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静脈を流れていった
幾度かの夏がありまして
網膜に棲みついた
((ただそれだけの))海があります
無人の駅舎―――ああ、思い返せば
入り口でした この仕掛け絵本の
....
あの、ね
君の語りの中にはいつも海があって
壊れた砂時計が海岸線を塗りつぶしている
波はいつの間にか言葉になって
こだまする、喉の奥
赤いうさぎを抱いた少 ....
探していた
おだやかな光を
逢いたかった
カンヴァスを破って
手を、そっと
輪郭のない夜だから
影もなくて
震えを数えていないと
ここがサヨナラになる気がした
風の硝子越しに ....
悲しまないでください
たとえ私がひととき
希望を見失ったとしても
それは今年初めて触れた雪が
てのひらで消えるまで
きっとそれほどのときですから
私の瞳に映せる空は
決し ....
切符を握った手が濡れてきたから
てのひらを上に向けて解放してやった
そうしたら切符は川になって
行き先はすっかり見えなくなっていた
川は
僕だけが感じる速度で流れ
薬指、から滝 ....
眠れない朝にあなたを思う
夜を通り抜けて
窓越しに出逢うあさやけは
そこはかとなくかなしい
あなたを抱きしめるだけの日々に
空で時を知ろうとしなかったから
この ....
汚れた雨が蹂躙する街角で
傷をかばいあうために手を繋ぐ
傘を持たない日だけ、どうしようもなく
君の手があたたかくて
切れた指先が痛みを増した
僕の手は
どんな温度で君に ....
また会えるからサヨナラと言った
雪の残る街
いつものように見送った僕を
覚えていますか
赤いコートの裾が揺れ
乾いた風に凛と鳴る
あしたもきっと青空だね
ふたり信じていた
....