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うつむきながら
老婆があゆむ
右の手にしたほそい杖
すりきれたコートにつつまれて
冬の濡れた芝の上を
さまようように
あきらめたように
差し出す雑誌に
日本のことがかいてあるの ....
鳥の飛ぶ
銀のピアスをもらったよ
こいつったら ときどき
姿をかえるから
翼を広げてとびまわる
だから、耳をひっぱったりして、
やんちゃな赤ちゃんみたい
でも、ありがと ....
{ルビ=
突然のお手紙失礼致します。
何をと思われず、どうか先をお読みください。
この手紙は、招待状でございます。
私どもの国にいらっしゃいませんか?
急なご連絡でまことに恐縮ですが、
私 ....
テーブルの上には、
分からないことばかり
整然すぎるほど あふれ
どれが なになのかを
さがして、時間を費やすけれども
けしてそれは、愚かなことなどでは
ないのです。
....
{引用=
今日 {ルビ午后=ごご}の空は、
秋をきびしく拒絶していました。
その審判は、言葉や法則でなく、
まして、表象された風景などでも
なかった。
許しはしないと、
風や雲の ....
もっと話を聞かせてくれませんか
そうしたら、
あたしは、言葉のあいまに置かれた
なだらかな読点【、】に背をもたせ、
気まぐれに口をつぐむあなたの 数知れぬ句点【。】の
小さなその ....
夏のそらばかりが 身をせめる
南風の吠ゆる 島の岬に
母のかたみの 赤い櫛で
髪を梳く
罪を乞うでなく
罰をあがなう 身にもあらず
まばゆく うれしそうに
紺碧色に待つ 海 ....
{引用=
光のあふれる
みなもは、しじまの
はぐれた啄木鳥の子どもが、背を黒くし ―●―
オークの幹をつついています
水音にささやかれる樹の間は、
あたたかな池畔のひろがり
....
{引用=
風に想う
均等な枝は垂直に ―▲
はてなく
天蓋にむけられ
無数の曲直はいまだに葉をもつ さかさまに立つロンバーディア
やせた巨人がゆれ、かしぎ 街のどの家よりも高い身 ....
{引用=
黙ったまま
静かにしていなさい
それが、生きのびる{ルビこつ=骨}なら
誰もがそうしているのだと 信じてた
どこも見ようとせず
何も言わずにいたから、
....
{引用=
秋、なのですね
久しぶりにみる陽の
海峡の水の色は、
遊び心を誘った紺碧から
秘密をとりもどし/もどらされた ―◆■□
群青色ににぶく一変していました。
夏を泳いだ ....
{引用=
こまかく
こなごなに
くずされるのです
支払わなければならない 代償に
大きく それをさしだせば、
残ってやってくる 手にするコインの
ざらつく 他 ....
{引用=
やっぱり、いくことにした
どうするか わからないけど
心配しないでください、
でも、これって
さよならじゃないから。
学校は ひどく味気なくて
教室の窓は鳥かごのよ ....
瞳をひからせるものの
やってきた さそい
ちいさくて人肌ほどに、
もたらされる快適な乗り心地は 羽もうのよう
やさしくて
☆
厚誼にかしぐ 昔ながらの従順さがあ ....
ここにいれば安全なのです
ここを出なくても 生きていける
そう、それならば…
違うのです
知っているのですから、外界の情報は、
過多になりすぎるほどに 手に余るほどに
だったら ....
おまえは信じないのかい?
見上げれば、オウクがたずねていた
答えかえせずに、空から煉瓦の雨がふってきそうで
恐ろしく、そいつの堅固そうな樹の下に入ったままだった
ひとりと一本の目の前を ....
与えられていようと
それを簡単に忘れているのです
失うのがこわいのではなくて、
くりかえされる 朝陽のやってくる、
子犬がボールを追いかけるように
そうであり、そうすること
知らずに慣れて ....
どれだけ
つまらぬ嘘を聞いたら
あなたを嫌いになれますか
さびしがり屋の
つよがりをみせに やってくる
そんなあなたを
待ちくたびれ
生きていれば
いいこともあるさって
一緒 ....