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マッチ売りの少女にでもなった気分で
その鍵穴を覗くのがわたしの日課となってしまった
この街へ引っ越してきた当時はタバコ屋さんだったトタン屋根の並び
ちょっとしたお屋敷風の黒塀に
その鍵穴は ....
気付かない振りしてるだけで
わたし、とっくに気付いているんだ
夕食後の洗い物とかしている最中
わたしのバッグのなかを探っているのを
縁起良いからと買い求めたガマグチから小銭抜いたでしょ ....
冬の夜空ったら輝く星ひたすらまぶしくて
手編みのマフラーとか恥ずかしい思い出の数々
泣きながら破り捨てた一枚の写真
私の肩を抱いていた男の顔
なんて
忘れたような
未だ忘れられない ....
ジュリアーノ・ジェンマって俳優が好きだった
目深にカウボーイハット被り腰のコルトに手をやる刹那
呼ばれてもないくせしてサボテンの根元に転がる根無し蓬がわたしだった
ベッドのなかでもブーツ脱が ....
「秋の夜は果てしなく長いのだから」と
あなたは言って
舳先の行く手を確かめながらゆっくりと櫂をこぐ
おとこのひとに体を許す
例え今夜がはじめてではないにしても
月明かりは艶かしく ....
あなたによく似たひとだった
人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた
これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した
その ....