですか?
あたしは 部屋に入って
口を開くなり言った
E先生は 少しとまどいながらも
椅子から立ち上がり
あたしのハグに
やさしく腕をまわしてくれた
....
索引にない
言葉をさがしにいく
言葉では
伝えきれない
感情を
日々新しい言葉が
この国では
生まれているというのに
そういえば
略語で父と母を
呼ぶことは ....
降り積もる雪の重みに
夜が
耐えきれず落ちていく
そうして彼女らは埋もれていくのだ
ひるがえった真夏の
影を踏んだあなたと
鳴くこともなく
死んでいった虫たち
....
昼下がり 鴉の群れ 憂鬱な音楽
物云わぬ黒猫
「君はどこへ行くの?」
黄色い眼球 音もなく 瞬いて
消えてしまったんだ
踏切りの喚き声
煩い警告
”僕 ....
「木星のしま模様が今年は一本なくなりました」
ちのないガスかたまりみたいなうえ
たつこともできず
なにしてるのかとおもえば
くらいくらくら
くらがりになれたせいか耳でみることができるように ....
昨夜の雨の恵みと眩い太陽の恩恵を受けて、
大地の緑が鮮やかに輝く。
涼しすぎる風がカーテン越しにこの応接間を吹き抜ける。
ベートーベンのピアノソナタが庭の緑を一層濃くする。
時代と人間に翻 ....
リモコンがリモコンを喰う朝ぼらけ
アマゾンの箱をひらくと射る瞳
ピンどめの天使の影の浮く便所
ぐぬぬより二文字多いぐぬぬぬぬ
....
海岸沿いに見えた風景の中を
走り抜けて行く ネズミ色のトラックや
何も無い 瓦礫の街の壁を
背景に 街を彩ろうとする
青い海の観光地が 見えている
思い思いに 空の中へと どこま ....
壊れた時計をいくつか
この部屋に飼っているので
どうやら時空にちょっとした罅が入ってしまったらしい
ふいに宙の思いがけないところから
時ならぬクロッカスの花が咲いたり
誰のものとも知れぬ指た ....
静かな窓のまえに立って
汚いことばをいくつも吐く
うす甘い空に雲がたなびいて
鏡のようにつるつるの水の上を
あかるい色の羽を ....
深夜帰宅して
一人で遅い食事をしていると
ふと封が開けられないままの
なわとび縄を見つけた
息子がなわとびが苦手だから
ある休日
百円ショップで買ったものだった
次の ....
「あのね、
から物語は始まり、
彼女は電話をきったのです。
金木犀の香りの詰まった壜に、あなたの名前を書いてる、
「か・こ」
シャーレに
なつかしい-あなた
あたらしい-わた ....
天国にいってしまったら
天国から手紙は来ないから
せめてできることだけを
おぼえないとなあ
せいかつは強弱のヴォリュームでいきること
ときには手をぬく
つんのめるほど減り込まないよ ....
指輪をはめた手でゆっくりと書類を渡しました。
君は少し微笑んだような気がしました。
これからは毎日指輪をしていきます。
その哀しげな微笑みを見たいからです。
何も感じないのならそんな顔はしない ....
透ける唄をきくから目をとじて
車の流れる音も聞きながして
そらはやっと明けたのに夜は幕をさげてゆく
夏はもう通り過ぎたの
冬物を出しながら
これからのことを考えて
でもこれからのことな ....
扉などあってもなくてもよくて、
それはわたしの肺が
さくばん死んだ蛾の燐粉で
みたされるのとおなじこと。(こうこつ、
通り抜ける、みどりの、さけび
それは あした
砂丘につづく列車に
骨 ....
}羊水(春)
コイン・ロッカーのコインが着地する
その音を聞いて
呼気をつきはなす
わきまえてなまえを呼んでも
まだないのだから
うぶごえをあげる
こっちへ来なさい、
と あな ....
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