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指先は弾く、のではなく、なぞると気付いた時。
あらかたを空に投げてしまったあとで
積み残したことばかりだと気が付いた
目覚まし時計は止まらない
明日の朝には、起きなければならない
....
埃の舞い上がる歩調に
嗅覚は痛みを放出する。
ここに枯れた曜日を
交わして
私の呼吸はゆっくりと
化石する。
もう、映えないで
と弾けた西日に
夜のさりげない会釈を
歪ませて
朗ら ....
水は重く、水は重く
地に深く沈みこんでいる
岩陰に臍のように窪んだ一角
降り井戸の底の暗がりに残された一匹の
赤い鎧を着た魚
地の底よりふたたび湧き出してくるものを
みつめる黒 ....
町には、
都会の路傍の実を摘み
ジャムを作る女もいるのです。
黒く指をそめながら、
けして与えられるものでも
買うものでもなく
何かを知るために。
立ち枯れる花たちが、
夏色を ....
恋の終わりは
キリバナ
キリバナ
死んでいるのか
いないのか
ガラスコップの
一輪挿しが
あっけらかんと
咲くように
私は
あなたを失って
冷たい夏を咲いている
も ....
空色から生まれた風が、
少しの遠回りをして やってきて
季節の話をしてくれる
静寂に波打つ風紋の砂の褥
焼けた肌は、夏を貧欲にむさぼり
求めるそれを手にするまで けして 止めようとし ....
それは忽然と現れた。
スパニッシュブルーの空を突き刺してそびえ建つ、
研ぎ澄まされた円錐形のオブジェ。
傾斜角75度の強い意志が天を貫いている。
指し示す先はどこまでも高く
その先端から曖昧 ....
ふとしたはずみで鍵をかけてしまった
ぼんやりと手を見ても、何処にも鍵を持っていない
南風が緩やかに吹いた、首の傾き一つで忘れてしまいそうな
春先の、こと
日向に浮かぶ
そちらの、具合 ....
歩き方には拘らなかった
朝には優しさが満ちていた
音のならない靴をそろえて
こんなにも遠くへ来てしまった
人の道という、溜息の上澄みを掌でそっと掬うような、薄さ
踏みしめているようで ....
内地から釣りに来た太陽と恋人たちを
島尻の斎場御嶽にガイドする。
財布から百円玉を取り出し受付機でパンフレットを買うのを指笛に
午後の観光が踊る。
....
春は、未だ寒く。なりそこないの私たちは溶
けることも出来ずにいます。雨が降ればもう
少しですか。非常階段に押し込められた人た
ちが、境目を見失って何処にも行けずに。溶
け始めた掌を胸に当てて、 ....
しずかにやんだ川を
木につるしてから出かける
まだわからずに
陶器の横顔
すれちがう人を
飲み干した
だけの流れ
持てやしないまま
垂れおちるときの膨らみ
あらわれた褐色に
もう私 ....
その響きと
余韻しか知らない街で
親しく投げ交わされ
胸にぶつかっては
つぶれて香るトマト
ことこと煮詰めたソースは
ちょっとどころか
すごく甘くて
ふわふわした湯気のなかで
舌がト ....
人は、降っていきますが
この風はいつも背中にあった気がします
開いた傘だけで飛び出していくことは
難しいこと、と形作られて
それでも
降っていった人たちの行方まで
答えてはくれないのかもし ....
見失った起点をとりもどすための儀式。なぜそれが必要なのかはわからないけれど。ホームから(赤い)傘を放って、虹を呼ぶ。虹は来る。(生き物のように)。雨は去る。対になろうとする、ことば ....
僕らはどこでも眠れる
可能性の、結果として
拘りを隠しましょうか、誇りを仕舞いましょうか
まっすぐな道をまっすぐ歩くためだけの
呼吸、でしょうか
道は裏返りながら繰り返されて
それ ....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という
撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
....