すべてのおすすめ
住宅街を
奥へ奥へと
入っていくと
だんだん足が浮いてくる
足をつこうとして
何度も何度も足踏みしながら
歩いていくのだけれど
なんだかおかしいな
どこが自分の家なのか
本当はよくわ ....
わたし
夜に写真を撮ったわ
あなたの家の
木を
あの頃
毎晩見ていたわ
あなたのことを思いながら
わたし
夜の写真も撮ったわ
あなたを
夜のあなたを
それはもうないわ ....
5センチの猫が
水槽に飛び込んで
すべての魚を
粉々にしてしまった
床に落っこちて卵が割れた
平凡な日常のひとコマ
のはずが
切れて怒鳴りだしたわたしを
誰も止められない
というか
誰もいない
「なかったことにしよう」
と言われて
黙って頷いた
そうかぁなかったことかぁと
帰り道電車の中
何度も何度も考えた
とても疲れていたので
座りたかったけど
井の頭線は混んでいて
つり ....
14歳の冬
生理が1ヶ月近く
止まらなかったことがあった
わたしは学校で倒れ
保健室に運ばれた
どうしたのと先生に
やさしく聞かれても
上手く話せない
自分でもわからない
母親に病院 ....
留学生のアントワーヌは
フランス人だけど英語も話す
でもわたしはどっちもあやふやで
アントワーヌの言おうとしていることが
いまいちよくわからない
アントワーヌはおしゃれで
見慣れない色 ....
山の上から川が流れてくるよ
さらさらと静かな音が響く
見上げれば白く輝く月
その光を浴びて川面はきらきら
わたしは水の上を溯ってゆく
白い小さな花が川の両岸で咲き乱れ
その香りが辺りを覆う ....
ピアノの上に跨って横から弾いてごらん
そう横から縦にショパンのエチュードを弾くの
指の動き早い早い早い
ねえどうやって弾いてるのねえちょっと見せて見せて
すごいよまるで曲芸だね
ねえわたしも ....
喉が渇いた気がしたのに
水を飲んでも
潤わない
ああこれはきっと
わたし
乾いてるんだ
まるで胃が裏返るように
我慢して
我慢して
でも限界がきたら
胃が裏返ったあとに
....
黄色い線までお下がりください
下がってますよはいはい
車掌さんいつもありがとう
風の強い夜
電車は黄金色に煌々と輝き
静かにわたしの前に滑り込む
ドアが開く
乗らないでいると
後ろ ....
よる寝ていたら
彼が帰ってきて
ひどく酔っていて
わたしは体を起こした
そしたら女の声がして
女もひどく酔っていて
大きな声を出してる
「もう帰れないんだし泊めてよ」
髪の長い
白っ ....
毎日毎日コスプレだ!
どこに行くか・誰と会うか・どんな自分で通すか
簡単なこと
幼稚園ママとしての目立たない格好はどれだ!
公園デビューにふさわしい格好はどれだ!
とりあえずサリーとかを ....
暗闇の中の大きな木
紫色の花がぼんやりと咲く
濃い緑と紫の混ざった匂いの下
わたしは靄のかかった月を見上げる
これはぜんぶ
いまわたしだけ
泣いているこどもは
湯気が立っていて
かわいい匂いがする
抱き締めて
頭に鼻をくっつけて
くんくん嗅ぐよ
産まれたてのときは
わたしの内臓の匂いがした
今も少し
する
....
おじいちゃんが双子だったの
やさしいおじいちゃんだった
あなたも双子なの?偶然ね
ねえお兄さん連れてきてよお兄さん
弟なの?まぁそんなのどっちでもいいよ
さあ、天井を眺めて、あ、空か、
こ ....
「笑わなくていいよ」と
店長が言ったので
わたしは笑わなくなった
一本調子で値段を読み上げるだけ
夜のコンビニに、エロ本を買いに来る男を
警戒するようになった
バイト終了時間の待ち伏せ ....
覚えていますか
と
問いかけるのは怖い
そして無意味だ
わたしはあなたにとって
最初から存在しなかったと
同じなんだと
確認したところで
一体なんになるだろう
覚えていますか
と
....
暗い道に
落ちているもの
気になるけど
拾わない
これまで何度も
何度も
拾った
それらは拾って持ち帰ると
どれも
黒くなった
わたしは悲しかった
暗い道に
落 ....
静かな夏休みが終わった
波の音や
山の木々の葉ずれの音
動物の鳴き声
テニスボールがぶつかる音
のんびりした鈍行の行く音
渓流のせせらぎ
それからなんだっけ
釣りをしているおじ ....
夜の海で眠る
夜は海だ
ゆらゆら揺れる波の上で
何度も投げ出され
海に飲み込まれる
人は
ほんとうは誰もいない
というかわたしもいない
わたしは小さなばらばらになる
隙間に水 ....
「俺って結構まじめなんだよ」
っていう男は多い
ほんとに多い
いったい何が言いたいのか
さっぱりわからない
心の中では
「へえー」と答えてるけど
別に言わない
繁華街のホテルを出た
....
今思えば
すべてのことは
半径二キロの輪の中で
起こっていた
その中は
やさしい
繭のなかのように
柔らかくて
はじめて刺繍糸を買いに行った日のこと
鮮やかに覚えてる
刺繍で風 ....
わたしたちはお互い
愛してるフリ
が得意
やさしい人のフリ
も得意
でも馬鹿じゃできないそういうことが
できるあなたが
わたしは結構
ほんとに好きだったり
するの
だから大丈夫
わたしがそれを見つけたとき
わたしは28歳
離婚したばかり
バイトを3つ掛け持ちし
年下の男と暮らしていた
年金なんて払えなかった
でも先のことを考えると不安で
毎月5000円ずつ郵 ....
チンピラだ
わたし
声がもう
濡れてる
夏の
アスファルト
熱い
マンホール
開けて
野良猫を
放り込んで
自分も飛び込みたい
人が恋しくて
誰かにしがみつきたい ....
どうしたらいいのかよくわからない
ので
眠れるように激しく
どうか
お願いします
はりねずみをなでなでしてくれる
奇特なひとはいませんか
手のひらが血だらけになるかもしれないけど
....
夕暮れのスーパーマーケット
では
いろんなものが
安く
売られていて
わたしはカゴを持ち
ぼんやりと
歩く
お金を出したら
いくらでも
買える
ものたち
ほんとはあ ....
使いが来たら
病院へ行くことになってた
アル中のあなたが
最後に入院した病院へ
肝硬変
だけ
じゃ
ないみたい
だね
いろんなこと教えてくれた
年上のひと
体に心に
消 ....
おともだちとお茶
いいかげんなわたしは
話し相手に
いいらしい
少し欠けた茶碗は
お気に入りのブルー
だから
捨てないで
使ってる
天気の良い日は
遠くへなんて行かないで
....
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