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光ではないものをずっと見ていた
ゆらめく夜をずっと見ていた
倒れるために在るものばかりが
わたしに向かって近づいてきて
わたしのなかへと消えていった
目の前に
目の前で ....
そこには居ないものの影が
たくさんの影に混じっている
やわらかい草と硬い草の境いめを
音はまぶしくかき分ける
紫に囲まれた桜色の道を
ふたりは手をつないで歩い ....
色を伝って
つなわたり
風と窓枠
夕べの衣
水に濡れたままの効能書き
治りたいのでしょう
治りたくないのでしょう
あなたと一緒にいたいのでしょう
木の香りがいいでし ....
吠えるものが増してゆく
渦まくものが増してゆく
雨の終わりに流れ込むもの
ひとつの腕に映り込むもの
うねりは低く増してゆく
車輪と鉄柵
夜の雪雲
曲がり角の精霊
火 ....
巡りつづけるものたちの
行き来するものたちの歴史の羽
雨雲の胸に
水草の陰に育まれていく
生きることの終わりとはじまりに咲く花が
鈴のように鳴りわたる
葉の色はこ ....
空を一巡する声は
風のつづき
鳥のつづき
手わたされる糸
瞳の軌跡
夜から朝への
器のつづき
しっかり速く
黄金に変わり
こぼれ落ちる火
紡がれる ....
路の灯りが
土を照らしている
土の下には
鳥が眠っている
目覚める鳥にも
目覚めぬ鳥にも
朝は
羽を置いてゆく
光のなかの穂
花のなかの舟
うなじ
呼び声
....
道端の一本の木に
子どもが何百人も隠れていた
東の方から来たのだという
水がほしいというので
水をあげていたら明け方になった
狭い場所と
大きな音が嫌いだというので ....
歩むもののまわりを
木がまわり
林がまわり
色になり
光になり
やがて塔になったとき
音ははじめて姿をひらき
共に歩むものとなる
抱かれたままでいる
何かに ず ....
背中に入り込んだ紐が
誰かに引かれて灯る羽
骨のあたりでちらちらとする
虫のあつまり
綿のあつまりのような光が
鉄の柱とともにつづいてゆく
追う音の少なく
見 ....
空はふたつ
互いを追いかけ
雲はひとつ
高みへのぼる
たからもの
たからもの ふりくる
誰のなかにも
物のなかにもあるものが
聞こえくる
聞こえくる ....
雨を抱えた朝の傷
ただ静かに銀になる
ただ静かに鳴り響く
縦の傷をよけ
横の傷を踏み
円い傷の外周をゆく
点の傷を飛び越え 飛び越え
光のほうへ転ばぬように
....
朝と別の朝はつながり
声や水を憶えている
光や傷を憶えている
頬をかすめゆく小さな 小さな
見果てぬもののかけら かけら
定まらぬ世界をゆく定まらぬもの
水色と銀色
....
氷と光が交差する地に
人のものではない門がある
曇のような土がある
虹は滝のように降る
まだどこにもつながっていない
建てられたばかりの鉄塔が
空の輪の下
冷たい層を ....
朝の虹が
ちぎれた雲の上にだけ見えて
鋼のかけらのようにただよい
光から 光から 離れてゆく
海の亀裂
雨後の花
浪に昇り
空に会う
海と同じ色の岩 ....
手のなかの金魚がたどる路
響きのための階段を
宵宮の光が駆け上がる
かわいた飲みもの 食べものの跡
においはずっとたたずんでいる
街にやって来た映画の群れ
ひとつの方を ....
窓のふくらみの目がひらき
風をゆっくりと見わたしてゆく
どこからか来る黄金の音
越えてきた土の混じる音
目には青空と野が映り
どちらも南にかしいでいる
煙る碧と子らの手 ....
雨の日 音は海辺を描いた
さまざまな色を塗り重ねた
色はどれも少なかった
月や花からわけてもらった
銀と灰
黒と金
もっといろいろ描けたのに
ずっと待ちくたびれていた ....
ひとつが
どこまでもひとつに感じられ
ふたつが
どこまでも数え切れなく感じられる
街が街を過ぎるような
水のような音の時間を
子は歩む
子は沈む
千の手の波
....
夕べのにおい
外灯のにおい
壁の裏側に眠る怪物
屋根の向こうにそびえる火を追い
刈り込まれた生け垣の葉をとばす
一筆書きの街から街へ
人のような虹が駆けてゆく
うろ ....
何のために拓かれたのか
忘れ去られ 荒れ果てた地に
静かに触れるふたつの指
空き地から空き地へ
ざわめきを越え
かがやく差異の曇がひろがる
空にも地にも
....
昨日が昨日ではなくなって
明日が明日ではなくなって
今日のなかに溶け込んでゆく
いつかまた会えたら
看護婦がひとり
エレベーターのなかで
白い布の下にむかってささや ....
白猫の耳
草の下の水晶
白猫の耳
切っても切ってもひとふさだけ
長くのびる髪の毛を
目にかざし 陽にかざし
わずかに異なる小さなふるえ小さなふたえそのままで
ひ ....
光のなかのかたち
花の前の小さな声
小さな姿
ほどけてゆく線のあつまり
光を知るもののまわりには
小さな光の歪みがいて
小さな手を差しのべている
手に手を ....
夜は速い
夜は速い
これから向かう世界のすべてが
わずかに低く傾いているかのように
夜は速い
夜は速い
背に積み重なる力のように
夜は速い
夜は速い
誰かに遠去けられているか ....
指でかきあつめた空を
誰かが道ばたで食べている
遠い指の跡を見上げながら
傾いだ光ばかりが降り立つ
目の前にのびる一本道は
どこにもつながっていないように見える
....
あばら骨を浮き立たせたまま
空はどこへ埋まろうとするのか
墓地の土は硬すぎるのに
操車場の跡は狭すぎるのに
まわりながら燃えあがるかたちを
位置も時間も持たないものが
....
朝は暗く
雨はまぶしく
片目をつむる
痛みのかたち
指でたしかめ
頭のかたち
指でなぞる
何を恐れているのか
頭は
握り拳のままでいる
....
ゆっくりと明るい雲がせり上がり
それ以外の雲は皆うつぶせになる
降り止んだ雨は灰色
降り止まぬ雨は金色
とどまらぬ色とどまらず
とどまらぬ音ふりそそぐ
小さいものが
....
雨が近づき
誰もいない
贈り物を捨てた
霧に立つ
赤と白の脚
ひとつの弦を聴いた
動かない虫
窓ごしの雨
深緑の声
夜は去り
水は残り ....
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