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灰色のクレヨンひとつをにぎりしめ
まっしろな画用紙をくまなく灰に
塗りつぶしていたチビなぼくを
えんちょう先生は庭に呼んで
「ほらよくごらん 地面はね
灰色じゃないだろう? ちゃいろかな?
....
晴れているのに月のない空へ
昼間のように開いた駅の前、
二つ、三つ、稀な人影流れ、
出て、入り、立ち止まり、また歩き出す眺め、
いまごろ、あの人影になっていたかった、
ぼくののぞみは、た ....
海岸の砂のひとつぶひとつぶに個性がある
ように、木らにも体温があり心があった。
葉緑素分解のわずかなずれ、葉ごとの
むらが、木らの性{ルビ=さが}を際立たせた。
融雪の下で、再生の準備に余 ....
げしのかげ
たんせんに
のでださい
こいのいた
しろみだし
{引用=(タテ/ヨコ/ナナメに読んでください)}
夏至の真昼、
廃止された単線のレールをたどっていた、 ....
泥炭の下に閉じ込められた沼沢地、
蛙にならないおたまじゃくし、
時間をなくした植物たちの白い夢、
動かないげんごろうの開(あ)いた口、
生きたまま化石になろうとしている沼は、
寒天のよう ....
あなたに会ったのは、もう1年以上前、
晩秋の午後、あなたは斑らに錦糸を纏っていた、
その温かそうなあなたの胸と、あなたの厚い肩が、
ぼくの目には焼きついていた;
そしてあなたには触れること ....
そらにはあらゆる匂いがある、
くうきにはあらゆる色がある;
ぼくのいろが、くうきにとけてしみてゆく、
きみのにおいが、そらをうすくそめてゆく;
ぼくのとけたそらがきみにふきよせる、
きみ ....