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喋った記憶を遡ると
人の中で泳いでる
かたちはおそらく金魚で
よく冷たい水に潜る
ぷくぷくと泡が声に変わる
耳には届かない
書いて書いて書きなぐって
でも読めないので泳ぐ
紙は ....
烏
私がタンカーを見ているのだ 私の
目の前には 海原がそそり立ち
桜の 老木の 肌も露わ
ひび割れた匙で抉ると嗚咽が漏れだす
轟音はずっと工場から
朝と夕 右の煙突を光が射抜いたあた ....
私の大好きな古い窓に
あのカラスはキズをつけた
羽虫の薄さで
夕日を水のおはじきにして
木苺の赤い信号が
車を待っているあいだ
硬い色の空を背に
セスナ機ほどの小さな傷で
浮かん ....
ナイフと黒い皿
テーブルには
皺だらけ
砂時計と水と消しゴム
メモと灰皿
伝票とボールペン
ぽつぽつと
灰皿と車と赤い花
黒い空には灰の雲
さらさら
風と雨とまざり ....