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窓のむこうから
こちらを見ている
あの日とおなじ
空がまだ
そこにはあるんだろう
雨が降っている
あなたは雨を
まだ知ってるでしょう
セピア色の
窓のむこうに ....
ふりむけば
母がいる
ふりむかなくても
父がいる
はずだった
およぎ続けなければ
死んでしまう
魚のように
生きている
けれどもぼくは
人間だから
時々
息 ....
南国の木が立っている
わたしのように
雪国に生まれてから
ずっと
南国の木は知らない
自分が
南国の木であることを
雪国の木であると
信じている
雪国で生まれたなら
....
ふれると
消えてしまうものばかり
見てきました
ふれる
ということは
案外
傷つけることかもしれないと
知ってしまってから
ただ
見ていることしか
できなくなっていま ....
いつのまにか知り合って
いつのまにか朝を迎えていた
という状態は
どこか戦後に似てないだろうか
男と女
侵略するものとされるもの
その分け隔たれた
存在であるというだけで
戦 ....
やさしい人がいる
生きることのつらさがわかるから
察してくれて
会ってくれる人がいる
めそめそと
泣いてしまうかもしれない
その人の前で
ほんとうは泣きたいのに
つよい男のふ ....
十くらいはなれた
妹に
よく似た娘に
やさしくしてしまう
やさしくした後で
そのうかれた顔は何だと
誰かに言われたわけではないけれど
きっと僕は
そんな顔をしてる
もっ ....
金曜の夜
僕は誰かを探しに行く
誰もいないその街へ
つめたいビールが飲みたくて
土曜の朝
知らない誰かと眠ってる
眠りから覚めれば
またひとりぼっちになるから
夢を見つづける ....
かくしごとなんて
はじめからなかったはずなのに
生きてると
知られたくないことの
ひとつやふたつあるものでした
できることなら
椅子に生まれて
何も思わずにただ生きて
人を支 ....
なつかしいひとよ
あなたのことを
わたしは知らない
なつかしいひとよ
記憶とは
つくりものでしかなかった
なつかしいひとよ
はじめて会った日のことを
覚えているだろうか
....
雑音が聞こえる
鞄の中から
聞こえる声を聞きながら
母は呆けた
雑音が聞こえなければ
昔のような
声で母は話した
鞄の中から
雑音が聞こえると
途端に母は
声を濁らせ ....