兄さんが虹を見ている
祈るべき神を持たない僕らの祈りは
それでも決して無力ではないはずだ
兄さんの肩にオウムが止まる
救急車が静かに横切って行く
 
 
 
 
曖昧な朝の手元
行ったきり帰らない
水のブランコ
皮膚なの?ここは
過疎の村に、春
 
 
 
 
栞が見つからなかったので
小さな紙片を代わりに挟んだ
モノクロの海の挿絵がある頁だった
砂浜に栞が一枚うちあげられていた
巻末には幼い字で父の署名があった
 
 
 
 
草原に同じ大きさの椅子が並ぶ
たぶん同じ人が座るのだろう
換気扇を回す
他にも回さなければいけないものが
たくさんあるはずなのに
 
 
 
 
待合室を浮遊する粒子
そして、その沈殿
順番に名が呼ばれ、人は減っていく
女の子が母親と手遊びをしている
ひそひそと西日が射し込む 

 
 
 
タンスの引き出しを開ける
衣類を取り出す
中に入る
遠くのアフリカでキリンが鳴いてる
誰かが閉めてくれる、その日を思う
 
 
 
澄み渡った世界の気配がする
赤い朝顔を買ってきたはずなのに
青い花が咲いた月曜日
今日はたしか
君の誕生日だったと思う
 
 
 
 
郵便受けに海が入っていた
海配達の人が入れたのだ
いかだが浮いてる
昨日遭難したはずの僕が
新聞を持って手を振っている
 
 
 
 
人が眠っている
眠っている人を起こして
人はまた眠る
金物屋の主人が寝言を言う
釣り堀から帰ったばかりのように
 
 
 
 
こんにちは、白いパラソルです
松田聖子の歌です
人格はありませんが、こんにちは
それでは次の曲、聞いてください
白いパラソルです、何度もこんにちは
 
 
 
 
父が潜水艦を買ってきた
またこんな大きなもの買って
と母が愚痴をこぼす
兄は鴨居の下で自分の腕を触っている
犬は昨日、何も食べなかった
 
 
ゆっくりとした花の先端から 
二人で汽船に乗る 
生き物の物真似をして過ごす 
生きていて良かった、と時々思い 
絵葉書の側で時々笑う
 
 
 
 
家の前にバス停をつくった
路線バスが一台通過した
乗客はすべてペンギン、もしくは
ペンギンの姿形をした他の何かだった
虹の下をくぐって行った
 
 
 
 
同級生がまた一人、先に飛び込んだ
いろいろあったものね
今となっては想像でしかないけれど
今年で四十五歳
空っぽの四十五歳
 
 
夏にあいたひし形の穴から
海が溢れだす
きみは定規で水平線を引き直す
クジラが大きな口を開けて
ぼくの腹話術で、あー、と言う
 
 
観覧車に乗れなかった人が
昨日から列を作って
橋の向こうまで続いている
建物や坂などが冷たい朝
フルーツは爆発する
 
 
 
 
心臓の近くで
きみがぼくの口と
お話をしている
肝臓からは
少し遠い 
 
 
 
 
紙コップを満たす時間 
計算機を分解し続ける少年の側で 
親戚の人が斜めになってる
今日会いたい人の 
苗字が思いつかないのだ
 
 
               ――D.K.へ

訃報を受けた次の日、近場にある温泉宿へと自転車で行った帰り道、途中にある長い坂を登りながら、私に不意に訪れるものがあった。あなたの位牌の前で深々と頭 ....
春、一斉に花びらひらいて
みんな
死んだ冬のこと
忘れてた

あたしを殊更に
どうかさびしく
絶えずその
可愛いつむじの辺りを
くるくると廻っている
 ....
どうも、ツユサキです。これまで「ショートレビュー・サンデー」と銘打ちいくつ
かレビューを書いてきましたが、個人的な事情もありこの文章をもっていったん終
了します。今までどうもありがとうございました ....
 しかし、W.K.も四回目を迎えました。
 と、唐突に書き出しますか、という感じの四回目です。不評ですが、続けます。前回の「細々と」からさらに下方修正してみます。
 さて、今回は少し趣向を変えまし ....
 ということで、W.K.も回を重ねて三回目になります。前回、「好評につき」という枕詞をつけましたが、今回は「細々と続く」という枕詞に若干下方修正させていただきます。
 それでは細々と続くW.K.の三 ....
ソーダ水の温度に惑わされて
汗ばむ景色をよじのぼる

お元気ですか、夏

遠い背中に
あなたと名付けた
ひとのかたちを追って

「おはよう」を
言いそびれると
教科書の中で殺され ....
 さて、お待たせしました。好評につき、W.K.の二回目になります。お待たせ?好評?と疑問に思ったお茶の間のあなた、そう、あなたですYO。その疑問はあながち間違いではない、と何となく思います、立証できな .... ウォークマン、買いました。
という非常に唐突感の否めない書き出しで恐縮です。
何故買ったのか、ということにつきましての詳細は省略しますが、端的に言いますと、我が家のコンポはリビングに1台と娘の ....
 
 
夕暮れの公園で牛が一頭
シーソーに座っている
反対側にトンボがとまる
牛は少し腰を浮かせる
トンボは驚いて
飛び去って行った
しばらくして
男の人がやってくる
牛は腰を浮か ....
月が美しい時、その下で、犬や豚や、
うさぎやらくだや、馬や鳥が、痴れたり、
うずいたり、つかえたり、
引きつったり、しゃくにさわったりしながら、
季節売りが立ち止まって、
次の芝居を始めるま ....
 
窓辺の席で
遺書を書いていると
一匹の蝶が
入ってきました

蝶はしばらく
便箋の上を飛び
再び出て行きました

わたしはふと
誤字に気づき
その頁を破りました
少し音が ....
背中の波が剥がれて泣いて
海が誰かを呼んでいる
あなたのことを考えてみる

体を循環する器官のひとつひとつを
ていねいに洗う
みずの流れに臆病になると
腰にひびが入るんです

ゆるや ....
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