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わた飴を頬ばる
浴衣の肩越しで
はちみつ色に ほころぶ
花のゆくえを
やさしく見つめている
ラムネ壜の底で
眠っている夏を
起こさないように
そっと
指をつなぐ
きみの輪郭 ....
嘗て
王国があったとか
そんな話を
あなたの中耳に
棲みついている
遠浅の潮音が
夜毎
瞼の上の白い渚に
刻みつけようとするのだけれど
水分を含んで
重たくなった夏服を
わたし
....
蝉の話を
してあげよう
焦がされるまで
力のかぎり
蝉の話を
してあげよう
身体をふるわせ
夏を生きる
きみを
やさしく包みこむ
ていねいな
風通しのよい
午後の産着の ....
上塗りされた夏空の
組まれた手の
ゆびの
一本一本が
解かれてゆくように
光が
そこかしこに
ばらまかれ
熱を分けあう潮騒が
とおく
攪拌されてゆく
カンナの花が
....
*
潮の香が
心地よくいざなう午後は
大抵の白い壁に
透明のバス停が浮き上がっていて
そこには潮流の到着時刻が
【珊瑚時】
【シオマネキ分】
【ゾエア秒】
海洋性の点字で記さ ....
原田さんはクラスメートだ
原田さんは園芸部の副部長だ
原田さんが幽体離脱を繰り返すのは最近拾ったオッドアイの子猫のせいだと言う
原田さんはイレギュラーバウンドする
どこへ行ったのかわか ....
朝
けたたましい山羊の蹄が頭上を通過する
夕べの取引先からのメールが
全て獅子唐に変わっていた朝だ
二、三日前から不穏な空気が送電線を伝って来て
この朝の微睡みの中
それは形づいていったん ....
水の匂いのする
あなたの
指先の和音で
おどりだす
初夏の背表紙は
水溶性の文字たちの
ぽつぽつと吐き出す気泡で綴じられてゆく
垂直に
落ちてくる六月の
浸透してゆく
素直 ....
・
夏のはじまりの声に
奪われた鼓膜は
透明の
セロファンに覆われた
巻貝の中で浮遊する
・
白い花びらの波に
さらわれた遠い渚で
掠めとられたくるぶし は
薄暑の縁ど ....
黄昏た窓枠を眺めている
はちみつ色に細める
瞳の中には
きっと琥珀が ねむっている
*
机の上の
コンパスの針で刻まれた
しらない時代の落書きを
なぞる白い指はこびで
背 ....