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学校を抜け出して
坂道を下ると
線路のあたりから
かすかな潮の匂い
遠い浜辺へと
心を急かせても
水面を見る前に
五時間目の鐘が呼ぶ
走れ走れ
さよならのために
さっぱりわから ....
行き着く先は
標本学
無言の月ごと
ホルマリン漬け
かじかむ事すら
忘れた手
恋の形見よ
貴方をかざる
沖からの風は
ずっと前に止んで
マリンブルーのジュースの
べたつきだけ残った
たった一口
飲ませて貰った
激烈な甘さも
くちびるに染みいる
かすかなぬるさも
飲み込んでし ....
魚の眼はにこごりの眼である
滓々の溜まり水である
魚の眼はあらゆる向こう岸を
私より先に見に行ったのである
白色の食卓で対峙したそれに
容赦なく朱塗りの箸を突き刺して
ぺろりと平らげた ....
銀色の背を
ひるがえし
切り身の魚は
空を飛ぶ
お鍋は底抜け
わたしの手
あなたの海には
なれません
赤い中身を
ちりぢりに
切り身の魚は
空を飛ぶ
....