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春、という実感もないまま
海を泳ぐ
わずかに持ちあがった
二の腕から滴る光に
戸惑う
掻き寄せるものは
どれも曖昧な痛みばかりで
だいじょうぶ、と
支える声は
生え変わったばかり ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな
もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
朝霧の蒸発してゆく速さに
子供たちは
緑色の鼻先をあつめて
ただしい季節を嗅ぎわける
くったり眠っている
お父さんのバルブを
こっそりひらいて
空色を注入する
うん、うんとうな ....
若草色のかざぐるまに
しがみついていた、あの人が
夕風にさらわれて
私の中を流れてゆきます
水たまりの映す青さの
ほんとうを
確かめるまえに
軽々と飛び越えて
もう
行ってしまっ ....
何を植えるかなんて
考えもなしに
掘りおこした
庭のすみ
やわらかい土の頂きに
雀が降りて
ころころと、まろび遊ぶから
つい、嬉しく振り返って
あの人の面影を探してしまう
幸 ....
折りたたまれてゆく季節は
いつか振り返れば
一瞬なのかもしれない
湧きいずる水におされて
いま
雲母のいちまいが
なめらかに遠ざかる
使いきれなかったノートの白さ
描ききれなか ....