すべてのおすすめ
　
　
夜、本から紙魚が出てきて
僕を食べる
文字じゃない、と言うけれど
紙魚はお構いなしに
僕の身体を食べる
だから負けずに
僕も紙魚を食べる
本当は枝豆の方が好きなのに
食べ続　.... 　
　
埋立地から旧市街地へと
続く大通りの歩道
差し込む光に
かつて名前はあった
気の弱い人たちが　
背中だけの会話　
背中だけの時間　
の中でうずくまり、
息継ぎし、
そし　.... 　
　
ひし形の歪んだ街に産まれて
時々、綿菓子の匂いを嗅いで育った

弱視だった母は
右手の生命線をなぞっている間に
左耳から発車する列車に
乗り遅れてしまった

毎日、どこかで　.... 　
　
豆腐のプラモデルを買った
部品が全部そろっているか確認した
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日空いた時間に少しずつ組みたてた
その間に何通かのダイレクトメールと
公共料金の　.... 　
　
深夜、きみが
コップを割ってしまった
きみの夢の中で

思い出の品だったのだろうか
きみは泣き出して
泣き止まなかった
ぼくはきみの夢の中で
ただおろおろするばかりだった
　.... 　
　　
道に紙が落ちていた
人の名前が書いてあった
知らない名前だった
畳んでポケットにしまった
家に帰って紙を広げた
十分経っても知らない名前だった
ひどく蒸して
退屈な夏だっ　.... 　
キリンの背中に乗っている間に
世界は終わった
大好きだった人たちも
名前すら知らない人たちも
見慣れた建物も、古代の遺跡も
季節の匂いも
すべて跡形も無く消えてしまった
出来るだけ　.... 　
　
植物群が眠っている
僕の知らない言葉の中で

息を吐き出すように
近所の商店街は
ゆっくりと潰れていった

帰りたい、と父が言う
他にどこに帰るの、と母が言う
帰りたい、　.... 　
　
夜、起きて台所に行く
冷蔵庫を開ける
豆腐が二丁入っている
皿に豆腐をのせる
豆腐を握りつぶす
二丁ともつぶす

皿も豆腐も白いのに
皿を握りつぶすことはない
世の中の仕　.... 　
　
ピキは犬ではないのかもしれない
犬だと思ってドッグフードまであげていたのに
買ってきた犬図鑑に載っているどの犬とも
その形状は一致しない
図鑑の犬はすべて四本足なのに
ピキは六本　.... 　
　
深夜、電話が鳴っている
誰もいない、何もない
とても遠いところで

そんな気がして目が覚める
電話はどこにも見つからない
安心して再び眠る

夢の中で電話が鳴る
受話器は　.... 　
　
少年が電話の凹凸に触れているころ
少女はまだポストの中で
封筒から漏れてくる潮騒を聞いていた

　　すべてが終わったら、
　　横断歩道をきれいに塗りなおそう。
　　町中いたると　....

はなもとあおさんのたもつさんおすすめリスト（12）
タイトル	投稿者	カテゴリ	Point	日付
紙魚	- たもつ	自由詩	10	13-5-16
いのち	- たもつ	自由詩	7	13-1-24
誕生日	- たもつ	自由詩	23	12-12-28
部品	- たもつ	自由詩	13	12-6-7
思い出	- たもつ	自由詩	11	12-5-7
紙の夏	- たもつ	自由詩	9	11-8-5
黙祷	- たもつ	自由詩	6	11-8-2
帰ろうか	- たもつ	自由詩	9	11-7-23
深夜豆腐	- たもつ	自由詩	8	11-5-2
愛犬ピキ	- たもつ	自由詩	8	11-3-8
目覚め	- たもつ	自由詩	5	11-3-5
深呼吸	- たもつ	自由詩	7	11-2-24

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