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――静かな風が吹き始めます。
感情は涙のように滴り、
バラの花びらが、
ぼくらをどこか知らない遠くへと招く。
ようやくちいさな春がやってきた。
ようやくちいさな春はやってきて ....
まぶたをとじると
見えるまど
ぽかりとうかんだ
はんみのつきの
かなしいつきの
ひかり
廃校の机のうえ
はねるつややかな表音文字
琥珀色をした聴こえぬ
音のしずく
まるまるせな ....
家に 帰ろうとしてるのに
じてんしゃ こいで 浮遊する
わたし 街灯がともり 青白く
青白い わたしの骨は
木枯らしに 透け
境界線を 浮遊する
わたしのにおいは 地面のにおい
湿っ ....
羊歯が葉を裏返し
白い歯を見せて笑う
日陰の庭で
ちいさな神様が
泣いている
山じゅうの
虹を融かしこみ
熱い涙をながし
泣いている
(ちいさな神様の
まっかな
まっ ....
心から上空にひざまづき
僕は僕の意味にねじれて
弦のようにのびた僕の影は
ひょろひょろと地表を這い
さびれたビルのなかを
真っ黒な煙突の中を
のぼってゆく
....
はるか
遠くから落ちてくる
手袋の記憶を
あなたが
持っていたとしても
それは
あなたの
責任では
ありません
あなたが
ベルギー産の
山羊の肉をとてもとても
好きだっ ....
ぎゅっと握りしめた
こぶしの隙間から零れ
夜の奥底に染みてゆくもの
去り行く後姿に
聴こえぬ声で
いつまでも叫び続けるもの
(時間の純粋結晶が
悲しみなのだということ)
....
なぜなら一遍の詩は
水蒸気で組成されているからです
ある一個人の無意識から生じた詩は
一瞬だけ完全な美の結晶となりますが
すぐさま跡形もなく消滅してしまいます
詩は遍在しているのです
詩は ....
正方形を書くと
その中に全て収まってしまう
俺の生活とはいったい何であるか
いつかどこかが
縦笛の接点の傾きにおいて
赤く染まる空の角度よ
今日もワイシャツを
裏返し蒸し返す
....
わたしは
週末
輪郭の曖昧な
影の朽ちた
家で眠る
かすれた赤子のほほの
やわらかさで
凛として
燃える
絨毯のしみに
彷徨い
迷い
見知らぬ隣町の
児童公園の
細 ....
妻よ
おまえが夜眠っているとき
味噌汁は走り出すのだ
家人が寝静まると
味噌汁はお椀にはいり
玄関からそっと抜け出し
町内を走り出す
味噌汁は走る
(けして薬罐が空を飛ぶのではなく ....
横丁の角を
曲がると
公営住宅の
アンテナの遥か上
ライオンの
かたちした雲が
広いサバンナを
駆け抜けていた
ぺるせうすざの
はしっこで
にじをみていた
あおくひかる
ほむらのようにゆらぐにじ
ときおり
ちいさなほがはぜ
あたりがすこしだけ
あかるくなる
はくいきはかなしく
....
http://po-m.com/forum/upfile/418/070107232821.jpg
今日も桃色のぱんつをはいて
元気にでかけてく娘よ(*1)
雨降りだからといって
勢いよくカサを
くるくる回したりしないように
おまえは
いつもまっすぐ前しか
見ないものだから
かけ ....
朝 目を覚ましますと
世界はとても青く輝いておりました
本当にどうしようもないくらいに
青うございました
わたしのすぐ隣から
「おはよう」と声をかけてくださる
あなたのやさしいお顔も
....
開け放たれた窓
とその影
風に揺れる
白いカーディガン
とその影
鏡に映る
誰もいない部屋
とその影
わたしの耳に住む
花火師がひとり
ときおり
小さな貝殻の ....
*
少女からはみでている
魂のゆらぎは
舗道のプラタナスの
青い影の上を
過ぎる一匹の黒猫
そのしなやかな足音は
遠く離れた街の路地で
こだまする
*
透明な空 ....