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雨の降る仕事帰りの夜道
傘を差して歩く僕は
年の瀬に冷たい廊下でうつ伏せたまま
亡くなっていたお{ルビ爺=じい}さんの家の前を通り過ぎる

玄関に残る
表札に刻まれたお爺さんの名前  ....
鎌倉駅の通路の壁に
寺へと続く石段の写真が展示されていた

門の向こう側の境内には
不思議な光が満ちあふれ
そっと上げた足先を写真に入れると
体ごと吸い込まれた僕は
気が付くと
石段の ....
二月の冷たい雨が降る午後
近所の喫茶店でお茶を飲みに
愛読書を鞄に入れ ビニール傘を差し
家の門を出て川沿いの道を歩いた 

川の流れる{ルビ辺=ほとり}の土に
一羽の{ルビ白鷺=しらさぎ ....
時速80kmの車窓
次から次へと景色は流れる

ホームの階段をひたむきに駆け上がる
パリッ!とスーツの新人サラリーマン
けっつまずき 宙に浮く {ルビ縮=ちぢ}んだ4本の手足
車窓から消え ....
僕が以前働いていた特養で十三年生活していた
身寄りのない K {ルビ婆=ばあ}ちゃんの告別式が老人ホームで行われた日の夜
他施設との懇親会が行われ、
僕は「はじめまして」とテーブルについて
「 ....
つまずいてばかりの日々にうつむいて
ちぢんだ心を{ルビ潤=うるお}す
水の湧き出る場所を探し歩いた

立ち止まり シャベルで穴を掘り続け
気がつくと
静まり返った暗い穴底にひとり

小 ....
北鎌倉・東慶寺の敷地内の喫茶店
外には店を囲む竹垣が見えるガラスの壁
に寄りかかりコーヒーをすすっていた
顔を上げると
店内を仕切るガラスの壁の向こうに透けて
カウンターの中に一人の妖精が{ ....
親父は定年退職し
母ちゃん専業主婦となり
息子のぼくは半人前

母ちゃん家計簿とにらめっこ
ばあちゃんが払う食費も1万ふえて
なんとかやりくりの日々であります

雨もりがあふれる床
 ....
人と争うように働いて
話す気にもなれず
押し黙ったまま一日を終える

仕事帰りの公園のベンチ
あたたかいゆげで慰めてくれる
たこ焼を食べていると
目の前の通りを
なかなか客に呼び止めら ....
高く澄んだ青空の下
広い芝生の上
この細腕には少し重いベンチを
歯を食いしばり運んでいた

色とりどりの枯葉が無数に敷かれた
穏かな秋の陽射しに影を伸ばす
あの{ルビ木陰=こかげ}まで
 ....
やがてテントを夢色に染める
オルゴールの{ルビ音=ね}は消えゆき
客席に響く拍手の{ルビ渦=うず}におじぎするピエロ
幕が下りるとくるりと背を向け
舞台袖を降りて入った
楽屋の鏡の前に座り
 ....
誰かさんに怒られると
すぐに浮かぶのは言い訳ばかり

のどの奥に ぐっ と飲み込む

( 夏の窓辺には蝉のぬけがらが置かれていた )

ぼくの{ルビ至=いた}らなさで
誰かさんの表情を ....
三階のレストランの窓から見下ろした
木造の橋の向こうへ伸びる石畳の道をゆく
白い服を着た君の背中はだんだんと小さくなり
緑の木々の下に消えた

立ち尽くす僕は
次いつ会えるかもわからない
 ....
仕事帰りの自転車に乗り
ふらふらと重いペダルをこぐ私を
野球帽をかぶった男の子が追い抜いてゆく
あまりにもまっすぐ走る恐れを知らない背中
暗がりを照らす街灯の立つ角を曲がって消えた

早朝 ....
ある日、仕事を終えて
更衣室のロッカーを開くと
取り付けの小さい鏡の下に
お守りのようにぶらさげていた
5センチのくまのプーさんが姿を消していた

プーさんは
うまくいった日も
へまを ....
ふらふらと酔っ払いの千鳥足
さみしがり屋のピエロは口笛吹いて
今宵も月夜の道を歩いています

膝を落とし 手を差しのべ 愛を乞う
寒がりな裸の心を胸に{ルビ潜=ひそ}めて

夜空 ....
{ルビ痩=や}せっぽちな
私の体の奥のほうで
一匹の虎が
牙を光らせ吠えている

今にもこの胸から溢れ出しそうな怒りの炎が
魂の{ルビ器=うつわ}を青い光で染め上げている

 ....
さびしさに
ひざをかかえて
タオルケットははいだまま
「る」の字でねむる

あの{ルビ娘=こ}は今頃
遠い空の下
今夜も誰かに抱かれて
求めあう「る」と「る」を
くみあわせてる

 ....
一番支えてほしい人が
勇気づけてほしい人が
悪気もなく「空気でできたとんがり石」を
僕の胸に投げつけた

「グサッ!」と刺さる鈍い音で
傷ついたのに君を妙に気遣って
ひきつった 笑顔の ....
PULL.さんの服部 剛さんおすすめリスト(19)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
光の滲む雨の夜道を- 服部 剛自由詩18*06-2-24
ある日の夢_〜鎌倉の寺へ〜- 服部 剛自由詩10*06-2-2
雨に濡れた白鷺- 服部 剛自由詩10*06-2-1
小春日和に- 服部 剛自由詩10*05-12-12
白い花に囲まれた寝顔_〜_K_婆ちゃんに捧ぐ_〜- 服部 剛自由詩11+*05-11-17
「井戸の底」- 服部 剛自由詩13+*05-11-17
「ガラスの壁の向こう側」- 服部 剛自由詩6*05-11-8
さといも家族- 服部 剛自由詩22*05-11-5
白いゆげ- 服部 剛自由詩23*05-11-1
秋の呼び声- 服部 剛自由詩8*05-10-4
月夜のピエロ- 服部 剛自由詩10*05-9-10
ぼくのぬけがら- 服部 剛自由詩6*05-8-26
「夢のひととき」- 服部 剛自由詩905-8-23
空の涙- 服部 剛自由詩8*05-8-11
プー子さんの退職- 服部 剛自由詩17*05-8-1
月夜の散歩- 服部 剛自由詩16*05-7-21
月へ昇る虎- 服部 剛自由詩8*05-7-21
「る」- 服部 剛未詩・独白31*04-7-9
とんがり石とクッション- 服部 剛自由詩5*03-11-9

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