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なぜ
目がさめるんだろうって
思ってた
まだ小さなころのこと
ずうっと眠っていられたら
幸せなのに
お金がかかるからよ
カナコさんがわらった
ブランコが行ったり来たりするのは
....
街のはずれで老いた女が営む店は
闇色の菓子がたいそうな評判だったが
だれ一人材料や製法を知らなかった
ある時店が閉まったあとも
客の一人が見張っていると
老いた女は夜更けを待ってふらりと ....
郵便配達人は
来る日も来る日も手紙を配りつづけた
高い塔は目をこらしても先端が見えず
螺旋状の階段にそって扉が等間隔にならんでいた
郵便配達人は封筒の番地を探したが
扉の数字の順がでたら ....
嬉しいことがあるたび
大切な日記を出して
ペンで書き記す
何度もくり返し
消しゴムでこすって
消えないことを確かめる
怒りがおさまらない時は
許さない許さない許さない
鉛筆で書 ....
絵描きの描く肖像画は
どれも本物と見間違うほどの
素晴らしい出来映えだったが
どの絵からも
顔の構成品がひとつだけ欠けていた
片目の瞳だったり
上唇だったり
耳たぶだったり
必ずどこか ....
外に出たら
死んでしまうんだって
だれかが言う
ほんとうだろうか
立派に育てるのは
栄養とか水をたっぷりもらえるからだって
だれかが言う
ぼくたち自身の
力じゃないんだって
白い ....
どうしても
ヒロコちゃんのくちびるが
ほしかったの
ピンクいろのふくを
たくさんてにいれたわ
ピンクいろのいえをたてたわ
おとうさんもおかあさんも
こいぬのリリも
ピンクいろに ....
次はあなたの番です
鳥が丸い目をくるくるさせながら言った
そんな なにかのまちがいだわ
だってわたしまだこんなに若くて元気なのよ
反論しても無駄だった
鳥は粛々と書類を広げて
わたしの ....
喉もと
鏡で位置を確かめる
思い描いた真っ直ぐなラインに
鋸の歯をあてがい
両手で柄を握りしめて
鏡に写ったわたしが
ゆっくりと押す
引く
ずうう
細胞が裂ける
肉が千切れる
....
男はもう何日も水を口にしておらず
這々の体で村へたどり着いた
中央の広場には煉瓦を組み合わせた立派な井戸があって
水がいっぱいに溢れていた
男が早速つるべで何度も水をくみ上げては
勢いよ ....
Maunaは山
Kaiは海
だから
さしずめ山海通り
斜め向かいの家で
巨大な犬が柵の内側を徘徊していた
裏庭の木が
嵐の夜になぎ倒されてしまった
パイナップルの実が
茎のてっぺ ....
24時 @ハト通信
あなたは得意げに
ハサミで細長く切った白い紙の
端と端を
一度捻ってから貼り合わせる
メビウスの輪
というのだそうだ ....
1時 @ハト通信
緊急オペです
二十九歳 女性
脳内に長さ四センチの詩腫あり
個体から感情と過去を吸い取って
意識を封鎖して
外へ出れ ....
コップの縁にとまったガラス細工の鳥が
思い出したように身体を傾けて
水を飲む様を演じる
赤い液体が体内を巡る
海のようだ
わたしの中に溜まった水が
満ち引きをくり返しながら
すこ ....
ふわりと風に持ち上げられて
風船はまた
地面に這いつくばる
いつの間にか
ずいぶん膨らんだ気がする
大きく息を吸って
ゴムの口に吹き込む
酸素と二酸化炭素の比率
だけが
中と ....