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僕の銀色の船は、雨の海を北上し、
目的地の虹の入り江にたどり着いたところだ
虹の入り江は、とても綺麗に湾曲している入り江だ。
ここは本当に美しい月の名所で
地球にいた頃から ....
あなたの頭蓋骨を、かき抱く
この胸に熱く
柔らかな髪に包まれた後頭骨に
私の上腕骨を回して
冷たい額の向こうの前頭骨に、頬骨を寄せる
あなたが考えていることが、私の心に伝わってくる
....
週末、定期的に届く招待状はまるで
光年先の異星からやって来る奇妙な使者のよう
青い光
目視を拒まれた、
太陽と月の錬金術
十六夜の月を鏡に、
くちびるには薄い紅 ....
天空の青はただ、孤独のいろ
神秘の源泉より切り出された青い石は
月の砂漠を揺られ、世界を支える山脈に沈む夕陽を眺め、
地中海を越え、さらに遠い国々に運ばれるためにある
....
白く獰猛な太陽は
月面の果てしない砂(レゴリス)に生命を吸いとられるように沈み
僕の銀色の船は水のない海(マーレ)を
宇宙の闇夜に揺られながらゆっくりと航行する。
僕は今、雨の ....
(貴女は、だんだん、眠くなる。)
欲望はいつも、最後に瞳孔をひらかせる。
深く閉ざされた眼をもつ者の数だけ、暗い夜の、虹をみる。
荒野を疾走する犬の群れ。
....
冬の終わり、夕暮れの川原に
少しさびしそうな背中をした旅人がひとり
その背中を今日も
夕陽がじんわり染めています
雨の日も雪の日も
夕陽はいつも
旅人の ....
てのひらに乗るくらい
小さな桃色の巻貝だけ
あなたに送ったのは
あなたがくれたお手紙が
あまりに優しすぎて
どうご返事してよいのか、思いつかなかったから
その貝は、私が小学生の ....
明け方に、右の乳房に奥深く
喰いこみし百獣らのざわめき、
さわさわと
君が心、ここにあらず。
おごれる春はさみしく単騎、千里を走り
凍れる冬の黄河もろとも 旗ともに渡 ....
「大事なのは、ギアがガチッ!と切り替わる、あの瞬間」
暗い真夜中の道路、車を走らせていく、
今夜は寝ないかもしれない
光る猫の目のように黄色いヘッドライト、
センターライン追いかけ ....
追われるものを追うものの
山彦越える、相聞歌。
闇にまぎれ
主は言問う、
「戸は開けぬ、知らぬ、存ぜぬ」
読み人知らず。
送り火迎えて遥か
節句の里。
柴刈り、道拓けて
今か ....
シスター、魔女たち
「黒い森を、見知らぬ男と女が逃げています。あれたちは、城下の者ではありません」
月光の影(シルエットだけ)
呪われし王の姿、針の雨嵐吹き荒れる棘丘に現す
....
散るために咲く花の 年々
洞庭湖の晩 暗く 俯き
薄氷の光を踏む
木立の沈黙 彩か鳥の姿まだ帰らず
君の歌声 一遇 銅琴の音 華やかなりし頃
遠く
宮廷楽人 詩酒の会
....
ギッタンバッタン
ギッタンバッタン
揺れる織機に糸は止め処なく流れる
機織りする貴女の家を訪ねた
白髪交じりの老眼鏡に覗くまなざしは
古代の機織の乙女と変わらぬ清楚さで
遥か遠く
白 ....
暗黒の空の下には灰白色の砂が硬く積もっていた
海底は果てしなく広がっている
僕の銀色の船は今、嵐の大洋に来ている
大小のクレーターは蟹の足跡やヤドカリの巣穴のようだ
この嵐の大洋は ....
静かの海に来る前に、晴れの海に寄ったんだ
月の海、そうこの大きな穴ぼこ、クレーターは月の内部から湧き出してきた溶岩で覆われている
僕の銀色の船についている小さな窓からのぞいていると
ちょうど灰色 ....
オリエンタレ・ベイスンから
いくつかの高地(テラ)と海(マーレ)を越え
ようやくこの海にたどり着く
小さな銀色の船を岸に寄せるけど
この岩だらけの灰色の海には水が一滴もない
すぐそばにアルタ ....
冬のあたたかな陽射しに気づいて
ふと顔をあげたとき
たまたま貴方と眼が合った
その時、貴方は何も言わなかったけれど
私にはすぐ貴方が言いたいことが分かった
私たちはひと言も言葉を ....
まるで何事もなかったように
日常の分だけとおり過ぎていく
愛情は誰も手にすることができない
静かな凪の海
私をおきざりにしたまま
潮も今は遠く引いている
深海の青のような音楽
三日月が ....
13歳の彼女は頬杖をついてぼんやりと窓の外を見ている。
空を見ているようにみえて、彼女は空を見ていない。瞳に空が映っているだけ。
彼女は世界一の夢想家である。
彼女は彼女であると同時に、赤毛のア ....
音もなくカルナヴァルはやって来た
花吹雪の中をカルナヴァルはやって来た
爪先立ちで熱狂する
サンバ
魂を奮い立たせる
アンゴラのリズム
髪にまぶたに乳房に腰に
音も楽器もなく花は降りそそ ....
他人に銃口を向けられることと
自分で自分に銃口を向けること
どちらの方が気が楽なのか
私にはまだ分からない
今分かるのはどちらにせよ
あの鳥をこの銃で撃ち落さなくてはいけない ....
彼とは佐賀の九州陶磁文化館の研究会で初めて会った
私が書いた明末清初の華南三彩陶磁の論文を読んだと彼は言った
高名な李朝白磁研究の専門家に自分の論文が読まれたと知って私は高揚した
その頃私は中国 ....
暹羅(シャム)猫を飼うのは難しいから止めたほうがいいと友人は言っていた
でもお前を飼って正解だったと今は思う
私はこの2年仕事を終えると一目散にお前のもとに帰ってくる
ソファに寝そべって愛しい茶 ....
お前と一緒に暮らしていて
いつも思い知らされるのが
与えた分だけ与えられるとは限らないのが愛だということ
誰よりお前を愛している
手入れされた上質の柔らかな毛皮
しなやかな体つきや
綺麗な ....
青空模様のタイルに覆われたような
ガラス天蓋のあるコンコースを歩く
ひとけのすくない午後の駅には
のどかな旅愁が満ちている
上空は強い風が吹いているのだろう
立ち止まった路のうえを
雲が落 ....
切り倒したばかりの白木 刳り貫いて
船をつくろう 船をつくろう
亡くなった人の骸を入れるため
船の棺に入れて 愛しい亡骸を入れて
白浜へ挽いていこう 海まで挽いていこう ....
新しいドアの前に辿り着いて
ノブを回してドアを開ける
中に入ってからばたりとドアを閉める
今入ってきた場所と薄いドアの一枚で遠く隔てられた世界
ドアのこちら側でしばらく立ち止ま ....
映画館の観客席で
私はサイレント映画の最終上映を観ている
スクリーンの中では
どこか大きな河の岸辺に
冬の渡り鳥が集まり
その鳥を1羽
少女が肩に乗せている
枯草と砂 ....
新月の深い闇夜はいつも
晩夏の有明海を思い出す
まだ19歳のひとり旅だった
熊本長洲港から最終間際の有明フェリーに乗船し
対岸の長崎国見の多比良港に渡った
フェリーに親しげに ....
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