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青年と自転車が走る夏の残り。夜の田んぼからの風が運ぶ匂いに目眩を覚える。機嫌の良くない彼女に会いにいくために走る青年は、キスすれば機嫌の良くなる大切な人のことを考え、そのあと家にどんな顔して帰ろうか ....
ぽこぽこ。と気泡が浮いていく雨の日の窓拭き。はいつまでも終わらない雑巾がけに苛々して爪先で突いたガラス。に途端現れた大きな目玉に窓拭きは睨まれ。窒息。するかわりに、するする。と咽元につっかえた釣り糸 ....
春のこときりが潰れている
車掌が帽子を被りなおすと
老人は ん、ん と頷く
車掌の髪型をこときりは知らない
誰ももう待たないからだ
停留所の老人は一日をそこで過ごす
足元には夏のことき ....