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終わりたくない昼と
始まりたくない夜が
西の空で見つめ合っているような
そんな色だった
手放したくない光と
受け入れたくない闇が
西の空でせめぎ合っているような
そんな色だった
思いがけない桃色 ....
充血するほど
見つめあっても
見えないものはある
どんなに長い
聞耳を立てても
聞こえないものはある
見えているのは
草原の遥か彼方の
とても体裁の良い
互いのまぼろし
....
自分が木螺子だと気づいたのは
空の水が全部落ちてきたような
凄まじい雷雨が通り過ぎた後だった
公園のブランコの下の水たまりに
たまたま自分の姿を映した僕は
ほんの少しだけ驚いた
で ....
買ったばかりの缶コーヒーを
首筋に押し当てながら
見上げる空
千切れた記憶の尻尾が
光りまみれになって
流れていく
街路樹から降り注ぐ蝉の声が
身体をすり抜けようとするから
何処かが痛い
流れ ....
君の鎖骨の裏側から
湧き出る清らかな水は
僕の思い上がった左手には
少し冷たかった
君の脾臓のほとりで
青白くひらめく魚は
僕の遠視ぎみの右目には
少し痛かった
お願いだか ....
木魅 (こだま)
「好きだ」
溢れ出した想いを返せないまま
あなたは土に還り
わたしは朽ちることもできずに
「好きよ」
抱えすぎた言の葉をざわめかせながら
夜毎 すすり泣 ....
ぬらりひょん
つかみどころなんてあってたまるか
若い頃の苦労はすぐに質入れしたし
長い物は巻かれるふりして帯にした
真っ正面から当たるなんてドジは踏まない
折れない柳は風を知り尽 ....
ろくろ首
それにしてもあなたを待ちすぎました
わたしの断ち切れぬ想いはあの日の
あなたのうしろ姿に縋りついたままで
身体だけが狂おしく軋みながら
いくつもの夜を越えて来たので ....
坊主が屏風に上手に坊主の絵
を描いているところに
東京都特許許可局
の役人が訪ねて来て
裏庭には二羽庭には二羽ニワトリがいる
と教えてくれたので
青巻紙赤巻紙黄巻紙
を携えて駆けつけ ....