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分厚い雨雲の真ん中が綻び
底なしの穴の遥か遠く
水色の空が薄氷越しに透かし見えると
遠い夕焼けが破れ目の縁を
なぞるように湿らせる
逝く人の
輪郭を切り取るだけの硝子窓
....
遠く轟くのは雷鳴
それとも記憶の彼方の爆音
或いは過ぎ行く夏の
名残の花火
下駄を穿いていた
裸足のくるぶしを
風がくすぐり
バッタが跳ねる草の道
また明日遊ぼうねと言 ....
寝床に横たわると
せせらぎが聞こえてくる
母の家は川に近いが
夜は窓も閉めているし
国道を挟んで
川の流れる音など聞こえるはずがない
たぶん一晩中自動で回る
換気扇の音だろうと
弟 ....
久しぶりに電話してみる
着信音が十回で、切る
内心ホッとする
まもなく向こうからかかってくる
少し慌てる
「なに?どうかした?」
声を聴いて安堵する
「いやどうもしないけど。今話せるの? ....
初夏の夕暮れ
やわらかい風に吹かれながら
玄関先にしゃがんで
ビオラの花柄を探しては
摘みとる
こんもりと咲き茂る寄せ植えが
あたらしく
生きかえるのが好き
いつからだろう
....
仔犬を胸に抱いた少年
あるいは
眠っている赤子を
抱っこ紐で抱えた母親
のように
買ったばかりの
ラナンキュラスの
花束を
両手で持ち
包装紙の隙間から覗いて
微笑ん ....
おにさんこちらてのなるほうへ
追いかけても
誰も捕まえられなかった
嫌になって
薄目をあけると
どうやら
周りに誰もいない
口惜しくて
やみくもに走ったら
迷子になった
何 ....
冬の子どもたちが
落ち葉のマントを纏って
手をつなぎ
かごめかごめをしている
誰かが
あっちだ
と言って走り出すと
手をつないだままで
一斉に駆け出していく
遅れた子を 心配 ....