たっぷりの熱湯の中に
捨て台詞を少々加えて
マカロニを入れる
いつまでも未練がましく
くっつかないように
十分注意しながら
再び立ち直れるまで
何回か掻き混ぜる
アルデンテ ....
川べりを歩くように
線路沿いを歩く
この街はせわしないから
列車に幾度も
追いつかれては追い越される
たくさんの人の思いが
列車に乗って
近づいては遠ざかる
まるで別の時間 ....
帰ろうかな
そう思った
一瞬を幾度か
ちらして!
5月
空は氷を溶かした青で
お花のジェット
バウンド・フォー・トーキョー
千歳の上空から苫小牧
育った家を見下ろした
掘り ....
鳥昏く飛翔して陽の大海
蛇搾る樹液の朝はぬらりぬらり
蟇蛙が轍で潰れ死んでいる
良く晴れた多摩川沿いに走る二車線の都道
歩行者用信号機は青へ変わっているに右見て左見て
みーちゃんの手を引きながら急いで渡る
轢けるもんなら轢いてみなよ…いつもならそんな気概なんだけど
....
ブラックスモーカーの
熱い暗闇のほとりで
スケーリーフットを枕に
わたしは不思議な夢を見た
空っぽの背骨を
滑らかな夜風で満たして
わたしは空に浮かんでいた
手足になり損ねた ....
手を引かれ歩く。
懐かしい匂いのする君
その面影は記憶の水底
私が潜水夫になって強く握り返すと
つないだ手には水たまりができて
空の色を映す。
薄暗い緑の茂みの奥までくると
....
ゆっくりと、撫でてゆく
背中から本能までの
または、今日から命果てるまでの
測れない距離を、あの人の言葉は
簡単に届いて、そして、
明日に色を書き足してゆく
友情、と言っていた
....
死んではいないのだね
そんな囁きが体中を循環している
いつからか
私の胸にオウムが居座っていました
住ませてあげているのか
住んでもらっているのか
もうよく分からないけれど
生き ....
銀色の糸で夜空の端を結んで
葉緑素だけつめたはこのなかに
すこしずつ流し込んでいく
そしたら女の子がおどろいた顔で
真珠のような瞳をみひらいて
でもそのあとすぐ微笑った
無機物の甘 ....
砂浜に続く小さな花に
潮風が囁けば
あの日の
僕らのはしゃぐ声が
遠く、
残響していて
ふいに、
よせる波が
すべてを打ち消した
....
商品棚に並べられた
きれいなゼリー状のものに囲まれて
カイちゃんが笑ってる
時々ふるふると震えて
何も言わない
床に落ちている
貝殻や干からびたヒトデを
二人で拾う
昔 ....
玲瓏の雲がたなびく
岸辺
ゲノムを運び終えた生き物たちが
崩れた山のように
積み重なって倒れている
おびただしい数の
生き物たちの目や口や鼻
牛や馬に混じって
人の体も横たわってい ....
キミのあいさつは
風が頬をなでるみたいで
キミの哀しい歌は
心の奥で優しく響いて
キミの世界には
朝露のひとしずくにも光があふれてた
風がやんで
歌もやんで
静まり ....
遊覧船に乗って
母がやってくる
薄い和紙のような島から
幾重にも重なった白い線を越えて
母がやってくる
手土産は櫛団子
毎年のことだ
おれは知っている
甘いのだめなんだ ....
パン作りに悪戦苦闘する教室の扉をそぉっと開くと
可愛らしい眼でこちらの様子を窺いだす
仲間外れされているとかの感情より好奇心が勝っているようで
親指を口に含みながらきょろきょろしてる
手足 ....
白く清潔な四角に
閉じ込められる夜は
寝返りばかりうっている
シーツのまだ冷たい方へ
まだ冷たい方へ
そうして考える
あの人の隣りにいた頃は
右向きに寝ていたんだっけ ....
掴み損ねた言葉の
微かな尻尾を追いかけて
自分の中の暗闇を
遠い目をして彷徨い歩く
赤いサンダルを履いた
今にも消え入りそうな
小さな誰かに手を振って
片道切符を握り締め
....
提出物の水牛が
ゆったりとした様子で
机の上を
壊している
言葉や数字との戦いに
日々明け暮れ
同級生の一人は
衣替えを終えた次の日
バッタのように逝った
日直の人が学 ....
砂浜を撫でる乾いた風が
肺から循環する
感傷の毒を洗い流し
ただ瞬間だけを咲かせる
吐く息はいつも
黄痰に鎖を繋がれ
夢の欠片も存在しない
一本の座標軸に
流され惑わされながら ....
薔薇をあなたに
五月の薔薇をあなたにあげたくて
私はひとり庭をさまよっている
ハーブの花畑を通って
クレマチスの花園へ
キングサリのアーチをくぐったら
そこはもう薔薇迷宮
色とりどり ....
小鳥らは遠くさえずる胸で聴く
曇天にこうべ垂らして礼拝す
燃え滓の静かな街路に排気ガス
真夜中の真っ赤な赤色
ダイアモンドの純白
朝方の侵食する窓辺
首の影が長くのびた
涙の色は水色だった
鈴屋の前で迷子になって
珈琲の味は処方箋
人を人質にして ....
妻が
手袋を
編んでいる
早く手袋に
指を通したい
わたしと妻の
子供が待っている
やがて
できあがると手袋は
子供の指に
通されたくなっている
指を通す ....
夕暮ころがる銀小鈴
にじみしたたる青さと船頭
サイレンの歌に死する。
真砂の青貝に覚めない潜伏
みじか夜 みじか夜
つっと向こうへ鎮座して
さざなみこなみ生むわらべ
みかんの ....
片鱗を
失くした 記憶に近い
きおくとよぶと とおざかる
わたくし自身は そうで在りたいとは
どうしても思えずに隣の席を空けたまま
座ったきれいな女の人は
チョコをおいしそうに食べ ....
青い水の中
赤い鯉が泳ぎ
緑の藻が浮いている
その脇で紫陽花は
自分の色を決めかねている
青い空の下
赤い蝶が飛び
緑の蛙が鳴いている
その脇で紫陽花は
自分の色 ....
雨が降り続く夜を
遮ってしまおうと
戸袋から雨戸を引き出しかけて
ふと 手を止める
視界の端で
何かが咲いていた
雨戸とガラス戸の隙間
わずか2cmの
薄っぺらな空間の足元 ....
舞い散る花びら地に堕ちて
黒く消え行く定めなれば
次世もまた闇から闇…
あなたがいなければ
あやまらないでくださいな
わたしに光をくれた人
....
駅東端の改札を抜け昔ながらの踏切を渡ると
南口商店街の低い軒先を飛び交うツバメ達に出逢った
桜は散ったばかりだと思ってたのに
あっという間に日傘手放せない季節となってしまったんだよね
....