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届かないと思っていた扉の取っ手は
いつの間にか腰の位置になっていた
背が伸びて視野が広がる
遮っていたものに追いつき追い越し
世界の大きさに少しずつゆびが触れる
もうすっかり ....
わたしが生まれるよりうんと昔に
他界してしまった母方の祖父は
実直で陽気なひとだったと言う
わたしが高校の制服に袖を通して間もなく
他界してしまった母方の祖母は
大変に気の強いひとだ ....
愛よ
おまえは道端の石ころみたいに
でしゃばりもせず佇んでいる
それは
太陽の光をたくさん吸い込んだ布団
使い古して先の曲がった万年筆
おどけた瞳を持った豚の貯金箱
....
恋人同士で祇園祭に行くと破局するんだって
昔からそんな噂がまことしやかに流れていた
きみからの誘いを断らなかったのは
おろしたての浴衣に袖を通したかった気持ち半分
別れたらそこまでの縁 ....
庭先に止まったアゲハチョウの羽には
感情の全てが閉じ込められている
そのざらざらとした声色が気持ちよくて
いつまでも肌をなぞっていてほしかった
淡い空にうろこ雲がほわりと浮かび
右目の向 ....
明後日の今頃には
きっとわたし、泣いてる
ハナキンなんて言葉が流行ったっけ
週末の空気はほこりっぽくて
ろ過された部分だけを吸い込もうと
口を無意識にぱくぱくとさせる
大嫌いなもの ....
叶わなかったものを
あした、と呼ぶことにした
ガラガラで出てきた白い玉
おじさんが残念でしたとティッシュをくれた
列から離れるとラッパの音が揚々と響く
真っ赤な自転車を当てた女の子は
....
落ちた数を数えるよりも
水滴の生まれた場所が知りたかった
ささやき声も空気を振動させるような
ぎりぎり均衡を保っているこの小さな空間で
破裂する寸前の風船みたいな緊張感の中
今、きみが生 ....
気付いていなかった
守られていること
包まれていること
てのひらにいること
振動を感じて見上げると
電線で翼を動かす雀
池の鯉は大きく跳ねて
しぶきをきらきらと飛ばす
特別 ....