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きみのいない午後は
あたたかいけど うつろで
コーヒーの湯気が のろのろ移ろうのを
ぼんやりと 眺めている
こんな感じ 音もなく葉陰が揺らぎ
窓枠に
淡い緑が染みこんでゆく
....
アイコスだか電子タバコだか
知らないけれど
子供の玩具じゃあるまいし
ひそひそコソコソ
プラスチックの塊を
吸い上げて ....
今日もひとりでいたわたしが死んでゆく
春になろうとしていることを目で捉え
そして触ろうとしたあなたの髪を
さらり、簡単すぎるほど軽くすり抜ける
ねえ、どうしてこんなにたったわたしの ....
つづら坂のてっぺんが赤く燃えて
曲がり角のそれぞれに暗がりが生まれる
それがくねくねと蛇のように眼下の町へ
影法師が一組
手前の角の煙草屋の暗がりからあらわれて
穏やかな夕日にそっと目を ....
はい
父は一昨年なくなりました
何でも胃の腑に硬い{ルビ巖=がん}なるものができたとか
何も食べられず痩せおとろへ
眞つ黒な血を幾度も吐いたすえに死にました
よきかなよきかな
....
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
通りすがりの人に頭を殴られたときに
どこかでしあわせになったあたしが
鼻血を流し、ぐらんぐらんの脳みそで
汚れる制服とアスファルトを
きれいに混ぜた
人を殺してばかりのきみの
本当は殺 ....
そばだてた時間の片隅が
たゆたう雲の尾ひれのように
いつかちぎれて消えてくことを
待っているかのようだ
静かに
寄せ集めて形を整える癖は
大人になったはずの今でも
あっさりと明日 ....
風が私の輪郭をなぞる
私は風によって顕れる
その刹那
私は世界だ
世界が終わるとも
声は続く
風の意志は続く
世界は風によって名付けられ
名は風に隠されている
声は名 ....
(あらあなた 見かけより ずっと吸うのね 春の夜)
彼女は胸から乳を搾り出さないのかな、と
思いながら向かいで飲んでいた女を見ていた
僕の隣 ....
ラベンダー絨毯の中
東へ東へ向かうバス
点在するハーブ園
スィングするカラフルな文字
流れる
ラジオから
セージ、パ リ、マリ 、タイム、、、
と聞こえ
行くのですか
と ....
こびとは手紙の最後に
「こびとより」とそえたあと
「こ」と「び」のあいだに
小さく「い」の字を書きくわえた
しばらくながめているうちに
恥ずかしくなったのだろうか
てのひらで手紙を丸め ....
濡れズボンが風にそよいでいる
明日ごろまで生きていれば
多分それを穿くわたし
ねえ
あそこに流れていくものを
いつから雲だと知ったの
桜の枝を折ったジョージは
一生砂漠の砂を数え続けるという
罰を受けた
ああ、それならいっそのこと死刑にしてください
そう懇願したが
いやいや、罰とはそういうものなのだ
裁判長のこの ....
「うみ」
と書けば
白い波が寄せて返し
「そら」
と書けば
どこもでも青く
「もり」
と書けば
木々が香り
「とり」
と書けば
それは翼をもって飛びまわり
「ま ....