すべてのおすすめ
灯りは星のひとつひとつ
身動ぎしない風景の
その一個となって
孤独と添うには
十分な夜である
静まり返る街角の
路地の向こうから
細く聞える口笛は
独りの耳にも届いて
胸をふるわ ....
夜の、
雨の、
それぞれのゆくえを
ひと色に染めて
あかりは桜色
煙る雨の甘さ、
舞う花びらの温み、
絡めた指が
やさしさを紐解く
夜に、
雨に、
焦がれる桜
時計の針 ....
あれから
いくつ春を
数えたかしら
わたしの中に眠るあなたは
春ごとに目覚める
黒と白の斑尾模様の猫が
出迎えてくれた細い路地
人の気配が消え
静まり返った石畳
入り組んだ奥 ....
いまだ冬の
凍える朝にも
こぼれる陽光の一筋に
穏やかなる日和を思い
目を細める
匂い召しませ
息つく春を