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 地に伏していた。身体の自由が効かない。目を開けると、そばに灰色の蛾の死骸が見えた。風でうすい翅がゆらめいている。翅の鱗粉がかすかに光る。蛾の数本の細い脚が、宙をつかみ損ねていた。顔をずらし視線を先に ....  冬は好きではない。失業してから外出が減った。TVを見るか寝ているかだけで、二ヶ月が過ぎた。TVでマーメイド海岸のCMを何度も見る。海面から顔を出し泳ぐマーメイドの姿。面接や職安にも出かけるが、就職先 ....  春も夏も秋も、わたしにとっては短かった。あれから一年が過ぎ、長い冬がまたやって来た。失業し、仕事を探している。
(しばらくは会社に行かなくてすむ)
 わたしの元へは戻ってこなかったものもあった。 ....
 冬はまだ続いている。海からの光で、部屋は青に包まれている。神話の本を繰り返し読んだ。岬には女の顔をした鳥、ハーピーがいるという。元は風の精ともいわれている。そのハーピーが舞う岬から、水平線の彼方を見 ....  冬になり、女の顔をしたバードは飛び去った。わたしは、あの時の車をスクラップにして、海の見渡せる丘に部屋を借りた。情報誌でバイト先を見つけた。倉庫の仕事に就く。朝七時半、精神安定剤を飲んでから、家を出 ....  一人でいることに、何年も飽きなかった。シートの、海に伝わる神話を読みながら、永く暇をつぶしていた。精霊の女、の横顔の表紙。空腹の中、海に向かう道、カセットで、オペラを聴きながら、わたしは車を走らせた .... 祖父のあとをついていく。

海を見渡す墓地で、親せきたちが鎌で草を刈る。わたしも草を刈る。

母が野の百合を、見つけ出した墓に供えた。

波は白い。
風の音。わたしは平野に立つ。西の空は錆びた色をしている。

離れたところ、陸橋に車が列を作って走り去る。月が風に揺れている。風の音が、遠くの車の音が、わたしの耳の中の音が、入り交じっては、かき消さ ....
たもつさんの光冨郁也さんおすすめリスト(8)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
落ちた後- 光冨郁也自由詩1008-7-25
マーメイド海岸(連作集5)- 光冨郁也自由詩11*04-10-22
冬(「バード連作集4」)- 光冨郁也自由詩8*04-10-19
翼(「バード連作集3」)- 光冨郁也自由詩12*04-10-17
ブルースカイ(「バード連作集2」)- 光冨郁也自由詩15*04-10-15
バード_(「バード連作集1」)- 光冨郁也自由詩20*04-10-13
- 光冨郁也自由詩12*04-10-11
平野- 光冨郁也自由詩6*04-10-10

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