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熱が下がった朝
起き上がるとまだ
少しだけ喉が痛い
でも、気にならないくらい
だから
顔を洗う
洗濯機に洗濯物を入れ
スイッチを入れる


台所の椅子に座って
湯が沸くのを待つ
 ....
デジタルの時計を見ている
タイムスリップを繰り返している
1が出て唐突に2が来て
3がその上に重なっていく



分の十の位が一の位に話しかけていて
突然相手が変わったので
びっくり ....
立ち上る煙を見ると
その先に魂を探してしまう
人ひとり死んだのに
山は頬を染め始め
わたしは焼き芋を食らう

パチパチ、と鳴る
時を刻むより不規則で
ずっと我慢していた拍手を
本当は ....
昨日、暗くなってからした喧嘩は
今朝のうちに
昨日使った天ぷら油と
一緒に固めてしまうことにした
まだ熱いうちはなかなか固まらなかったけれど
なんとかゴミ出しの時間までに固まったので
きち ....
左手の
見えなくなり始めた傷
手首の辺り
親指の辺り
よく探さないと見つけられないほどの傷
もちろん痛みはない


この手を噛んだ犬は
今頃どうしているだろうか


人間に飼わ ....
初めて会う人の顔の真ん中に
或いは胸の真ん中に
おへその辺りに
とにかくその人の中心線に
隙間がないかどうか
確かめる
それは
ある時はボーリングの球くらいの大きさだったり
ある時は米 ....
今夜の献立

・夕焼けと向日葵の背中の煮物

・虹のフライ

・蝉と夏休みの子供の声の和え物

・打水のおつゆ




ごちそうさまでした、と
流しに綺麗な皿が
水に浸さ ....
車に轢かれた「ただいま」があった
この持ち主はきっと
今頃帰る家がわからなくて
公園のベンチに体育座りしているのだろう


蒸し暑いこの季節になると
「ただいま」がそこいらで車に轢かれて ....
ポテトチップスは無駄遣いなんでしょうか
主婦向けの雑誌を見ながら
(雑誌は、読む、というより)
(視覚からの情報が、その、)
(まあ、今はそんなことどうでも良いんだけど)
疑問がまたひとつ浮 ....
月曜日
仕事から帰って
メイク落としシートで顔を拭いた
ゴミ箱に捨てる瞬間
シートがため息を吐いたような気がした


火曜日
上司に怒られた
理不尽なことが世の中には詰まっていて
 ....
姉は鏡を持って出てきた
お母さんは?
と聞くと
買い物に行った
と言った

彼女は看護士をやっていて
だから、医者とは絶対に結婚しないそうだ
まだ、結婚に可能性のある姉が
希望をひと ....
ふくろうを売りに来た人は
中年の腹が出た女だった
彼女のお腹の中には
不満や悲しみや欲望が
脂肪の姿をして蓄まっているに違いない

ふくろうなんて飼えません
と断ると
玄関に置いておく ....
郵便受けに入っていたのは
営業スマイルの葉書と
ネクタイをきちんと締めた葉書

営業スマイルの葉書を開いてみると
べりっという音を立てて
用のないパンフレットを差し出してきた
次から次へ ....
携帯電話から母が出てきて
べつになんでもないんだけどさ、と
なんでもないことをしゃべり始めた
この「なんでもないこと」というのは
父が発明家になってしまって
サラリーマンのほうが都合が良いの ....
街なかで白い小鳥を配っていた
籠に入ったたくさんの小鳥を
小鳥配りの人が要領良く配っていく
受け取らないつもりでいたのに
いざ目の前に出されると受け取ってしまう
わたしが手に取ると
それは ....
雨が笑うのは
春になった証拠
ぱらぱらと
声を出して笑っている


庭で笑い声がする
覗いてみると花の蕾が
くすくすと
声を出して笑っている


小鳥が跳ねている
風の音に合 ....
春の空が眠そうなのは


太陽が少しだけ優しくなったからかもしれない




地上から沸き上がる息吹きは


空を真似て


まだ少しだけ眠そうだ
夢の中に落とし物をした日の朝
猫になっていた
仕方がないので
夫を会社に送り出してから
家事は明日にしようと決め
日向ぼっこをして過ごし
夜になったので眠った
明日はせめて、猿になりたい ....
立ち止まったところに
誰かの{ルビ欠片=かけら}が落ちていたので
拾い上げてから交番に届けようとしたら
持ち主らしき人が
不安を抱えたてこちらへ歩いてきたので
「捜し物はこれですか?」
と ....
「気楽」を抱き締めた
精一杯に、一生懸命に
「矛盾」が貼りついてきたので
えいや、と払い落としてごみ袋に入れる
これはもえるごみだろうか、と
湿った「疑い」が落ちてきたので
とりあえず床を ....
よしおかさくらさんの小原あきさんおすすめリスト(20)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
平熱- 小原あき自由詩7*08-11-5
デジタル時計- 小原あき自由詩19*08-10-16
焚き火- 小原あき自由詩20*08-10-14
ゴミ置き場- 小原あき自由詩8+*08-9-26
六つのし- 小原あき自由詩21*08-9-18
隙間- 小原あき自由詩17*08-9-12
夏のゆうげ- 小原あき自由詩30*08-8-1
「ただいま」- 小原あき自由詩22*08-7-25
無駄遣い- 小原あき自由詩9*08-7-22
メイク落としシート- 小原あき自由詩22*08-7-12
- 小原あき自由詩20*08-6-25
ふくろうと胡蝶蘭- 小原あき自由詩10*08-6-16
客の来ない家- 小原あき自由詩19*08-6-9
母の声が鼓膜に残った話- 小原あき自由詩16*08-5-29
できごと- 小原あき自由詩34*08-5-17
聞こえるのは- 小原あき自由詩15*08-4-8
春日和- 小原あき携帯写真+ ...6*08-3-9
夢の中に落とし物をした日- 小原あき自由詩31*08-2-29
出会うこと- 小原あき自由詩17*08-2-1
きらくのはじまり- 小原あき自由詩18*07-12-18

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