すべてのおすすめ
私しか「アトリエ」と呼ばない場所で
あのひとは輪郭のまま西を向いている
むせ返るような夕陽の匂いのなか
パレットで乾いた水彩は、それきり
藍が好きだったと思う
雨が好きだった ....
遠浅の日々はいつの間にか息継ぎの仕方を忘れさせる。
駅まで、の最後の交差点に立つと
呼吸が止まるほどに夕焼けの匂いがした。
*
「雲は、本当は流れていないのです ....
■秋
すべての色を飲み込んで
ただ透明である、秋
■チャイム
夕陽が窓ガラスに映ったとき
風がいつも置き去りにするもの
■図書館
古びた新築の匂いがする
■デジャヴ
....
アスファルトの照り返しは穏やかではない
24号線沿いのひび割れた歩道を蹴って
いつまでも変わらない信号を見上げる
太陽がもうひとつ増えた気がした
雨と晴れの境目を見つけた少年時代の君を
....
夕月は君が
先に見つけた
でも
明日雪が降ることは
きっと教えてあげない
*
君のいちばんのねがいを
たぶん私は知っている
でも
君のいちばんの ....
君のことを描くたびに
ひとつずつ言葉を失っていった
すっかり軽くなった水彩箱には
たったひとつの「ありがとう」が
隅にこびりついて震えている
―――ありがとう。
それだけで ....
ビルは氷柱(つらら)のようであって
交差点に、滴る微笑の鋭角が
夜はひときわ映える
空は無限の海にはあらず
月のマンホールに、僕らは吐き捨てる
ばらけた感情語
それを生 ....
黄昏色の空の果て
ひとりっきりの帰り道
誰を待っていたのだろう
誰を探していたのだろう
電信柱の長い影
淋しいようと風の吹く
黄昏色の空の果て
家路をいそぐ鳥の群れ
どこへ行くとい ....
細い金属質の陽射しが
容赦なく肩に、腕に、
きりきりと刺さって
サンダルの真下に濃い影が宿る
忘れかけた思い出は
向日葵の未成熟な種子に包まれ
あの夏
深く青かった空は
年 ....
あなたが
峠を旅する
ひとならば
わたしは
その頂き煮立つ
一本の木に成りたい。
白い灼熱の道を
歩いてきた
あなたは
陰に入り
汗を拭うと
そっと
わたしに
....
太陽のオレンヂを借りて
不釣合いなその眼差しを盗んで
下らない闘争に及んで
わたしはもうダメなのだと
おもった
そのうまく回らない舌で呟くきみの
つたなさが好きだったはずなのに
大き ....
食べられますが
食べたらだめです
なくなっちゃいますから
マリエには
クロカントブッシュ
夏のソワレにはエクレール
お持ち帰りですか?
ドライアイスはご用意できますが
賞味期限 ....
自慰行為のその姿が
祈りに似てきたりすると
ひとはしぬのだとおもいました
もう、救いなんてどこにあるものでもなく
独りで創り出す ....
あなたはいつだったか
私の髪に赤く綺麗な
オキザリスの花をさしてくれましたね
春の風にそよそよと
私の髪で揺れていた
あのかわいらしい花
あの ....
/
空の上にはきっと
もうひとつの空があって
雲の死骸や
産まれたばかりの星が
触られるのを待っている
夜闇の裏にはきっと
もうひとつの闇があって
焼きついた月光や
あいまいな朝が
....
蝋燭が
消えそうになると
まだ燃えている
知らない蝋燭がやってきて
消えてしまう前に
やさしく火を貸してくれる
白く溶ける
蝋を流しながら
傷跡のように
それは残る
....
「なくさないでね」と
母親に渡された乗車券
握り締める
チクチクと
手のひらに刺さる角っこ
手の中の
小さな痛み
それがあの日の
わたしのすべて
チクチクと
手のひ ....
一日中
夢を見ていた。
一日中
探していた。
東名高速走り
考えていた
人生の目的って何
葛藤が渦巻いていた。
よい思いをしたい
楽しい毎日を過ごしたい。
美味い物が食いた ....
青空 曇り空
茜空 夜空‥
コロコロ変わる
止まらない
コロコロ変わる
留まれない
どの顔も
みんなどこかへ
行っちゃうんだ
ずっとココに居る緑色の僕にはよくわか ....
ひどく繊細なうすばかげろうがフェラーリの排気ガスを消化していく。そのうすばかげろうを砂場の幼女が記憶に残し胎児の記憶を曖昧にしていく。養殖され、養殖されていく幼女、どさりと汚い音は、スリーピースの黒い ....
私らは
あなたの為に
集まった
何年振りか
何十年振りか
集まった
微動だにせぬ
あなたの為に
何も知らない
あなたの為に
思い出す
夕暮れの微笑みは
私の為ではなかっ ....
身体が先に存在していたの
と、彼女は言った
脳と呼ばれる物質が製造され
その時、私は構成され
シナプスとシグナルによって
初めて、私は生まれたのです
彼女は言った
愛なんて存在し ....
雨はいつだって突然に
感覚を刺激する
懐かしい音に
身動きが
――…取れなくなる
夕方の雨は
だめだ
カーテンレースを握りしめた
手の
震えが治まるまで
アスファルトを叩く ....
朝の黄昏
さいごの朝
ひかりの
おしくらまんじゅう
雪のない夏は
さよなら季節
さわがしい静けさ
ぼくはきょう
あしたのぼく
朝の黄昏
....
{画像=080726153050.jpg}
手帳をいっぱい持っている。
このリングノートも扉のところに3つの住所が書いてある。
入っているカバン毎に、
引き出しから入れた雑多な順番に出て来るメ ....
君の、いろ
僕の、いろ
貴方の、いろ
私の、いろ
いろんな、いろ
重なる
溶けあう
すてきな、いろ
汗をかいたので
洗濯して
ベランダに干す
ここは海が近いから
命の
匂いがする
書店で本を開いても
どれも白紙なので
選択は
できなかった
もう
言葉などいらな ....
かわらぬひがよどむ
みずのそこへ
ふかく
しずむ
なくこえも
わらうこえも
もとめるこえさえも
とどかないほどふかくしずむ
ただおわらないいのちのしるし ....
あたしは
君に
『あたし』という存在に
気付いていてほしかった
そう
いつまでも途切れない
音のように
{ルビ雑音=メロディ}のように
真っ白い日向を
ひとひらの
アオスジアゲハが舞う
それは飛ぶ、というより
風に弄ばれ抗うようで
わたしの傍らを掠めたとき
小さく悲鳴が聞こえた
真夏を彩るカンナの朱や
豆の葉の ....
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