すべてのおすすめ
夕陽が呼吸する
昼を吸って
夜を吐いてゆく
夕陽が広がる空は
とてつもなく大きいけれど
その呼吸は
かすかに揺れているだけ
夕陽は静かに呼吸する
微かに夜を吐いてゆく
全ての ....
立っているだけで
汗が落ちてくる夏の
その夜
星が飛んでいた
短い夜の間だけ
羽ばたいていた
月へ向かおうとする星
大地へ降りようとする星
それぞれの運命に従って
音もなく
飛んで ....
苦しいとき
なぜか
いつも上り坂があった
何でこんなときにと
腹が立ったけれど
その坂を上らなければ
目的の場所には行けないので
上るしかなかった
上り始めると
思っていたよりは ....
人には見えて
自分には見えないもの
それは
自分の幸せなのかもしれない
自分では
不幸なことが多いと思うけど
人から見れば
幸せの方が多いらしい
いつも困ったことばかりだから
....
各駅停車しか停まらない
その駅のベンチに
ふと置かれた本が一冊
鞄に入れたつもりが
入らなかったのだろう
風でページがはらはらと
少しだけ浮き上がる
どこか心地よさそう
急行列 ....
時代が進み
同時に技術も進歩した
ある日
割れないガラスが作られた
高いところから落としても
ハンマーで強く叩いても
割れることはなかった
値段も普通のガラスよりも安く
大量に生産する ....
初めて通る道なのに
なぜだかどこか知っている
誰が通るか知らないけれど
笑顔はどこか懐かしい
ここはもしかすると
故郷なのかもしれない
ほんの短い道だけど
本当はものすごく長 ....
我が家に
最新型のテレビを入れてみた
だからといって
家族の会話が増えたわけではない
そもそも家族全員が
揃って家にいるときはない
増えたのは
番組録画の数だけだった
自分の付き合 ....
かつて昔
どんなことをするにせよ
不便な世の中では
一つのことを身につけるのに
長い努力を必要とした
そこには根気と忍耐があり
常に自分と向き合い
他人とのふれあいもあった
手放すこと ....
雨降る夏の若き葉に
雫結びて一つ落ち
下の葉受けてまた落ちる
その{ルビ音=ね}はまさに時のよう
雨降る夏の黒き地に
蛙這い出て一つ鳴き
雨水打たれまた当たる
その絵はまさに歌のよう ....
ぼんやりとした夏の中で
ため息をつく
空気の動きは何も見えず
目の前にあるものが
ゆらゆらと揺れていて
今はただそこに
乾いた土が滲んでいる
見上げれば
青い空があるようだが
その色 ....
夏になると
土の倉庫から
たくさんの野菜を運び出し
ざるの中へと入れてゆく
気をつけていないと
すぐにいっぱいになる
山の水道で洗い流し
地下の水道で冷やす
この星の夏は
宇宙の台所 ....
風は吹くだけではなく
時には歌い
時には光る
風は夢を見させてくれる
水も流れるだけではなく
時には跳ね
時には踊る
水も夢を描かせてくれる
雲も浮いているだけではなく
時に ....
ずっと昔
何人もの人が一緒になって
ようやく一日かかって
つくれたものを
今は半日以下で
いやもっと短い時間で
しかもたった一人で
つくれてしまう
けれども
ずっと昔から
忙しさは ....
夏の土は掘り返された
今まで誰もにも見られなかった
その暗黒が
ついに地上の光に照らされ
盛られた土たちは
ふうっと息をついた
初めて受けるその眩しさに
知らない世界を知る
こんなにも ....
手にしたペンが
ここを握れと言っている
真っ白い紙が
これを書けと騒いでいる
すべての物が語りだす
物と心は離れない
物にも目や口や耳がある
その魂を描くとき
それは物語となる
物は ....