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長い夜の
ゆめとうつつの狭間で
わたしたちは
何度もたしかめあって
疲れはてて
耳元で
あなたの鼓動を聴いて
おなじ速さで脈打つ
長い夜だから
そんな時間がふえて
すこし持 ....
お帰りですか、と
聞くとその{ルビ女=ひと}は
ええ、と
小さく頷いて
穏やかな微笑をうかべた
鬱蒼と茂る緑葉の下で
木洩れ日が描くまだら模様が
白い肌をよけいに引き立たせ
蝉しぐ ....
女はいつも災いをもたらす
憂いを含んだ微笑みで
鏡に向かい髪を梳く
後ろ姿に見惚れてはいけない
鏡の中の女と
視線を合わせてはいけない
男はいつも災いをもたらす ....
メモを片手に料理上手
冷蔵庫の残りもの
なんでもかんでも炒めよう
卵にレタスに牛肉
小エビにきくらげしいたけ
長ネギかまぼこにんじん
ついでに日頃の鬱憤も
炒めて炒めてご機嫌 ....
バザールは活気に満ち溢れていた
女たちは色鮮やかな衣装を身に纏い
自慢の品々を並べて
旅人たちに朗らかな笑みを投げかける
すべては明日の命の糧の
マナトを稼ぐための軽妙な話術
....
A子(主婦39歳)は嘆いていた
価格破壊の世の中を
街を見渡せば
いたるところに100円ショップ
(なのにレジでは105円取られるのよね)
超ディスカウントショップも蔓延し ....
1.
もわもわ
と、ふくれあがる嫉妬心
あなたが遠くをみつめるその先に
見えるはずのない影を見ては
心に広がる黒い雲
2.
クルクル
と、まわる私の猜疑心
ゆう ....
夜に、わたしは
はしたないほど口を開けますから
どうぞそこから私の中に
入っておいでなさい
内側から私を喰い尽くして
やがて空洞になった私の躰は
それでもまだぬるま湯ほ ....
色とりどりの花片の散り敷かれた舗道は
華やかな体面をたもちながら
苛立ちを隠しきれずに風を待つ
永遠に灰色であることはささやかな安穏
たとえ幾千もの足に踏み入られても
艶麗である ....
遅い春が さらに足踏みをして
私たちの日曜日は
台無しになってしまったけど
公園からの帰り道
陽当たりのいい住宅街の一角で
うっすらとつぼみの綻んだ
可憐な桜を見つけた
ブロ ....
花曇りの空に舞う胡蝶の
その透きとおった翅を
欲しいと思う
やわらかく笑う
ということを覚えたのは
いつの頃だったろう
新しいピンヒールが
足に馴染まなくて
ア ....
息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた
夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき ....
もしも許されないなら
この瞳を抉り出して捧げますから
貴方の薬指を飾る石にしてください
蝕まれてゆくのはいつも正常な意識ばかりで
何かを伝えようとするたびに奥歯が軋んで
上手く ....
たとえば
カーテン越しの陽だまりに
できるだけぽつんと
たよりなく座ってみる
時計の針の
こちこちという音だけが
胸にひびくように
明るみの中で目をとじる
いつの日かお ....
夜が好き
塗り重ねた紺碧が
恥ずかしい輪郭を
消してくれるから
たやすく嘘がつける
夜が好き
冬が好き
穢れのない雪は
{ルビ男=ひと}を疑う心黒さを
隠してくれるか ....
冬枯れの老木に
花を咲かせてやりたかった
とびきりの六花をこしらえて
枝という枝に舞い降りたのに
老木は身をふるわせて
あぁ、寒い
ゾクゾクするよ と呟いた
初恋に破 ....
準備運動は必要だよね
途中で足がつらないように
君と地球を泳ぎきるため
助走はやっぱり必要だよね
途中で失速しないように
君と地球を飛び越えるため
怖いときは目を瞑ればいい
....
幼い頃のひとり遊びの記憶は
影となって私に纏わり
誰かを愛そうとするたびに
耳元で呪文を投げかける
楓の色づく様を
薄の頭をゆらす様を
人と分かち合うやすらぎを ....
宣告を受けた日
私たちは意外なほど冷静だった
それはおそらく
屈強な父の姿には癌という病名が
あまりにも似つかわしくなかったからで
父はいつもの如く寡黙だったし
私 ....
我ひとり凛と咲きたるケイトウの立ち姿に見る揺るぎなき赤
夕焼けを映して林檎の色づいて食むる乙女の頬にうす紅
ひそやかな紅き花よと見惚れたる君のまなざし吾もまた乞う
い ....
その
ひぐらし
アコーディオンがたからもの
ヒトの喝采むさぼって
どこふく風のねなしぐさ
ゆらりと浮世をやりすごす
あれは
キリギリスとしんせきだったかねぇ
そ ....
ねぇ見て 不思議よね
こんなにちっちゃいのに
ちゃんと爪もあるのよ と
満ち足りた母親の顔で彼女は
小さなこぶしをを開いて見せる
アキアカネが飛び交う夕暮れに
生まれたから 茜
はい ....
強い信念があれば
幼子の指一本で
巨人を倒すことも出来る
二機の飛行機が
大国の象徴を滅ぼしたように
しかしその信念は歪んでいたために
多くの生命を無駄に奪い
....
あの子は逝ってしまったのよ
夏の名残の陽射しが注ぐ朝の庭で
何度か苦しそうに喘いで
だけどそのうち眠るように
少しづつ少しづつ
呼吸が弱くなって
愛するみんなが見守る中で
頑 ....
雨の夜
宙に惑うのは
報われなかった
言の葉の亡霊たち
人を傷つける為に生まれました
見下す為に生まれました
罵倒する為に
揶揄する為に
己に言い訳する為に生まれました ....
人の生き死にをたやすく
詩になんかするものじゃない
と、貴方は私に云い
今のところ
概ねだけどそれは守られている
けれど私は
貴方の生きざまと
死にざまだけは
しっかりとこの眼 ....
静寂の海
咲いて波間に
ほの白い影を落とす月
寄せる波は
真夏の喧騒
返す波は
秋の訪れを
それぞれに伝えて
移ろう季節を人知れず
見送り
迎える
久遠の光は ....
爆弾を我が身に纏って散り果てぬそれを正義と笑わせやがる
見上げればおんなじ色のはずなのに我らの空もイラクの空も
銃口に面と向かったその時に「万歳!」なんてぜったい言えない
....
閃光と爆音が果てしなくつづく
長い長い夜だった
終戦前夜の静かな港町に
これが最後とばかりに
ありったけの爆弾が落とされて
夜空はまるで夕焼けのように
真っ赤に染まったという
....
帰り道に迷って
泣いてる子羊
あの空の羊雲は
違うよ
君の帰るところじゃない
涙を拭いてよく見てごらん
発見はいつも
ほんの足元からはじまるんだ
背伸びをしてると
ほんと ....
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