すべてのおすすめ
新しく作られた神様を
ひび割れた背中にぶら下げて
くすんだ野道に そぞろの巡礼
通りすがりの南風から
千年前のにおいがする
中空いっぱいにひろげた彩度の
かけらだけでも ....
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの
鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営み ....
赤い感情と青い記憶とを
つむいで
むらさきを織る
夏の恋
ひざまでの深さのつもりで
いつのまにか飲みこまれている
息継ぎに顔をあげるたび
水面にゆれる ほほえみに似た光を
肺にかさ ....
恋慕の奔流に身をまかせるとき
にじみ出していく熱がある
言葉にできないものを
言葉にしなければならないとき
この唇が無力であるとき
胸腔におさまりきらず
とめどない疼き
....
それはいつもとおなじ散歩道
いつもとおなじ日曜日の
気だるい午後に
わたしは、
歩いているわたしの背中を
見つけてしまった
(あれはもうひとりのわたし?
それともいつもの白昼夢?
....
夜がうごいた
なまぬるく
あかい月のためらい
翅をひろげる雲たち
思い思いに
駐車場わきで
黒猫がスーパーの袋かじってる
貧相でうすよごれて
でもどこか清楚
みずみずしく香るけだ ....
夜中にひとり食パンをかじる
バターをつけないで
ジャムをつけないで
電気もつけない
冷蔵庫の前にしゃがんで
はみはみ
虫みたいに食べる
どこか外国から船に乗せられて
海をこ ....
あぜ道にはよもぎの群れ
なつかしい香りがきて
足をとめ
瑠璃色の頂をあおげば
中空にひびく
ひばりたちのクーラント
くり返されて
増幅されていく営み
遠ざかったもの
遠ざけ ....
女神さま、女神さま、
梅やら桜、れんぎょう、ゆきやなぎ
春のうちのまだ早いあたりと
もうそれほどは早くないあたりとの
まんなかあたり
咲き乱れるところの女神さま、女神さま、
ぼくは大きくな ....
ひえきった背骨から、ひとつひとつ
きわめてあいまいに
呼吸の輪郭をかたちづくっていく
雪が降るかもしれなかった
駅前広場で、
ぼくは行き先を忘れたふりをしていた
夕飯に何を食べようか決めて ....
空の頂に月のない夜
まなざしは
同じようにはやってこない
待ちぼうけの子どもたちが
眠ったふりをして
息をこらすように
取り巻いて包んで
進行する世界に
オクターブごとに反響する
数 ....
夜にさまようノマド
夢に似た旅路
くらやみの中へ
伸びていく根毛
黒髪の思い出は
満月の丸み
汲み上げられて
つきあげるよろこび
歌うことばすべてに
ひとしく炎、やどれ
こ ....
道端に 雪をかぶって
うち捨てられた人形は
さぞや寒かろ さみしかろ
あの日も
おなじくかがやいて
うなる風に 耳をすませたら
ぼくがぼくであるための
拍動の 確からしさが
....
いっぴきの蝉が
務めを終えたように
仰向けに落ちて
空をひっかいている
親しんだ木々の幹に
戻る力はもう無い
おまえの瞳が
磨きたての宝玉のように
くろぐろと光をたたえるのが
....
愛すには資格がいるって本当かな
教えてほしい 告白前に
ラブレター 書き上げたなら誤字脱字
偏差値上げて 出直してくる
目に届く 君のラブリー まぶしくて
やっぱりぼくは垣 ....
昨日をかばんに詰め終えた
坂道 秋の木立 四種類の蝉の歌
清掃工場の煙突と浄水場のタンク
ダンスを始めた稲穂たち
鎮守の丘と用水路
高速道路の高架橋
思い出の風景をぜんぶ閉じ込 ....
文脈を無視して進む身勝手な言葉をぜんぶ君にあげます
寂しいと脳が足りないふりをする
抱かれたいのは骨の奥まで
くもをたべる透明ないきものが
空に住んでいます
優しいナイフで切り開いて
あの日 歓声をあげて
逃げ水を追いかける
おさな子はぼくですね
ちっともつかまえられないのに
追 ....