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記憶の足音がしたから
きみを差し出して
代わりにぼくを貰った
あいつは
自分のことを神様と呼んだけれど
どうだってよかった



毎日が消費されていく
時計の針 ....
難しいことを
ムズカシイことのまま、放って

そらを仰いだ



{引用= 窓から細く伸びたひかりの帯に

 ひるがえる

 わたしの頭から、逃げ出していったもの ....
{引用= 目が覚めるほど愉快だった国で

 いつか帰る予定の町へ向かう、片道切符を捨てたあの日

 ぼくは

 お母さんを、お袋と呼ぶようになって

 いつか恋する ....
あの子は大人になってしまった


彼女は虹のたもとで
まだ
じょうろを握り締めている



***



鈍色のカーテンを引いて
人々は眠りについた ....
まるで、舌なめずりのように生きた彼女は
東京の隅の方に好んで住んだ

茶色くて背の高いルームランプと
うぐいす色のカーテンの側で
彼女の歌に返るものは
目の前の壁が、低く唸る声 ....
指の腹で押し潰す頬の、
薄皮一枚先を流れ去る
君はすっかり青ざめてしまって
嘘のような住宅街に漂う金木犀の香りと
ぶら下がる総菜屋のコロッケは
いつだって口論を止めずにいるか ....
正直な話
黄緑のスーツは無いな、と
パンツ一枚で団扇を泳がせる


三日間カフェインを絶って
頭痛やだるさが私を捉えたら
カフェイン中毒のサインらしい
でも
コー ....
{引用=


  ゆるせないものたちの
  正しい呼び方を
  毛布に{ルビ包=くる}んで
  抱いて眠る

  おやすみ、
  
  受話器の向こうの
  どこか分かりえない場 ....
必要性に応じて生きている

大人たちの叫ぶ声で
雲の影は去った

君が泣かないために
氷砂糖と毛布を買って
家に帰るけれど
本当は、君の好きなものを知らないし
そもそ ....
{引用=すきなものがたくさんあった
ある、女性歌手はそのふうけいのさきに
ひとりきりのみらいをみた}


 *


すきな人がたくさんいても
私のことをよくしる人はひとり ....
毎日は平和です幸せですとりたててやるべきことも無く平凡です
起床時に布団を畳むことが面倒なので、昨日からベッドの購入を検討しています

重くのしかかる頭で考えることといえば
 ....
似たり寄ったりな景色が並ぶ町で
わたしは、言葉を持たない


認識のそれぞれが
役目として語られるには
少し
役目を過ぎている、という気配


適当なリズムで鳴るヒールに
 ....
女は立っているだけ
明けてしまった

そして、待っていただけ
雲は切れて流れる


{引用=言葉に疲れた頃
ようやく、ひとは
「簡単」に気付くのだそうだ}


悩みを使 ....
寂びれたジャングルジムの
緩やかな回転

両手から垂れる、紙袋の重に
あれこれと理由をつけて
過ぎるのは、老舗の薬屋前


橙とオレンジの区別で
夕闇を匂わせられる今でも
 ....
お前が私の頭に触れることは
玄関で靴下まで脱ぎ、放ったあとの
一つの儀式だった

おい、納豆の匂いがするぞ
八歳の妹は部屋から顔を覗かせる
お前はその頭も追うのだけれど
 ....
(錯乱した雨模様に捧ぐ)






街が忙しい
夜が忙しい
昼も当然に忙しく
つまり、私は忙しい



肩と肩がぶつかる
前に、傘とカッパの擦れる音がする
 ....
ひとは
寂しいふりと、狂ったふりが上手です
全員ではないけれど
大半は、そんな気がします


彼女は論文を書きます
自分が、自分に出した課題で
原稿用紙を何枚も埋めるこ ....
今朝、ベランダの鉢植えから
見たこともない形をした花が
頭を覗かせていて

わたしは
この町に越してから
数ヶ月ぶり、に
カーテンを開いた




カラーボックスの大半 ....
鉛の先が、机をすべる音
紙が擦り合わさったあとの
一瞬の沈黙

傾けた椅子の角度に
ほんの少し
斜めを気取った世界

眼鏡を掛け直す


誰かの、寝息


 ....
古い学童保育の前で
私が気付いた影は
小さな二つだった

ちょっと気の強そうな背の高い子と
その影を踏んで歩く、少し小さめの子
見覚えのある景色に微笑みながら
私は、 ....
彼女はブランコがお好き

路地裏に佇む溜まり風や
お向かいさんの飼い猫に
思いを馳せている、毎日



思いついた恥ずかしい台詞を
口癖のように好き勝手呟いて

 ....
この際ニートになるのもいいね

日差しも風も
私を置いてけぼりにしたまま
すっかり秋めいてしまったから
もう
何にもやる気が出ないんだ

この呟きだって
惰性のよ ....
忘れた景色のことは
もう、分からないから
私を追うのなら
出発は
最終列車がいい

戻るつもりのない時間帯に
その街を出てきたことだけは
今もまだ
覚えているから
どう ....
自転車を転がして
きみの帰る坂道を
すれ違っていく

街灯の影が頬を寄せて
わたしの帰路を
こっそりと示したけれど

すぐには帰る気になれずに
坂道の終わりで立ち止ま ....
首より上を
他人のそれと
挿げ替えたまま

歩いていく
そんな人々を
横目で追いながら
私は
ただ、その姿を
見送っている





少女Aは
単色の ....
隣の部屋の老婆が
拾ってきたのであろう西瓜を
妹は器用に食べ進め
その残骸を
彼女は私の枕元に置き去り
遂には
そこから芽が生えてきて
いつしか
私の寝床たる場所は ....
*ごうんごうん

彼は
何も口にすることはないままに
色々を咀嚼して
そのほとんどを
無かったことにしてしまう

勿論、その中には
わたしの使用済みだとか
出し忘れたテ ....
わたしがたたずむゆりかごは
なにものよりもあたたかく
やわらかいものですから
たとえば
すずめのあしおとが
みみもとでなったとしても
わたしはきづかないことでしょう
あさ ....
*もぎとる

少女の頬は、
うつむく程に
色味を増す/と、同時に
大人であることの意味を添え
甘く
そこに増して、赤く
刻々と刻むように
ただ、坦々と
熟れていく
 ....
勝手に逃げたひとのせいで
今日も電車は来ない

向こう側のホームから
数日前に死んだであろう
女の嬌声が響く

もうすぐここも
ひとで溢れ返りそうだ

後ろのベンチからは
少女の ....
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