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「ジギタリス・ブラン」
オラ、妙な病気になってしもうて、体があんまり動かん。
こう、だんだんにな、体が石みたいに固くなってゆくんじゃて。
もう、治らんそうじゃわ。
やれやれ、 ....
「並んだテールランプ
漁り火のよう
空はくれてやる」
「地味な色の饅頭は
もういいや
飴を噛んで夜を待つ」
「諦めの早い男
高望みする女
手を離せば知らない人
....
かわいがっていた犬が死んだ夜に
新しい犬を飼おうと思う人がいました
家族、いなくなる為に準備をして
汚れた服を着るほかないのなら
いぶかしそうな視線に
それでも
違います、とは云え ....
しずやかに睫毛を下ろした女の人の
うっとりと水が疾走する線路の方角に
暮れては滲んでしまう稜線がその輪郭を喪ってゆく
眠れない枕木は鍵盤となって揺れながら
囁かれた嘘の吐息にしがみついた
....
電話ボックスの中で膝を抱えていたね
名も知らぬ群青の子
あの人に前髪を触られたい
そうして
あの人は鶏頭の花に口を寄せるんだ
あたしは
まだよちよち泳ぎながら
アールとエル ....
まるで、その背中から
おぼろに光る翼が生えてきそうな
おんなのこ達
三十を過ぎても
ひらひらと
生きていると初めて知るのは
人が曲線で結ばれている
と解る時だ
黄 ....
街路樹の堅い葉は濡れて踊りだす
無愛想な舗道は墨絵になって
走りだす鞄と鞄と
迷っている靴
戸惑っている乳母車
泣きそうな晴れ着
得意そうに廻るアンブレラ
街は雨に沈んでゆく
巡 ....
ちいさな掌を
ひとつ結んでは覚えてゆく指あそび
ほんとうなんて要らない
と言い聞かせながら
それは未だ新しい
老いさらばえた両腕は
調和したスープと
子守歌で満たされる
動かな ....
『亜紀子さんや、小遣いくれんかの?』
「また、ですか。昨日あげた二千円は、どうしたの?」
『あ?…あれは、もう使ったから無いんじゃ』
「もう、まったく!ウチだって楽じゃないんですからね。お爺ちゃ ....
雛壇は燃え尽きた
軽い母を背負って
彷徨う脚がつる
ここらで捨てな
と
早口で
母が云う
あの鞭で叩かれて
怯えながら
でも
忠義は誓わなかった
本を抱えて
黒い ....
いつもとは違う道を帰った日の彼女
もう歩けなくなって
駐車場の水溜まりに降る雨の波紋を見ていた
つめたく完璧な丸を描いて
にびいろの波紋は静かな口調で責めるから聞いてしまう
そうだね幾つ ....