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ある建物のロビーに座っていると
少し離れた場所に並んでいるコインロッカーの鍵のうち
ひとつだけが震えていて
「どこにもいけない」
と聞こえた
「そうだな」
と言うと
....
音へと変わる木の影の道
風がそのまま過ぎ去る道
やわらかく目をふせ
空あおぐ道
遠さと遠さの間は濡れて
縦の緑は震えている
北の星と朝焼けは消え
光はかすかにたどり ....
どうしようもなく空に向かい
わたしは
影を失くす
足の下を踏みしめ
家々をすぎ
すべてに接する崖へと至る
見えない花のわたしは
ひとつの大陸でできた楽器 ....
窓から世界が見えすぎるので
何度も何度も触れつづけては
指とガラスをたしかめていた
消えた素顔をたしかめていた
描かれた線に雨は重なり
音だけを残して見えなくなった
....
藪には花が咲いた
鳥の姿はなかった
銀を捜す風の目に
鳥は映らなかった
太陽は傾いだまま
午後の熱を失わず
光の刺さる音だけが
森のなかに響いていた
鳥は ....
壁に描かれた
巨きな逆さまの音符が
錆びた扉を指している
軋む音のなか やがてゆるりと
道しかない道が現れてくる
うすくけむる明るい夜に
けだものは光を聴いている
ひ ....
わたしは窓から身をのりだして
身投げのような夕陽を見ていた
消える 消える と小さな声が
両手をあげて泣き顔で
通り過ぎる祭を追った
わたしは高すぎて
わたし ....
誰もいない街を囲み
小さな白い花が咲き
低く宙に浮かんでいる
花粉と麟粉が
片目の奥に混じりあい
列を去ったものたちを見せる
薄く薄く固まった血が
蒼の ....
この世界のどこかに
わたしにならなかったわたしがいて
やはり ひとりで歩いているなら
おそらく わたしは
声をかけることができないので
せめて すぐ前を歩いてゆく
少しで ....
ひとりの子が
ひとつの楽器の生まれる様を見ている
作るものも
奏でるものも去ったあとで
子は楽器に愛しげに触れる
おずおずと うずくように
楽器は
花になる
新しい言 ....
音の無い空
音の無い花
近づきながら 離れながら
混じることなく
川の上に重なる川
川を映す川をゆく
花に触れ
鎮む流れ
陽は分かれ
影は過ぎる
花は音 ....
この先
いきどまりです
木陰の看板を
すぎてゆく雲
誰かの何かが持ち去られ
小さなものひとつ分だけ足りない世界の
午後のガラスの路を歩む
春は銀 ....
手に触れる花からはじまる
円筒形の歴史があり
空と目の間でまわっている
音が音を奏でている
こすれあう音
すれちがう音
変わりつづけるかたちの夜
とどめおけ ....
光のなかで光を引きずる
あちこち折れた羽のように
増えては
増えては 軽くなる
はばたきに似た歩みの音
灰のにおい
羽のにおい
いつのまにかひとりの道
鈴の音
陽 ....
錆びた鉄柱が立っている
裂けめは花に覆われている
雲ひとつない空
掴むところのない空
川沿いの砂利道は
小刻みな縦揺れ
見向きもしない水鳥
呼ぶ声に顔を上げ ....
わたしを忘れた光が
昇りつづけて朝になった
目を閉じても冷たい指先
さよならを言う光に触れた
さらさらと
さらさらと
雨雲が川のなかを遠去かり
水鳥を連れていってしまった ....
時間が
外から来る光を
横になりながら見つめている
花は雪
雪は花
晴れた日
道は海へつづく
ずっと空のままでいる川
とどろきの向かうほうへ
雪は昇り
落 ....
冷たい水の熱さに触れ
公園に立つ冬を見る
檻のなかの時計と噴水
公園に歌う冬を見る
風は痛く
水は閉じる
風はたくさんのものを集めている
誰もいない道を
ひとつ ....
色とりどりの人々が
角を曲がっては消えていった
降る雪の一粒一粒が太陽になり
地を貫いてはかがやいていた
空に届かぬものと
地に届かぬものとが手を取り合い
壁を巡りつづけるものの目に光 ....
冬の陽は降り
地は紫になり
雪は一言に昇る
翼は一瞬を負い
朝を蹴立てて
音は姿を撒いてゆく
雨のつづき
戻らない色
薄目をあけた午後の
窓に映る抱擁
すべ ....
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