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あのひとの黒髪をみたことがない
彼女は髪の長いひと
はじめて手紙をくれたひと
姪っ子にリンゴ飴を買ってきてねと頼まれて
祭りの帰りに
「ちょっと待っててください」
と闇の中へと消えたひ ....
曲がり角を曲がると
君がいた
僕は驚いて振り返り
逃げ出そうとするが手遅れ
椅子に座った君がいる
こんな道のど真ん中に
僕は舌打ちをし空を見上げると
電線にぶら下がってる君
わき道に目 ....
どっちを向いても砂浜だらけの砂
部屋が思い出砂漠しているのでゴースト バイ ゴースト バイ ゴースト
あなたが沼へ帰るというので
わたしは途方にくれる
あの森はあなたの兄を食べ
わたしの妹を ....
そして廃墟のような季節がぼくを微熱を帯びたむらさきにするのです

どこまでもすすきがひろがる枯れ野のなかで
あなたが動こうとしないので
ぼくは仕方なくすべての扉に鍵をかける
すべての窓に杭を ....
玄関の扉を開く真白いてのひら
その直前に十月の金木犀の香りに包まれて
ふと立ち止まるあなた
かなしみの胎動を青空に聴くことができる巨大なこすもすが咲いている森で
倒れゆく木々
その生前のざわ ....
公園のベンチで
よだれをたらしているひとが
木星に廃屋を建てていた
イカロスときみに呼ばれた五月から芽吹きだしてる背中のつばさ


滑走路駆けるあなたを追い駆けて追い駆けられて閉じてゆく恋


鋼鉄の翼たたまず夜を待ちどこへ飛び立つ思春期の冬


無 ....
開かれた窓が必ずしも
空ではないとゆう君が開く
歌集の背景も部屋ではないとゆう
綱渡りな瞬間が連続している

今日は一番新しい日

みんなに会いに行こうと思ったけど
道はすべて絶たれて ....
朽ち果てた夜行列車の寝台に
寝転んで星空を見ている
至るところが錆びていて
天井屋根はぬけたまま
よじ登る君はそのまま戻らない
仲間たちもどらない

まるで夜だ

屋根裏部屋で見 ....
今日、雪が降らなかった土地に
雨が降る
今日、晴れなかった土地が
曇り
曇らなかった土地が
晴れる

起こらなかったことも起きたことであり
起きたことも起こらなかったことのなかで

 ....
抜け殻のC2ボトルでいっぱいのダストボックス夜を濾過せよ


飛びかかる野生本能むき出すがBGMが気に入らない彼


シーツ上DNAの僕たちの 不安 恍惚 小さな心中


冷蔵庫なん ....
距離を守って下さい

噛み砕くために固い葉を望む
一字違いの日々です

ミルクのような牛乳を
もう一杯ください
欲しいのです牧場のように
強烈に踊りだしたくなるほど
こぼしますから
 ....
まどろみて戦闘服のポケットの内なる闇で文字となり待つ


幼少時蝶を追ひ駆けあきらめた崖の上にてそろへ置く靴


砂山にトンネル掘りてやがて夜未だに指はつながらぬまま


裏山の茂み ....
一滴の水の中へと
沈殿してゆくひと夏の青空が
無呼吸で深遠へと降りてゆくので
圧迫された半円の夏空その低空ばかり
飛び回る鴉たち
重たく旋回しては羽を乱散させ
またしても映り込む水の中
 ....
縁側で闇を見ている妹の白いうなじが僕を呼んでる


夏野山汗ばみながら駆けてゆくゆくえふめいの妹の兄


鉄塔の錆びた階段昇りゆく100階したから姉とは呼べづ


鏡台に映る妹べにを ....
畦 道 に 自 転 車 ゆ き て 蛍 舞 ふ


幼 虫 が 齧 る 花 食 べ 羽 化 を 待 つ


夏 に 首 痛 め て 星 も 見 れ ぬ 夜


古 井 戸 や 落 ち ....
夏 か い て ん す る と 同 時 に 蝉 騒 ぐ


盗 塁 を 刺 せ ず 投 手 の 恋 終 わ る


縁 側 の 素 足 の 影 で 眠 る 秋


草 む し り 花 ....
逃れゆくものたちから
遠くはなれ
真夏し続ける真昼
貝殻たちは閉じ続け
空は円環面だけを広げ続け退行の曇天
誰かが呼べば
誰かが応える
のそとがわで
隠れている子を見つけ出せない
鬼 ....
悔恨される音楽を聴いて乱読しよう雨
一粒・一粒残酷する高低の有無を生む
カラギナンの分量違いによる悲劇の午後
ミルクが凍る白樺の貫通する曇天
大体 曖昧な理由である毎日の労働
曇り空の孕む卵 ....
ゆふぐれに君とふたりで春の墓地ここでひととき幽霊しようか


「五千年前の約束忘れたの?」花火しながら妹が問ふ


昆虫がふたりの為の出会いなど知らづに運ぶ花粉かな


警報機こわし ....
結合した雪の結晶体が
春に降ることがないように
満ちることの重大さが
人生の背後に潜むのだ

荒れ狂う恋の嵐とは
また別のところでの
生殖
ことばはなく 有無はなく

未天地での選 ....
飛行場だった廃墟に忍び込むと
僕は思わず
飛行機になってしまう
両手を広げ
雑草の生い茂った滑走路を
全力疾走
夜風は冷たくて気持ちがいいな
思わず顔が微笑んでしまう
いつの間にか「キ ....
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