かたん。
わたしの、やわらかい場所が、いい部分とわるい部分とに、ひとつひとつ解体されていく。いい部分は、礼儀正しくつるんとしていて、感触がない。わるい部分は、どれもいびつに明滅して ....
おかあさんから手紙がきました。
おかあさんは手が震えるから、看護婦さんが字を書いた手紙でした。
おかあさんの写真が2枚入っていました。
おかあさんはおしゃれできれいで自慢のおかあさんでした。
....
私のはピンクだったらしい
私が生まれたとき口に含んでいた石は
ピンクだったらしい
私の石を見て
大人たちは笑ったのだそうだ
女の子が
女の子らしく
ピンク色の石をくわえてきたというの ....
雨の温度が秋であれば
降りしきる時が吹かせる
あの風が好きだ
小雨であれば
プリントアウトした君からのメールを
焚き火にくべよう。
消去するときは軽々しい一瞬だったけど
剥がして ....
片足を曳いて
空を登る
これは頂上から下げる予定の頭
導く、斜陽は赤く、大きく
目を伏せる、花は白く、不気味に
大きく
わたしを
きみを
祝福して
大きく散るだろう花の学術名を手探っ ....
水は柔らかく伸びて
青いさかなとなり
耳にふれてとけてゆく
鳥は低く弾けて
白いはねとなり
肌にぬれてしみこむ
きみの産卵する文字たちは
見たこともないのに
なつかしい、ゆらぎ ....
灰皿の中には
口紅のついた吸殻が三本と
長いままへし折られた
断末魔が一本転がっている
口をつけなかった
ウィスキーグラスの氷は溶けて
意気地がない表面張力が
テーブルを濡らして ....
ゆっくりと赤ん坊に返る
その人をわたしは知っている
夫の祖父だ
わたしを、「大きな女だ」と言った、祖父だ
いつも戦争の話をする、祖父だ
布団の上でお絵かきをしていた、祖父だ
初めて ....
ただ星が瞬くだけ
それだけなのに
ほろろん ほろろん
君が泣いているかのよう
僕も瞬くよ
ほろろん ほろろん
という問いには自分なりに一つの結論を持っている。
「現代詩は難しい?」
と聞かれたら、いつもこう答えるようにしている。
「難しいものもあるよ」と。
以前こんなことを書いた。 ....
黄昏色の空の果て
ひとりっきりの帰り道
誰を待っていたのだろう
誰を探していたのだろう
電信柱の長い影
淋しいようと風の吹く
黄昏色の空の果て
家路をいそぐ鳥の群れ
どこへ行くとい ....
{引用=
【パンばかり食べていると外国人になる】
}
昔
こぐま印のしょくパン
という名称の食パンが
近所のスーパーで売られていた
近所の小さい食品工場で
おばさんたちが手作りして ....
ラピスラズリの
瑠璃色には
可能性が
眠っている
ゴツゴツした原石の
光らない それは
しかし
恐ろしい可能性を
秘めている
決め付けられることに苛立ち
出来ないこ ....
海の中にいた
ここは地球なのだが
靴を脱いでいるから
地に足が着かず
やわらかい席の
おしりの感触が消えそうで
前の席の 男の子 女の子
野鳥のさえずりに似ている
夏は タンパク質 ....
下り坂を歩いているとどうやら
駆け出す事を自制している事に気付く
しばらく考えたがその抵抗に意味はなく
停滞よりも前進を望む解放の欲求が最後には勝る
久々の加速度
肉体もさながら運動 ....
ゆっくりと
息を止めるように一日を仕舞う
箱の中のガラクタはいつも
明日になれば綺麗になっているから
ゆっくり、と
息を
ここ、に戻す
主のいなくなった
家の、傾き
通り沿い ....
初めて会う人の顔の真ん中に
或いは胸の真ん中に
おへその辺りに
とにかくその人の中心線に
隙間がないかどうか
確かめる
それは
ある時はボーリングの球くらいの大きさだったり
ある時は米 ....
・
掃除をすると
部屋の四隅から
無限に白い米粒が出てくる
表面は乾いて
埃にまみれて
まるで
昔わたしが産み落として
そのまま捨てた卵のようだ
・
遠くに見えるラブ・ホテルの ....
風の音がした
ふり向くと誰もいない
十八歳のぼくが
この街をつっと出ていく
いつも素通りしていた
その古い家から
いつか誰かの
なつかしい声が聞こえた
敷石を踏む下駄の
細い ....
ずいぶんと歩いていた
ぼんやりとそれだけはわかる
ふくらはぎの痛みの感覚は通り越して
いつか読んだ本の陳腐なストーリーのセリフみたいに
「それでも行きたい先がある限り歩くんだ」 ....
空が流れて
夏が止まって
指をのばせば
静かな想いを
星をみつけるまで
まだ帰らないで
とまった景色を
衣にして
まとう
無言蜻蛉、するりするり
夕陽が焼ききる
あな ....
テレビの電源を
オフにする
それだけでは
現実と私は切り離せない
と知ると
カーテンを開け放って
現在と対峙する
朝焼けも
夕暮れも
物悲しく過ぎた日の
言葉を吐くことを
一 ....
祭りの夜は渦巻く貝殻
空はずっと青かった
水の流れをずっと聞いていた
草を噛むとたちまち苦みが
口なかに広がって 星が銀河が
水のように押し寄せて来る
あれは
ケンタウルスのきら ....
星はかつて人で
海はかつて宇宙で
ぼくはきっと蟻んこで
きみは
きっと
かみさまで
(命の軌跡をなぞるその指先が)
....
黒鷹 もう飛び去ってください
雪が降る前に漂う 骨までしみる寒さ
真っ白な驚喜に始まった
救い主と幼馴染の少年の目線
静かに溶ける スコーン ....
陽だまりのような日常が
どこかに
存在していたりするのかしら
だれかの心の中に
小さくともるあかりのように
ささやかにでも確かなものとして
存在していたりするのかしら
目に見えないところ ....
からだがあって
こころがあって
たましいがあって
ここに
となりあって
ふれあって
かさなって
いつも
さいしょは
しらない
さ ....
子供の頃
日曜日になると
隣町まで習字の塾へ行った
習字よりも
塾をさぼって
町の本屋で立ち読みしたり
ゲームセンターでゲームしたり
そんな思い出ばかりが残ってる
ある日 ....
青信号の点滅
ギリギリで間に合わない
そんなことは
わかっていた
でも、
君と一緒なら構わない
そう思った
絶望的な結末
それでも今は構わない
君と一緒なら、たとえ
赤信号 ....
無心でキャンバスに 筆をはしらせる貴方を
私はそっと見ていました
貴方に見つめられた林檎からは
つやつやとした淡い光と微かな香り
独占される幸福を身にまとい鮮やかに輝く
「終わったよ」 ....
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